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Chimera Park On-line  作者: カカセオ
第2章
18/20

02-06 火袋

 夜になったが月が出ているし結構見える。

 鳥目ではないようだ、これなら山を下りるのに問題なさそうだ。

 だが、他に問題がある。

 体温だ。

 下げずに行けば周りを火の海にしかねない。

 しかし、体温を下げるという事はおれの一番の武器を失うという事でもある。

 それに食べ物の問題もある。

 熱い物じゃないとダメみたいな事を教えられている。

 自然に在るとすれば、ここみたいなマグマや熱湯の温泉ぐらいだろう。

 後は自然に火が付いた火事だとか。

 あまり期待はできない。

 山頂近くになるとサラマンダーの数は減り、大きさも小さいのばかりになった。

 こういう類も暑い場所にしか生息しないのかもしれないので期待薄だ。

 自分で火を点けられれば、食糧問題は解決する。

 全部出しても少しずつ溜まるというから、やりくりすれば大丈夫かな。

 いっそ開き直ってこのまま行こうかな?

 そう頭を過ぎったが、おれ自身強くは無い。

 火傷を無視して攻撃されればたぶん死ぬ。

 下手に目立つと狙われかねない。

 下げていった方がいいだろう。

 となると、火袋の中身を出さないとな。

 サラマンダーは炎を吹いていた。

 出す方法はあるんだろうが、どう出すんだろう?

 ……とりあえず吐き出す方向でやってみよう。

 温かくなっているのは胃より少しだけ下の所のようだ。

 お腹のそこに力を入れると、喉の奥の方から込み上げてきた。

 間違ってゲロ出ないよな?

 口に少しそれを溜め、舌の上で転がす。

 火の感触はなく液体のようで、何だかよだれを溜めたみたいな感じだ。

 ペッと出してみると、火が付いたよだれみたいなのが飛んでいく。


「あれ?」


 火という事は火袋に溜まっていた物なのかな。

 でも、サラマンダーの見たくぶわっと燃え上がらない。

 量が少ないのかなと首を傾げて見ていると、火よだれは岩に落ちた。


―パァンッ!


 途端に爆竹のような音を立てて一気に炎が広がった。

 傍から見ればハトが豆鉄砲を食らったような顔をしていただろう…スズメだけど。

 火は一瞬で収まり、落ちた岩には小さな小さな跡が残っていた。

 うーん………………液体みたいな状態で溜められて、出すと火に戻るのかな?

 丸めて出すと表面だけ火に戻って、何かにぶつかるとその時に全部火に戻るという感じか。

 とすると、霧みたくして吹き出せばぶわっとした炎を吹けるのかもしれない。

 試しにまた口に溜める。

 今度はペッと出さずに出来るだけ口をすぼめて…………うん無理だ、嘴はすぼまない。

 でも、それが出来ないと霧みたく吹き出せない。

 なにか変わりに出来そうなもの…………舌だ!

 舌を上嘴にピッタリ貼り付け、その間に液体状の火?を溜める。

 そして、舌と上嘴の間にほんの少しだけ隙間を開けて溜めていた火液を一気に押し出す。

 ブブブッとなって上手く吹けなかったが、一部はちゃんと炎になった。

 やり方はこれで決まりだ。

 何度か試すとコツを掴み、上手く炎を吹けるようになった。 

 それから一々口に溜めずに火液を出し続け、炎を長く吹き続ける練習をした。

 これも出来るようになった。

 まだ、火袋は尽きる様子をみせない。

 次は動きながらやろう。

 そう思ったが、小腹が空いた。

 その前に、食事しよう。

 既に獲物の場所がわかっている火口の中へ舞い戻る。

 この辺りに居るのは小さいけど、おやつにはちょうど良い。

 ついでに色々と試そう。

 サラマンダーの1体の上へと飛んでいき、そこからペッと火液を飛ばす。

 狙った所に落ちていったが、風が吹いて狙った所とは全く違う場所で破裂した。

 驚いたサラマンダーが逃げていく。

 もっと飛ぶのが速ければ、風が吹く前に当たったな。

 でも、単に口から吐き出すだけだとこれ以上速くなりそうもない。

 吐き出す時になにか勢いを足せれば良いんだが。

 とりあえず着地して首を捻る……って首動かせるんだから頭を振れば良いんじゃないか?!

 頭を振りながら吐き出すと、少し勢いを付けて飛んでいった。

 万が一を考えて飛び立ち、色々とやり方を試す。

 仰け反ってから思いっきり振り下ろして吐く。

 これが一番勢いがある気がした。

 頭をぐるっと横に振ってから吐く。

 上半身も一緒に回すと更に勢いが付くかもしれないが、飛びながらはできない。

 旋回してやれば良いのだろうか?

 タイミングが難しい。

 頭を下げて丸まってから振り上げて吐く。

 山なりに飛んでいくので何か使い道が在るかもしれない。

 全般的に勢いを付けた分狙いづらくなったが、それは慣れでなんとかしよう。

 軽く頭を振るぐらいなら、それほど狙いづらくはならないし。

 一度失敗して真下に吐き出してしまったので、飛んで正解だった。

 威力を自分で確認するのは流石に嫌だ。

 それじゃサラマンダーに当てに行こう。

 見回してサラマンダーを探す。

 近場のは音で驚いて逃げてしまったようだ。

 もっと下の方にしか居ない。

 下りる方が上るよりも楽なので、すぐにその辺りまで行けた。

 気付かれない様に飛んでいき、勢いを付けて火液を吐き出す。


―パァンッ!


「ギャワッ?!」


 当たった所が少し焼け、衝撃で弾かれて落ちた。

 岩棚に落ちたサラマンダーに、更に火液を吐いて追い討ちをかける。


―パァンッ!パァンッ!パァンッ!パァンッ!


「ギャワッ!ギュオッ!ギュワッ!ギャワッ!」


 この大きさでも殴るくらいの威力はあるようだ。

 では、出来るだけ大きくしたらどうなるのだろう?

 口の中に溜められるだけ溜めて、弱ったサラマンダーに向けて発射する。

 どんぐりぐらいの大きさのが飛んでいく。


―ドガァンッ!!


 おれの数倍はあるサラマンダーだったが、当たり所の所為か跡形もなく吹き飛んだ。

 思ってた以上の威力に呆気に取られる。


「……おれのご飯が……」

 

 悔やんでも遅い。

 肉片が少し岩壁にへばりついているが、大半は火口へと落ちていった。

 気を取り直して、今度は最後まで小さな火液で攻撃した。

 ようやく食事にありつける。

 まだ、口をつけた端から焼けていく。

 どんな仕組みかわからないけど、食べた分少し火袋にも補充されるから、出し切るのにかかる時間も多少増える。

 まあ、急ぐことじゃないし気長にやっていこう。

 お腹を満たすと予定通り動きながら炎を吹けるかやってみた。

 走るくらいならまだ何とかなったが、飛んでる最中に前に吹くと自分でそこに突っ込む形になった。

 下か上を見ながらしないといけないだろう。

 そうやって練習がてら火袋の中身を出して、お腹が空いたら食べに行く。

 空が白み、朝日が地平線から昇りだした頃、火口から上がる熱気を感じるようになった。

 サラマンダーも襲ってくるようになった。

 そろそろ山を下りてもいいだろう。

 まだ、お腹の中は温かい。

 溜め過ぎた結果、体温がすごく上がったのかな?

 気を付けないといけないな。

 山を下りる前にお腹一杯にしていこうと、サラマンダー目掛けて飛び立った。



―――



 帰ってきたCPO雑談スレ7匹目


 ・

 ・

 ・

 ・


658:クエストあるのかこのゲーム。メニューにもないし


659:βの時はHANTに行ってからあったというし、それまで無いのかも


660:さすがに何の目的も無くやるのはだれる


661:この運営のってクエスト系は自動生成型だから探せばみつかるかもな


662:・・・ああ、あれクエストだったのかな?


663:どうした?


664:死に掛けのオオカミに会ったんだよ。話せたからPCだと思ったんだけど、なんか葉っぱ届けてくれって言い残して消えたんだよ


665:それで?


666:それだけ


667:届けなかったのか?!


668:シェルターから楽に死に戻ってこれる距離だったしさ。その時は自分でやれるじゃんって思ったんだよ。あとでPCっぽくない言動だったと思ったけど


669:うわ、勿体ねえ


670:そうやって道端に落ちてるのかクエスト・・・


671:後は仲良くなったら系とかな


672:NPC居ないんだけど、このゲーム


673:裏を返せば全員NPCとも言えるな。βの時だって魔獣からクエスト受けたし


674:言葉覚えろってか、どうやって?


675:仲良くしていると覚えるよ。ついでにクエストも


676:なに?!


677:蹴られてもどつかれてももふもふして、仲良くなったら言葉わかるようになった。それで、襲ってくるのを撃退してって頼まれた


678:Mか(笑)


679:・・・貴様、草原の白いネコだな?!


680:なにそれ?


681:6番シェルターの側に広い草原が在ってウサギ沢山居るんだよ。良い餌場なんだけど、最近邪魔してくる白ネコがいるんだ


682:・・・PKにならないの?


683:ならないからユニークだと思って狙ってたのにPCかよ


684:討伐対象がPCだと攻撃してもされてもPK判定されないみたいだ


685:へー


686:βと違ってPKのペナルティ増えたし、それは良いな


687:PKのペナルティって?


688:一定期間色変え不可、パーツはダメージ負ってるのは変更不可、回復装置使用不可で死亡時にレベル下がるパーツダメージの基準が上昇。やった分期間は延びるし、ダメージ基準も上がる


689:うわ・・・


690:攻撃されかけて先に攻撃当てさせられたりとかでなったらやだな


691:それは無い。どう判定しているのかわからないけど、攻撃誘ったらそっちがPKになる


692:そりゃ良いや。何度そうやってPKにされたかorz


693:それは少し学習しような(笑)


694:HANTもそんな感じだしな。PKやりづらい世の中になったぜ


695:PK乙(笑)


696:山の光見たやついる?


697:山の光?


698:2番シェルターなんだけど、夜に山頂に光が見えたような気がした


699:気のせいなんじゃないか?


700:そうだと良いんだが、なんか噴煙っぽいの出るときもあるし活火山っぽいんだよな


701:さすがに噴火はないだろ(笑)


702:だと良いけど・・・


703:夜か。夜狩りは難しいからな。寝る必要がそれほどなくなったから頑張れるけど


704:《暗視》は欲しいよな


705:鳥なんで暗い所見えないです。外灯ある所なら何とか


706:所々文明残してるのってそのためなのかな?


707:でも、武器とかないよな。ナイフ1本見かけない


708:探したのかよ(笑)


709:柄みたいのはあったな。サル系倒して装備しようとか思ってたのに


710:βの時に居たなそんなの。HANT行ってからだけど


711:それまで待つか。どれくらいでアップデート来るかな?


712:ある程度強いの出てからじゃないか?今のままだと初心者ぐらいとしか戦えないだろ


713:βの時より育ち悪いし、まだまだ先か・・・


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