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Chimera Park On-line  作者: カカセオ
第1章 クローズドβ
10/20

01-10 イベント

『Chimera Park On-lineクローズドβのテストしていただきありがとうございます。

 メンテナンスによりアップデートを行いました。

 内容は以下の通りです。

 ・パーツ組み換えの登録

 ・転生処理の変更


 パーツ組み換え画面で現在のパーツ構成等を保存し呼び出す事が可能になりました。

 よろしければご利用ください。


 寿命後転生する現世(フィールド)が変更となりました。

 現世には寿命時のステータスで転生いたします。

 転生場所はステータスによって変動いたしますのでご了承ください。

 それに伴い、死亡時に冥界へと戻るように変更いたしました。

 転生後、寿命の制限はなくなり成長はステータスが一定値を越えると発動します。

 発動時に今成長するか一時待機するかの選択肢が出ます。

 待機にした場合ステータスからいつでも成長可能です。


 クローズドβテストも残るところ2日となりました。

 残りわずかですが、引き続きChimera Park On-lineクローズドβのテストをよろしくお願いいたします』



―――



 転生地点は森の中。

 なんとなく見覚えがある所に出たと思ってると、周辺に気配を感じた。

 向かって来るようなのでヤサイは自らの気配を消して隠れた。

 現れたのは見覚えのある格好をした奴ら。

 ハンター―HANTのPCプレイヤーキャラクター4名、装備の材料は全員中級モンスターの物だ。

 つまり、ここはHANTの世界(サーバー)なのだろう。

 HANTのデスペナルティは所持品全ての消失(ロスト)なので、特別な時でもなければ大抵手に入れ易い物を装備する傾向がある。

 それを基準として考えれば、彼らは全員上級者。

 ステータス的には分が悪い。


(…って何で見つかってねぇんだ?)


 上級者なら察知能力も高く、気配が“無い”場所に違和感を感じて何らかのアクションを起こすはずだが、彼らは周辺を警戒しつつも安心して進んでいる。


(何かイベントでも…って俺たちか!)


 HANTの方でもメンテナンスやっているかと思ったらこういう事だったようだ。


(プレイヤーに丸投げとか運営もよくやるぜ。

 まあ、嫌いじゃねぇから頑張っか。

 そうと決めたら、もっとネタ仕込まねぇとな)


 《石食》は手に入れたが人跡未踏の地に坑道なんてあるはずも無く、一から掘っても高が知れていた。

 だが、ここなら比較的楽に手に入れられる。

 目線の違いで直ぐには気付けなかったが、此処は良く知っている場所だ。

 目的の場所へ向かうルートはわかるが、その為にはまず移動しなければならない。

 そうすれば流石に彼らもこっちに気付くだろう…たぶん。


(…ま、しょうがねぇか。

 その方が盛り上がんだろ)


 にやりと笑みを浮かべ、ヤサイは行動を開始した。



―――



『いつもHunter and Nature Troopsをご利用いただきありがとうございます。

 メンテナンスが終了いたしました。

 本メンテナンス以後、一定期間ユニークモンスターの発生が増加いたします。

 特異な動作をする可能性がございますが、バグではありませんのでご心配なさらずにご利用願います。

 それではHunter and Nature Troopsをお楽しみください』



―――



「見つけた?」


「いや。そっちは?」


「何も変わりないわ。この辺りにはいないのかしら?」


「もっと奥へ行ってみようぜ」


 あーれす、シグ郎、蛍毘(ほたるび)、ゼンザイの4人は同じ頃にHANTを始めて同じプレイヤーギルドに所属している。

 気も合うでの良くトループを組んでいて、連携して中級者向けと呼ばれるモンスターも狩ることができるだけの実力は持っている。

 ギルドの先輩達に言わせれば、まだ尻に殻がくっ付いているらしいが。

 今日はユニークモンスターを探してこの森へ来た。

 特殊な素材は金になるし、自分達で使ってもいい。

 この森は奥に行けば行くほど難易度が上がる。

 まだまだ上級者の区域ではないが、ユニークモンスターはその辺りに出るものよりも強いことが多い。

 もっと奥の方だと厳しい相手かもしれないので、出来ればこの辺りで出て欲しい。

 ゼンザイ(脳筋)以外の皆がそう思っていた。


「?! あーれす危ない!!」


「へっ、うわっ!!」


 突如湧いた気配にシグ郎が警告を発する。

 間一髪であーれすは防御が間に合ったが吹き飛ばされ、木に叩きつけられる。


「がはっ!!」


 攻撃してきたのは見たことのない魔獣―長い首に長い足の四足で形状的にはホース種に近いが、鬣は無く罅割れた皮に覆われている。

 中級区域の上位モンスターに迫るパワーと近づかれるまで判らなかったほどの隠密性、見上げるほど大きくは無いが頑健そうでHPもそれなりにあるだろう。


「俺たちが当たりを引いたか…」


「もらった!!」


 ゼンザイが高く飛び上がって、大剣を振りかぶる。

 《断頭台》―《ジャンプ》と《斬り下ろし》を組み合わせたTA(タクティカルアーツ)で手軽かつ高威力なので愛好者は多い。

 欠点は発動までの隙の多さと技の後の硬直。

 本来なら足止めしてる最中に入れるのがベストな技だが、今回は避けられても構わない。

 足止め役のあーれすはまだ立ち上がれていない。

 奇襲を受けたためにいつもの連携を行えない状態にある。

 一旦仕切りなおす為、相手が避けざるをえないような攻撃をする。


(おれだって結構考えてやってるんだ!!)


 だが魔獣は動かず、これは当たるかもと思い振り下ろそうとしたとき、下から何かが突き上がって来た。


「おぶっ!!」


 顎に直撃しゼンザイは吹き飛ばされた。

 麻痺付きのナイフを投げようとしていたシグ郎も弓を構えた蛍毘も顎が外れそうなほど口を開け、呆然としていた。

 彼らの思いは1つだった。


(体が縦に伸びて腕生えてアッパーカットとかなにそれ?!)


 いち早く我に返った蛍毘が矢継早に矢を射掛けるが、岩石化した皮膚(?)に弾かれる。


「何よ、こいつ?!」


 飛び道具は不利と見てシグ郎は毒玉を出して投げつけた。

 当たると破裂し中にある粉末が飛び散るもので、顔に命中すれば目潰しなど状態異常を引き起こすが、元の姿に戻って回避された。

 その状態で突進してきたので慌てて回避したが、突然張り出した腕でラリアットを喰らい木に叩きつけられる。


「ぐはっ!!」


 叩きつけられたシグ郎を尻目に、蛍毘は矢先に分銅を取り付けて射掛けると、ドゴドゴッと命中して岩の装甲に罅が入った。

 どうやら回避能力は高くないらしいと見ると、今度は虎の子の爆弾付きの矢を構えた。

 今の攻撃でヘイトを取ったのだろう、こちらに振り向き突進してくる。


(今よっ!!)


 爆発の影響をこちらが受けないぎりぎりを見極めて矢を放つ。

 狙い違わず胴へと向かう。

 会心の一撃、それは魔獣の頭上を飛び越えていった。


「えっ?!」


 今度は首と足を縮めたのだ、その上鼻先には角がある。

 外れた矢は呻いていたシグ郎に当たり爆発する。

 呆気に取られた瞬間、突進をもろに受けた。


「きゃあっ!!」


 防具を突き破り、腹に角が突き刺さる。

 魔獣は首を振って蛍毘を地面に投げ飛ばす。

 そうして倒れた上を魔獣は駆け抜け、往復した。

 回復薬を飲み干しようやく立ち上がったあーれすの目に映ったのは爆発跡と岩で覆われたライノー種らしき魔獣の姿。

 ゼンザイの呻き声はまだ聞こえる。

 倒せなくてもせめて一矢報いたい。

 こちらに気付き向かって来たので盾とメイスを構えて待ち構える。

 見る間にホース種のような姿に変わり、棹立ちになって踏みつけてきた。

 そこへ踏み込み、《シールドガード》を発動して全力が込められる前に受け止める。


(これを逸らして体勢崩れた胴へ一撃ぶち込む!)


 その思いは頭上から叩き潰された。



―――



「おかえりー」


 拠点の復活地点―竜穴の尻尾へ死に戻ると先にやられていたシグ郎が待ち構えていた。

 蛍毘はさっさと装備を替えに行ったのだろう。

 死に戻ると下着姿にされるのだ。


「おう。つうか何だよあれ。バグモンスターか?」


「いや、公式じゃバグじゃないって明言されてただろ」


「形状変わるとかありえないだろ!」


「そういう仕様なんだろ…」


 会話しているとゼンザイも死に戻ってきた。


「ただいまー。いやー、やられたやられた。っつうわけでリベンジ行くぜ」


「行けるかボケー!!」


「今すぐなんて無理ゲーだろが」


「いや、奇襲受けなければ結構やれなくねぇ?」


「…で、どうやって奇襲防ぐんだ?」


「……あー、とりあえず行けば何とかなるだろ」


「なるか!!」


 わいわいがやがややってると蛍毘が戻ってきた。


「来ないと思ったらいつまでそんな格好してるのよ」


「「いや、こいつがバカだから」」


「えっ、俺のせい?!」


「もう…あっそうそう。掲示板見てきたけど、凄いことになってるわよ」


「凄いって何が?」


 蛍毘の話によると各地に色々なユニークモンスターが多数発生。

 弱いの、強いの、人懐っこいのや気にしないの、すぐに襲ってくるのなど性質も様々。

 中には目茶苦茶な挙動をするのもいて、それの真偽などで掲示板が炎上しているという。


「他にもああいうのが居るのか…」


「討伐隊の結成呼びかけてるのも居たわね。で、私達の情報も上げるの?」


「……いや、ギルドには話すが掲示板はやめておこう」


 今まで事前に情報を調べてから適正な狩場へと向かっていた。

 後発組で効率を考えれば当たり前のことだ。

 苦戦することもあったが、それは相性やステータスが足りなかった事が原因。

 いくら非常識な相手とはいえ、ここまで手も足も出ないことは無かった。

 誰も倒したことが無い相手、出来れば自分達でリベンジしたい。


「とりあえず装備揃える所から始めないとな」


「前と同じ装備揃える気ならきついわよ。あの辺りにも凄いの出たって」


「…マジか」


(リベンジ、無理かもしれない)



―――



 HANTへGO!1日目


1:というわけでスレ立てました


2:乙


3:乙


4:というかほとんど説明なくこれかよ


5:運営丸投げか


6:連動ってこういうことか


7:HANTの公式にはちょこっと載ってたけどな。こっちはログインしないとアップデート内容不明だし


8:とりあえず美少女にテイミングされたい


9:美幼女にテイミングされたい


10:ロマンスグレーのおじ様希望


11:だめだこいつらはやくなんとかしないと


12:苦節一ヶ月(ゲーム内時間で)ウサギやってて良かった。美女グループに拾われました


13:爆発しろ(笑)


14:まて、ウサギなら俺らも持っているはずだ!


15:おお!


16:そうだ!


17:草食系なんで因子無いorz


18:イモムシだけど拾われたよ(笑)


19:くそー、なんてうらやましい!


20:・・・そういやクローズドβの後どうするんだそういうの。データ全消しだろ


21:もしかして新モンスターの公募とか兼ねてんじゃねぇ?運営たまに横着するし


22:うわ、ありえる(笑)


23:・・・つまり俺のAI入ったのが美幼女に調教されるんだな。うわ、胸熱


24:とりあえずそこから離れろ(笑)


25:実はネカマというオチとかな。HANT普通に性別偽れるし


26:そもそも18禁だろ


27:・・・合法ロリええじゃないか(笑)


28:夢見たってええじゃないか(笑)


29:おまえら(笑)


 ・

 ・

 ・

 ・


98:倒した相手のアイテムって普通に使えるんだな


99:みたいだな。ポーチとか何とかかついで運んでる


100:女性がさっきまで身に付けてた装備ハァハァ


101:おまわりさん、ここに変態がいますよ(笑)


102:ま、冗談はさておき武器や防具身に着けれればな・・・


103:生産職と交渉するか?言葉は通じないけど


104:外国語みたいだもんな。無駄に芸が細かいのはさすが運営


105:オフで話し通せばいいんじゃねぇ?


106:おう、ナイスアイデア!ちょっと言ってくる


107:いってらー


108:エイプ種の手持っていれば武器は装備できるな。さすが類人猿、手先が器用だ


109:おお!って持ってねえや。うぃき見て行けたら行ってみるか


110:駄目だった。下手に手を貸すと後が怖いってorz


111:まあ、取得アイテムがPK品と違って普通に使えるしな。万が一があれば痛くない腹探られるか


112:というか討伐とか組まれてるのが居たり


113:なむー


114:南無南無


115:HANTの人たち中身知らないからな。素バレしそうなのも居るけど(笑)


116:まあ、俺たちは討伐組まれない程度に遊ぶべ


117:そういやクエスト受けた。最近縄張り荒らす人間どもの撃退とか


118:クエストキター


119:詳しく


120:いや、普通に向こうと同じく会話できるんで話してたらそんな流れに


121:おー、おれも話せる相手と話してみよう


122:素敵な出会いとかあるかな(笑)


123:獣姦好きならおれは止めない(笑)


124:むしろウェルカム!(笑)


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