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Chimera Park On-line  作者: カカセオ
第1章 クローズドβ
5/20

01-05 冥界

「…やっと付いたぜ」


「…良かったよ、無駄にならなくて」


 グラスラビットを狩る者がほとんどいなかったので、資源争いにならず結構な量を狩れたのだが、《肉食》を手に入れるのにあれから3日もかかった。

 途中から遭遇してすぐグラスラビットが逃げ出すようになった。

 いくら動けてもサイの本質は鈍器を持った重戦士、逃げる相手を追いかけるには向かない。

 ヤサイがふと思いつき雄叫びをぶつけた所硬直させることに成功、その分は楽に狩れた。

 しかし、声の届いた範囲からグラスラビットが脱兎の如く逃げ去り、結果的に苦労が増した場面もあったりした。


「それで次は何をするんだい?」


「へっ?」


「何か目的があるんだろう、態々最初から取ろうとするんだし」


「肉喰いてぇだけだが?」


「はっ?」


「栄養はバランスが大事だろ」


「……そういう気遣いを少しでもオフに回してくれれば」


「ぁあ? バランスよく取ってるぜ」


「いや、バランスがどうとか言う前にとりあえず火は通そう」


「一々うっせぇな。人間そう簡単に死にゃあしねぇって」


「はぁ……って、あれ?」


 そんな風に話をしていると突然トールが倒れた。


「何やってんだトール。おら、寝てんじゃねぇ」


 声をかけるが動かない。

 ただの屍のようである。


「なんじゃこりゃ?」


 げしげし蹴っていると頭の中に電子音が響いた。

 コンソールを開くと[トールさんから念話申請。受信しますか? Y/N]とあった。

 Yを選択すると頭の中に声が響く。


『あっ、繋がった。通信機能あってよかったよ』


「繋がった、じゃねぇよ! 何してんだてめぇ!」


『寿命で冥界に送られたんだよ』


「…そっか、寿命来るとこうなんだ」


『…何かおかしなことでもあったのかい?』


「死体残ってっぞ」


『…そうか。心配かけてごめん』


「心配なんざしてねぇが?」


『そこは嘘でも心配したって言って欲しかったな』


「誰が言うか」


『まあ、同じくらいに初めて、同じく生活していたから、お前もそろそろ寿命だろう。

 あの世て待っていようと思うけど、それまで一人で大丈夫か?

 補正少なくて、あまり成長していないだろう』


 成体になっても成長は続き、これまで2段階大きくなった。

 草を食べていたトールは現実の馬ほどにまで成長したが、《肉食》無しで肉を食ってばかりいたヤサイは成体になった時点から変化はない。


「ぁあ? 大丈夫に決まってるだろ!」


『そっか…じゃあ、待ってるよ』


「おう」


 通話が終了された。

 ヤサイはトールの死体を見下ろした。


「…食ってみっか」


 がつがつもぐもぐがりがりぼりぼり。

 肉を食うついでに骨も齧っていたので顎の力が強化され、今はある程度噛み砕けている。

 生存時間によるものか、きちんと成長補正とって成長したからかわからないが、グラスラビットよりも遥かに旨かった。


「プレイヤーの方がうめぇのか? そういや、味の感想聞いてねぇな」


 成長補正の多い草は食べてないので、普通の草と味に違いがあるかは知らない。

 冥界に言ったら聞いてみっかと心にとどめる。


「ああ、食った食った。んじゃ食後の毒草薬草盛合せ(デザート)……っと?」


 目の前が白く染まっていく。

 気が付くと、幾つか建物が並ぶ白い平野に居た。

 白い人型の影がうろついている。


「ちっ、食う前に死んじまったか」


 がりがりと頭を掻いていると声をかけられた。


「おっ、やっと来たな」


 頭の上に[トール]と表示されていた。

 他の白い影には何も無いの、フレンド登録していると表示されるのだろうと中りをつける。


「とりあえず先に来て見回ったから、案内するよ」


 カウンセリングルーム、図書館、転生門、キメラ・ラボ、トレーニング広場。

 キメラ・ラボは混雑し、その前で白い影が呼びかけをしていた。


「何やってんだ?」


「…ああ、FSの交換してるんだよ。

 ラボでガチャが出来るんだよ。そこで出た物は交換可能なんだ。

 ガチャは1回20FP、今のところ出ているのは頭とか肉体系のFSのみだな」


「ふーん…あっ、そうだ。味ってどうなんだ?」


「えっ、味?」


「食ってて思ったんだが、グラスラビットのと生えてる草で違いあんのかなって」


「……答える前に一応聞いておこう。何を食べてそう思ったんだ?」


「お前」


「人を食うなよ!」


「目の前にあんだから別に良いだろ」


「…はぁ。一応グラスラビットの方が旨いよ」


「そっか。なら、色々と食べ比べてみっか」


 にやりとヤサイから人の悪い笑みを浮かべた気配が感じられた。


「…人に迷惑かけるのもほどほどにな」


「足の一本ぐらいは大丈夫だろ。なっ、トール」


「おれのかよ?!…はぁ。まあいいよ、足増やしたし」


「おお、なら遠慮なく貰うわ。回復すりゃ戻るだろうし」


 HANTでも部位欠損は生じるが、HP回復すれば元通りに治る。

 こっちでも同じかどうかは判らないが、ヤサイは試せばいいやと結論付けた。


「少し空いたな。じゃあ行ってくっか」


「ああ。じゃあ、おれはトレーニング広場で練習してるよ」


「了解。んじゃな」


 トールと別れラボに入ると、中はいくつもの扉が在った。

 その中でOPENと表示されている1つに入る。

 正面の大きなモニターに[Touch Me]と書かれていたので触ると画面にサイが表示された。


『ようこそキメラ・ラボへ。初めてのご利用ですのでガイダンスをお聞きになりますか?』


 Y/Nが出たのでYを押す。


『ではガイダンスを始めます。

 当施設ではフィジカルスキル―FSとフィジカルポイント―FPの交換が行えます。

 FPで交換できるFSはこれまでの経験及び取得因子などから表示されます。

 頭など肉体系FSのLvを上昇させた場合、そのパーツが増加します。

 パーツの配置やカラーリングの変更はある程度自由に行えますが、重量等で制限が発生する場合もありますのでご注意ください。

 また、必要ないパーツを控えに回すこともできます。

 パーツの種類、量、配置の仕方などで初期ステータスが変動いたしますので色々と試してみてください。

 これでガイダンスは終了となります。

 引き続き当施設のご利用をお楽しみください』


 メニューが表示されたので、交換できるFSの一覧を開く。


「どれどれ……何でホース種のがあるんだ?」

 

 《基本セット》がなぜ分けられているのか理解した。

 単品で取るよりも割安なのだ、換わりに1つしか取得できないが。

 がさごそと無くて困らないもののLvを下げてFPを取得、とりあえず《ライノー種:硬皮》《ライノー種:角》を1Lvずつ上げる。

 配置変更で増えた角を今の角に重ねてみると強度が増え、前と同じ強度なら長くできるようになった。

 硬皮は枚数が増えたので一つ一つを縮小して分割を多くし動きやすく配置する。

 何でも重ねられるのかと試しに肢を重ねたところ、こちらも強度を増したので、肢を2本にして伸ばすと重量オーバーの表示。

 《ライノー種:肢》を2Lv増加させ重ねて伸ばし配置したところ、表示は消えた。

 ふと思いついて《ライノー種:肢》の増加させた分を減少させて、《ホース種:肢》を1Lv取ってつける。

 重量ぎりぎりだったので、《ホース種:肢》をもう1Lv上げて強度を上げる。

 試しに《ライノー種:肢》と《ホース種:肢》を重ねてみると、長さも太さも中間でそれなりの物になった。

 特化したほうがやりやすいので前足を《ライノー種:肢》、後足を《ホース種:肢》に分ける。

 こうなると《ホース種:蹄》も欲しい。

 一応《ホース種:肢》にも蹄は付いているが、トールのに比べると軟らかそうだ。

 1Lvぐらいは取りたいが、背を高くした分首も伸ばしたい。

 《ライノー種:頭》を重ねると首を伸ばしても支えることができた。

 両方取るには少しばかりFPが足りない。

 しぶしぶ《ライノー種:角》を戻し両方を取得、最終的に大昔の珍獣のようになった。

 最後に色を整えて《ホース種:肢》を目立たなくする。


「こんなもんか」


『ご利用ありがとうございました。

 これよりコンソールのメニューからキメラボ通販がご利用になれます。

 機能はFSの購入です。

 また、パーツ、カラーリングの変更をコンソールより行えようになります。

 よろしければご利用ください』


 ラボを出てトレーニング広場へ向かう。

 広場といっても大きなアーチが在るだけだ。

 トールの説明によるとここを潜り抜けるとトレーニング広場に移動、トレーニング広場ではステータスは基本値で成体1に固定されるらしい。

 潜り抜けると小さな岩山や芝、土の地面などの他チュートリアルにあったアスレチックコースが各種在った。

 変更したのを思い思いに試しているようで、初日のセーフエリアよりも更にカオスだった。

 見渡していると六肢の黒馬が駆け回っていたのでそちらに駆け寄る。


「…えっ、ヤサイか?!変わったな」


「そっちは変わりばえしねぇな」


 足が増え角が少し太くなってるが、前とそれほど変わらないトールにヤサイはそう告げる


「そっちが変わりすぎだよ。というか何でホース種の足が付いているんだ?」


「ちっ、気付きやがったか。トールごちになったおかげじゃねぇ?それっぽい称号も付いてんだし」


 HANTでの称号は行動の結果付く何の効果も無いコレクターアイテム的位置づけだった。

 CPOでもその立場は変わらないだろう。


「トループ長く組んで死亡した奴食えば付くんじゃねぇか?」


「《肉食》だけの特権か?いや、その辺りで差別つける運営ではないから《草食》でも似たようなことはできるんだろう」


「埋めたら草生えたりしてな」


「とりあえず、次はお前より長生きしてみるよ」


「ふん、やれるもんならやってみろよ」


「じゃあ、転生に向かうか?」


「その前に少し試させろ。その為に態々来たんだ」


「了解。それじゃあ、駆け比べでもしようか」


「へっ、いいぜ。何か賭けるか?」


「そうだね、明日のランチでどうだ?」


「上等、ぜってい奢らせてやる!」


「じゃあ、向こうの岩山をぐるりと回ってここに戻るまでで」


「おう。それじゃ行くぜ」


「レディー」

「「Go!!」」


 ずだだだだっと2頭が駆け抜けていった。



―――



 ラボガチャ報告スレ1本目


1:ここはキメラ・ラボのFSランダム取得で出たものを報告するスレです


2:・・・って誰も載せない?!


3:そりゃ20FPなんて持ってないだろ、普通


4:そうか?技開発してれば結構手に入るぞ、最低でも1になるし


5:技開発ってそんなに出来るか?俺《回し蹴り》しかない


6:《回し蹴り》って種族なによ(笑)


7:うさぎ。グラスラビット真似てやってんだが


8:踵落しとか後回し蹴りとか色々試してみろよ


9:おお!試してみる


10:冥界じゃ上がらんから現世に行けよ


11:で、ここまで報告なしか


12:やってきました、《ラット種:頭》でしたorz


13:頭?!


14:のっぺらぼう?!


15:いや、一応付いてるっぽいよ。使えるかどうか判らんが


16:通りすがりの頭2個です。無いと能力激減って感じです。口だけは普通に使えます


17:報告あり。口使えるってことは足につけて噛み付きとか?


18:いやいや、歩いてるときに土とか入るだろ(笑)


19:人面そうならぬ鼠面そうとか(笑)


20:とりあえずFPに出来るからそうするかな、15FPだけど・・・


 ・

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142:ちょくちょく報告あったけど体の一部ばかりだな


143:使えそうで使えない感じ?交換できるから便利ではあるが


144:《ドラゴン種:翼》あたりました


145:?!


146:すげー!


147:キタコレ


148:でも俺ゾウなんだよ。つけても重量超過で飛行できませんとかでるんだよ!


149:空飛ぶゾウか


150:耳に・・・おや、誰か来た様だ


151:その後150を見たものは居なかった・・・


152:(笑)


153:交換してくれ!《ラット種:頭》しか出せないが


154:まだ持ってたのか(笑)


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