01-11 鉱山
ユニークモンスターが大量発生している。
その強さはただの色違いから強力なものまで様々だ。
中には大規模戦闘級のものまで居る。
強い奴、特に誰も倒せていない奴を自分で倒したいという者は沢山いて、そういう者たちの死に戻りで生産依頼が増加している。
だが、需要に供給がおいついていない。
モンスター素材ならば持ち込みがあるのだが、鉱石などは嵩張るので持ち込まれる事がほとんど無い。
そんな訳で、生産民が集まって各地に採取へ向かっている。
彼らもそんな一群だ。
HANTのモンスター配置は天気図のように表される。
気圧の中央に当たるところに強力なモンスターがいて、そこから離れるごとに段々と生息しているモンスターが弱いのに換わっていくことが多いからだ。
大移動はあまり無いが、小さな移動はちょくちょくあるので、そういう情報を集めて予報しているPLもいる。
その情報を元に、弱いモンスターが出る場所を通りながらレールを施設していく。
向かう先は4番鉱山、軽鉄鉱や炸裂岩などが産出される所だ。
森を抜け、坑道の一つに辿りついた。
―ガガガガガガガガッ
坑道の奥から音が聞こえる。
先客が居るのだろうと思い彼らは中へと進んだ、そこで待ち構えるものを知らずに…
―――
「なんだこいつ?!」
灰色のライノー種、ユニークモンスターだ。
背中から尖った物が付いた肢を生やし、鶴嘴の様に岩盤を掘削している。
しかも、そうやって掘り出した鉱石を食ってやがる。
なんて勿体無い。
呆然としていると赤みを帯びた結晶付きの鉱石が掘り出された。
「…そ、そいつは、火紅石?!」
火紅石―いわゆるルビーの原石だが、HANT世界では別の意味を持つ。
名前の通り属性を持っており、装備を作る際に混ぜれば耐性などが付く。
この坑道では一番のレア素材だ。
―バリボリッ
「あああああああっ!!」
そのレアさを気にも留めず食う姿に思わず鶴嘴を構える。
―がしっ!
「はーなーせーっ!!」
「待て待てっ! 態々ノンアクティブに攻撃しかけるな。
相手の実力わからないのに、皆を危険にさらすつもりか?
無駄に戦う余裕は無いんだぞ!」
「しかしっ!!」
「頭を冷やせ!
素材の到着を待っている奴らがいるんだ!!」
「ぐっ!!」
「予定量運んだ後なら好きにしろ」
「……わかった。くそっ、首を洗って待って居やがれ!!」
その騒ぎを気にも留めずそのライノーはもぐもぐと鉱石を食べ続けていた。
―――
「よーし、これで最後だ!」
「「おおっ!!」」
トロッコに鉱石を積み込み、そう宣言する現場監督。
あとはこれを集落まで運んでレールを回収すればミッションコンプリートだ。
トロッコを坑道入り口まで動かした時、別のレールの振動に気付いた。
しかもだんだんと強くなっている。
「誰か来る…戻ってくるの在ったか?」
このまま行くと衝突するので分岐点を動かしその先にトロッコを止めて待機していると、トロッコが一台近づいてきた。
乗っているのは完全武装のハンター6名、武装の素材は中級で金属系。
唖然として、ふと気付き奴に声をかける。
「おまえ、討伐依頼出したのか?!」
「ああ、出したぜ。おっ、ちょうどいい時に来たな」
「馬鹿かおまえっ!」
「はっ、討伐依頼出して何が悪いんだ?」
そういえばこいつは生産バカだった、と現場監督は頭を抱えた。
PLでもハンターギルドに依頼を入れることが出来る。
その場合、その依頼の報酬額は自動的に決定される。
依頼を出す際はその報酬額が自動的に銀行から引かれるので、その分を所持していなければ依頼を出すことはできない。
依頼が取下げられればその金銭は戻るが、誰かが依頼を受けている最中は取り下げることが出来ない。
依頼は期間が定める事が出来、定めなかった場合は自動的に1日となり、それが過ぎれば自動的に依頼取下げとなる。
ここまでは別に問題ない。
問題なのは、PLの出す依頼には必要ハンターランクが無いということだ。
普通の物ならばハンターランクより上の依頼は受けることが出来ない。
無論、ハンターランクが上の依頼ほど報酬は良い。
だが、ハンターランクはハンターギルドの依頼を受けなければ上がらないので、上級者でもハンターランクが低い者もいる。
そういう者でも受けられるようにと運営が思ったのか、PLが出す依頼はハンターランク関係なく受けることが出来る。
つまり低ランクでも、普段受けられない高額な報酬の依頼を受けられるということだ。
そんな訳で、運よく倒せればという一攫千金を狙う者が湧きやすい。
特に現場が坑道などの狭い場所だと確立が跳ね上がる。
粉塵爆発など威力が高いことを手軽に行えるからだ。
これがある程度物を知っている者ならばその手は使わない。
坑道が潰れる可能性があるからだ。
しかも、ここでは炸裂岩が出る。
炸裂岩は天然の火薬で衝撃には強いが火気厳禁。
そのため、使う工具類は火花が出ないよう全て金属は使っていない物を使用する。
光源も熱を伴わないものを使用する。
そんな場所に金属素材の装備を着けて来る時点で程度が知れる。
だが、そういう事にこいつは気付いていない。
装備品ばかりを作り続けてるタイプで、それ以外の事が頭にほとんど無い。
取れるのは軽鉄鉱と火紅石のみだと思っているのだろう、炸裂岩を屑石に分類していた。
ここで使う工具類は採掘時に支給しているので、何故ここでこういう物を使ってるか理解していない可能性が高い。
あいつ等を見て思うのも中級装備を揃えられる実力者だ、ぐらいだろう。
衝撃から何とか立ち上がって口を開こうとした時、トロッコが止まってハンターたちが降りてきた。
「おっさん達なんで居るんだ?
おれらの獲物、横取りするつもりか?」
閉口一番そんな事を言ってくる戦闘の金髪イケメン。
「いやいや、おれが依頼出したんだよ」
「そうか。なら、おれらに任しとけ。
すぐに片付けてやるからよ」
「ちょっと待て…」
「…なんだおっさん?」
「お前たちは解っていて来たのか?」
「はっ、そこの奥にいるやつ倒すだけだろ。
なあ?」
金髪イケメンは生産バカに話を振り、バカはこくこくと頷く。
深く溜息をつき、馬鹿が馬鹿をやる前に釘を刺しておく。
「その格好で行くつもりか?
ここは火気厳禁だ」
「はっ?」
何言ってんのこいつという顔で生産バカの方を向く金髪。
他の奴らも馬鹿じゃないのという顔でこっちを見てくる。
生産バカは首を横に振っている、やっぱりな…。
「ここでは炸裂岩が取れる。
火花でも爆発する奴だ。
そんなことも知らずにここに来たのか?」
「はっ、嘘付け。そんな説明書いてなかったぞ。
…はは~ん、さてはてめぇら横取りするつもりだな」
「あんた、好きにしろって言っておいて嘘ついてまで邪魔するつもりか?
そんなもの見たことねぇよ!」
周りを見ていると唖然としている者たちの中にきょとんとしている者が数名。
今度からは一々教えてからにしないといけないのかと暗い気持ちになった。
一応炸裂岩はあるが、知らない奴に持たせたところで判別は出来ない。
火をつけて見せようにも、火種になるものは持ち合わせていない。
「ちっ、無駄な時間使ってられねぇわ。
行くぞ!」
6人連れ立って坑道に入ろうとするのを見て、唖然としていた者たちが慌てて止めにかかる。
「邪魔すんじゃねぇ!!」
「人の話素直に聞け!!」
押し問答しているとその中で悲鳴が上がった。
「て、てめぇらが悪いんだぞ。
おれたちの邪魔してんだから!!」
どうやら剣を抜いて斬り付けたようだ。
殺気立ち、距離を取ると各々の工具を構える。
ハンターたちも武器を構えた。
人数ではこちらが遥かに上だ。
装備揃えてるだけの馬鹿には負ける気はないが、装備面では遥かに劣るので油断は出来ない。
にらみ合いを続けていると、にわかに後ろが騒がしくなった。
振り返ると坑道からライノーが出て来たので、工員たちが慌てて道を開けていた。
坑道で見たのと同じ感じだが、背中から肢は生えていない。
「奴だ! 奴を殺せっ!!」
バカが喚く。
ハンターたちは一瞬呆然としたが、すぐに気を取り直してライノーから距離を取りながら道具を出す。
手榴弾だ。
すぐ脇には炸裂岩と軽鉄鉱を満載したトロッコがあるし、入り口には炸裂岩の欠片なども落ちている。
爆発すればただではすまない。
ライノーは状況がわかっていないのかのっそりと歩いている。
「やめろぉぉおおおお!!!」
工員たちが止めに入ったが間に合わない。
もうピンを抜き振り被っている。
―ドォンッ!
背後から腹に響く音がして、ハンターたちは手に持っていた手榴弾を落とした。
いつの間にか、頭がなくなっている。
ほとんど間を置かずに落ちた手榴弾は爆発し、ハンターたちは消えたがその様子を見た無傷なバカはがたがたと震え出した。
振り返ると、相変わらずのライノーが1体。
周りにも変化は無く、音の原因は不明だが、傍観していた奴らが驚いた表情でライノーを見つめている。
「ありえない…ありえないぃいいいいいっ!」
錯乱したバカが鶴嘴を振り被ってライノーへ襲い掛かろうとしたので慌てて止める。
「離せっ! 奴を倒さなきゃ奴を倒さなきゃ奴を倒さなきゃ奴を倒さなきゃ…」
次第に静かになり姿を消す。
精神的な負荷の超過によりカウンセリングルーム送りになったのだろう。
ライノーは悠然と進み、手榴弾の爆発に残ったハンターの装備を摘んでいく。
「…で、何がおきたんだ?」
とりあえず傍観していた奴に話を聞く。
「一瞬だったからよくは見えなかったけど、背中から筒みたいのが出て轟音が」
「…………大砲?」
「たぶん……」
ぐるんっと振り向くとちょうどライノーが森の中へ去っていくところだった。
「……帰るか」
「「はいっ!!」」
とりあえずそれらを脇に置いて、当初の予定に立ち返ることにした。
後で掲示板に乗せておこう。
―――
ユニークモンスタースレ162体目
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677:一気に量が増えたな
678:まあ、普通のとあまり変わらないのが多いけどな
679:で、今のところ攻略できていないのはどれだけ居たっけ?
680:剣舞狼、墳乳牛、巨凶鳥、阿修羅人馬、真黒猫と蝶蜥蜴かな。飛頭象はこの間倒された
681:あれ? 真黒猫って討伐報告無かったっけ?
682:そうだっけ?
683:ログ探っても出てこないな。相方の毒白猫の報告はあるけど
684:白いの倒してる間に黒いの居なくなるんだよな。先に黒いの倒そうとすると白いのが庇うし
685:剣舞狼は倒したぞ
686:おおすげー
687:乙
688:でドロップは?
689:うpキボンヌ
690:まだかな
691:ワクワク
692:ドキドキ
693:キドキド
694:・・・続報無いな。騙りか
695:騙りじゃねぇよ
696:ならドロップうp
697:教えない
698:はっ?
699:うわー(笑)
700:騙りデター(笑)
701:だから騙りじゃねぇ!
702:じゃあ、どうやって倒したんだ?
703:待ったけど投稿されないな
704:やっぱり騙りだな
705:そうまでして目立ちたいのか・・・
706:流れ変えよう。新しいの見つけた。石食うライノー種っぽいなにか
707:なにかってってなにさ(笑)
708:背中から色々生やすんだよ、鶴嘴とか砲塔とか
709:本当になにかだな(笑)
710:4番鉱山で見つけど森に帰っていった
711:あの辺りか。探してみるかな
712:じゃあ、とりあえず仮称決めよう
713:でも、これっていう特徴ないな・・・
714:背中犀
715:あっ、色は灰色だった
716:石喰犀
717:鶴砲犀
718:混ぜれば良いってものじゃ(笑)
719:汎用犀
720:灰色犀
721:他に無いかな
722:後は喰森犀とか発砲犀とか
723:発砲はしたが森喰ってねぇ(笑)
724:じゃあ発砲犀で(笑)
725:じゃあそれで(笑)
726:おー(笑)
727:パチパチ(笑)
728:ドンドンパフパフ(笑)
729:で、どうやって倒そう?
730:・・・がんば(笑)
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