01-12 打ち上げ
―ドォンッ!
「…やっぱ変だ。バグか?」
何度か使っていて気付いたのだがパーツ組み換えを速く行った場合、撃った弾が途中で消えてしまう。
―ゴンッ!ゴガッ!
「考えてても仕方ねぇ、後で上げとくか」
―ドゴッ!グシャッ!
とりあえず辺りを一掃し終え、ヤサイは散らばる装備やアイテムを物色する。
苦戦する相手も出てきたが、大部分は養殖タイプで歯ごたえが無い。
(歯ごたえあんのもっと来ねぇかな…)
そう思っていると遠くから音が響いてきた。
―ドドドドドドドドズズーンズズーン…
地響きのような足音と木々が倒れる音が交じり合っている。
こんな音を立てる奴はそれほど多くない。
というか戦闘中でもないのにそんな事をするのはただ1人。
(まずい!)
慌てて気配を抑え逃げる。
木の間を抜けて行くが、向こうは薙ぎ倒しながら一直線。
平地なら引き離せただろうが、入り組んだ森ではそう簡単にはいかない。
途中で方向を変えたりしたが、向こうもそれに合わせて方向転換をする。
奴の気配察知能力はそれほど高くない。
だが…
(ちっ、やっぱり居やがるか)
気配が紛れているからか、さっぱり判らないが奴1人でここまでついて来れる訳が無い。
案の定気配がない場所が現れた……すぐ近くに。
「ちっ!!」
慌てて回避すると、今まで居た場所を銀色のナイフやフォークが通り過ぎていった。
手加減されている。
本来ならばこれ程度の能力では回避する間など無い。
足止めするだけのつもりなのだろう。
辛うじて回避できるレベルの攻撃が続き、そうこうしている内に地響きが近づいてきた。
急ブレーキをかけて土煙を上げ、止まりきれずにたたらを踏む。
見得を切って何事か叫んでいるが生憎と言葉は通じない。
まあ、いつもの口上だろう。
現れたのは予想通りの人物、ペドラ。
現在見つかっている素材の中で最高の硬度と重量を誇る超重硬石の全身鎧で余すところ無く身を包み、同じく超重硬石のランスとタワーシールドを携えている奴だ。
いつの間にか側に控えている執事服の爺や、名前はLong。
その姿の通りペドラのサポートしているが、その底は誰も知らない。
その爺やが何かに気付いた表情を浮かべた。
「おや、やじんお嬢様ではありませんか。
何故そのようなお姿に?」
言語違うのに普通に話しかけれるとか一瞬で判るとか色々と突っ込みたい所はあるが、それらを飲み込んでヤサイは答えた。
「CPOのβ。
んで、ラストはこっち暮らし」
「そうなのですか。
…申し訳ありませんが坊ちゃまのお相手、お願いできないでしょうか?」
「あー……正直めんどくせぇんだよな。
硬くて重くてとろいから」
「そこを何とかお願いできませんか?
そろそろ防御力と攻撃力だけではいけないと知っていただきたいですし…」
「はぁー、苦労してんな。
…ちっ、仕方ねぇ。貸し1つな」
「ええ。ありがとうございます」
―――
この辺りに居るという発砲犀を探して来たのだが、見つかったのはウマっぽいモンスター。
少しがっかりしていると、突然ウマっぽいモンスターに話しかけた爺や。
しばし呆気に取られるペドラ。
「……爺、何してるんだ?」
「申し訳ありません。少し故郷を思い出したもので」
「爺って何処出身なんだ?」
「香港ですが。以前にお話しませんでしたか?」
香港でウマが懐かしいとかどんな思い出だろうと思ったが、聞く前にモンスターが向かってきた。
「1対1の勝負に水を差さないよう、周囲を探って参ります」
「ああ、頼むっ!!」
えいやっと槍を突き出しながら答えると、爺やは姿を消した。
突き出した槍は易々と相手にかわされた。
「うぉおおおっ!!」
そのまま薙ぎ払ったが、それも後ろに跳ばれて回避された。
挙句、振り切りかけた所をどつかれてバランスを崩しかけた。
「くそっ!!」
突く、横に避けられる。
薙ぎ払う、避けられどつかれる。
盾を突き出す、届かない。
攻撃は回避され続け、隙が出来るとどつかれる。
防具自体は頑強でも衝撃は完全には消せはしない。
疲労と共に自然回復量も減少し、ダメージが蓄積していく。
回復薬などは全て爺やに持って貰っている。
というか、アイテムがあってもこの格好では回復もままならない。
かけるか飲むかすれば効果あるのだが、全身覆っているので被るのは難しいし、兜を取るのにも手伝いがいる。
段々と追い詰められているのは自覚しているが二進も三進も行かない。
とりあえず息を整えるために防御を固める。
さすがに、その場で回る方が円弧を描いて動く相手よりも速い。
だが、気を抜けるほどでもない。
じりじりと睨み合うと相手は焦れたのか突進してきた。
これはチャンスだ。
(まだだまだだ。ぎりぎりまで引きつけて…………今だっ!!!)
棹立ちになって此方を踏みつけにかかって来た瞬間を狙い槍を突き出す。
狙い違わず胴に吸い込まれていき、突然槍が重くなった。
「えっ、あれ?!」
槍の進む先にはもうモンスターはいない。
視界の何処にも見受けられない。
すると、後ろで強く息を吸う音が聞こえた。
慌てて振り向こうとしたが、今まで受けたことの無いダメージに意識を掻き消された。
―――
「お疲れ様でした」
「おう。装備はどうすんだ?
持ってくのか?」
「いえいえ、どうぞご自由に。
身体能力を上げるにはちょうど良かったのですが、防具に頼るようになってしまい困っていたのですよ。
持ち帰っては二の舞ですし」
「そっか。といっても使い道ねぇんだがな」
「そうですか。それでは私は坊ちゃまの所へ参ります。
抑えていた方々が此方へ参りますので、ご注意を。
弱い方々にはお引取り願いましたので、どうぞお楽しみください」
シュンっと消えた途端、彼方此方から気配が殺到して来た。
言い残していった通り全員それなりの実力者なのだろう。
「疲れてんだがな…」
そう零しつつも瞳を爛々と輝かせてヤサイはにやりと笑みを浮かべた。
―――
日が暮れた頃、ボロボロの体を引き摺って目的の場所にようやく到着した。
今ある足でなんとか穴を掘ると箱が見えてきた。
だが、どうやって取り出そうか頭を悩ませていると声をかけられた。
「何をやってるんだ?」
「おっトール、いい所に来た。
これ、出してくれ」
「ああ、良いけどこれ何だい?」
8つある手で危なげなく箱を持ち上げ地面に下ろす。
「開けて見ろよ」
「…これは。
何をしているかと思えばこれを仕込んでいたんだな」
「わりぃか?」
「いや。
…それにしても結構やられてるな。大丈夫なのか?」
「まあな。
上位陣いねぇから何とか生き延びれたが、トールはどうだ?」
「さすがにやられたよ。
上位陣は新しい大規模戦闘級見つけて、そちらにかかり気になっているよ」
「なにっ、まじか?!…行ってみっか」
「その前にそれやらないとな。課題なんだろう?」
「ちっ、わかってるって。
んじゃ、ここに入れてくれ」
「はいはい。よっと」
箱から取り出し、背中の筒にそれを入れる。
―ドォンッ! ひゅるるるる……ドバンッ!!
夜空に大輪の花が咲く。
「ほら、次!」
「はいはい」
続けてどんどん打ち上げられていく。
幾つもの花火が夜空を彩っていく。
「これで最後だよ」
「おうっ」
一際大きい玉の為に筒の形を変える。
―ドォォォォンンッ!!!
「ぐっ!!」
「大丈夫かっ?!」
「ああ。
最後の仕込だ、こっち気にせずとくと拝みやがれ」
「…相変わらず無茶をする。
VRだからといって痛みは一応あるんだぞ」
「説教はいらねぇ」
まだ花火は咲かずに天へと昇っていた。
―ドッッバァァァァァァンンンッッ!!!!!
今までで一番大きく、色鮮やかに夜空に咲く。
ふと、トールは何かに気付いた。
―ヒュンッ!
慌てて避けると空から飛来したそれは地面にめり込んだ。
沈黙が辺りに満ちる。
「……おまえの仕業だなっ!」
「花火作ってる内にふと思いついたんでな、つい」
「思いつくなこんなもんっ!!」
「…さーて、帰るわ」
「あ、こらっ!……はぁ」
ヤサイは姿を消し、トールも溜息を付くとログアウトした。
―――
雑談スレ448つ目
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533:ユニークの大量発生終わったな
534:ああ、一応全部は倒せたんだっけ?
535:爆弾大量に使用してほとんど素材取れなかったけどな
536:こんなに早く終わると知ってたらもっと考えてやったよ
537:で、今回のこれなんだったんだろう?
538:新モンスターの選考会とかなんじゃねぇ?
539:いや、それだとほとんど変わらないのいた意味がわからない
540:CPOのテストらしいよ
541:ソース
542:テスター
543:中身入りか。無駄に勘が良いのがいると思ったんだ
544:花火上がってたけど、あれは終了祝いだったのかな?
545:えっ、そんなのあったの?
546:綺麗だったよ(笑)
547:いや、なんでそこで(笑)つけるw
548:最後に一番大きいの上がった後、死んだんだ
549:えっ?
550:どうやら花火に宝石仕込んでたらしい。当たらなかった奴は喜んでいた
551:ブービートラップかよ(笑)
552:なにやってるんだ運営(笑)
553:CPOどんなのなんだろう?
554:まだよくわからないな。掲示板はβ参加者しか見れないみたいだし
555:中の人いると思わなかったから色々やった覚えが・・・うわっ恥ずかしい
556:何をやったんだ(笑)
557:CPOサイトのリニューアル告知キター
558:おお、これで色々とわかるな
559:それじゃあ正式版まで全裸待機
560:気はえーよ!
561:もちつけ(笑)
562:(笑)
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