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天使の1ページ  作者: もっち
本編
26/82

《真偽 後編》

《#14 真偽 後編》



守次の言った一言で俺は手に持っていたコーヒーカップを落としそうになる。

騙されている・・・?俺が?

理解よりも早く「嘘だ」という抵抗が先によぎった。


「・・・・・馬鹿馬鹿しい。何言うかと思ったら、そんな下らないことを――」

「その反応から見るに・・・あの天使から何も聞いていないな?」

「・・・知るかよ、そんなことっ・・」


咄嗟にカップを置いて席を立とうとした俺を止めようともせず、ただこちらの目だけを合わせる守次はまるで「図星だな」とでも言いたげに不敵な笑みを浮かべたままコーヒーカップを手に取る。

もちろんそこで一方的に去ることもできた。しかしそれはなんだか・・・図星突かれて逃げました・・・・とでも言っている気がして俺は力一杯拳を握ると、荒っぽく椅子へ再び着席した。


「・・・まともに聞く気になったか?」

「・・・・・・・」


何も答えなかったがそれは恐らく肯定と取られたのだろう。彼は手にとっていたコーヒーに軽く口をつけると、先ほどまでの不敵な表情を一変させ真剣なものへと変えた。


「いいか?お前がどこまで知っているのかは知らん。だが俺とお前・・・守次と藍川の関係を知っていること前提で話す。

あの天使についてちゃんと理解していたのなら、今までのように単純に「ハイ行ってきます」などと戦闘は起きない筈だ」

「どういうことだよ」

「やはり何もわかっていなかったか・・・」


守次は深くため息をつくと再びコーヒーに口をつけて間を置いた。


俺が・・・何を知らされていないというのだ?

櫻井からの助言だったとはいえ神器についてもある程度の知識も得たし・・・使徒、神界、幻界、天界、地界、神姫、ノート、契約者(マスター)、持ち(オーナー)・・・

・・・

他に何を・・・知らない?


(・・・・いや、そもそもそうやって疑心を煽るのが目的なのかもしれない・・?)


コーヒーの置かれた机に目を落として考え込んでいた俺はチラと守次へ視線を変えるが、それに気付いているのか気付いていないのか、至って平然とコーヒーを飲んでおり俺も視線を店内の景色へ泳がせて平静を得ようとした。・・・・・できそうにない。しかしどうしてこんなことになっているのかと自問自答をしかけた所でふと思う。

・・・・・よく考えればこいつが俺に協力することにメリットなどない。

偶然とはいえ神器と連雀を奪ったことだけでなく、その血の関係からもだ。そもそも初対面で一度殺されかけている・・・・・いや、日常を過ごしていた俺はあの時点で死んだと言える。そんな相手の言うことをどこまで信用できるというのだろうか?


「・・・・・俺が何を知らないかは俺も知らない。だが一度自分を殺した相手の言うことをアッサリ信じるほど平和ボケしているつもりもない」

「ふふっ・・・・確かにな。いきなり言われても信用できんか」


そりゃそうだ。

日常で目にする小さい嘘ならまだ目を瞑るかもしれんがスケールが違う。

当初は動揺して自分を見失ってしまったが、その反論と共にようやく目の前の存在が間違いなく敵であることを再確認する俺はそれまで縦横無尽に泳がせていた視線を真っ直ぐ守次へ向けた。


「・・・・これ以上腹の中を探りあったところで話も進まないか・・・」

「じゃあ、俺が何を知らないのかハッキリと―――」

「お前から見てあの天使はどう映る?」

「・・・・?」


どう映る?連雀が?

唐突な質問に俺は焦るというより疑問符しか浮かばない。


「・・・・・世間知らずというか・・・常識知らずと言うか・・・」

「だろうな。私にもそう見える」


お前なんかの視点と一緒にされても不快感しか湧かねぇよ。


「では次だ。お前は神器の知識を誰から得た?」

「・・・・?

彼女からだ」


一体なんだというのか?さっきから答えが意味を成さない質問ばかりだ。

そりゃこいつに殺されかけた時点で俺をマスターにしたのは連雀なのだからその本人に知識があってもそれは当然のことだ。むしろ知識無しにされたらたまったもんじゃない。ヤブ医者も裸足で逃げ出す見切り発車もいいところだ。


「・・・・・・ここまでで何か気づかないか?」

「気付く・・?」


何を?

連雀の常識の無さなど初対面で既に身にしみているし・・・・それが演技とでも言うつもりか?


「・・・・まさかあいつの天然っぷりが演技と言いたいのか?」


だとすればとんだ興ざめだ。この会話には何の価値もない。


「そうだ」


・・・・・・・・・・・・・帰ろう。まったく、なんの根拠があってそんな寝言を言いにきたのか。


「なぁ末裔・・・・疑問に思わないか?」

「何がだよ」


どうせ証拠もない煽りで俺と彼女の間を揺さぶるのが目的なのだろうがそんなことは――


「どうして自分の名前も一般常識も持ち得ない奴が・・・神器の知識や、以前のマスターとの約束は都合よく覚えているのか・・・と」


一瞬、時間が止まってしまったように俺の思考は凍りついた。


「・・・・・・・・・・・な・・・に・・?」

「よく考えてみろ。仮に何かの記憶喪失だと考慮してもだ、マスター・・・・いや、戦う為の存在であるお前が生き残ることに必要な記憶だけが残っているのは・・・・偶然としては出来すぎだろう。

しかも本人は他でもないお前にそのことに関して何一つ言っていないようだが、それだけでも十分おかしい」


絞るように出したかすれた声で返事する俺へ更に追い討ちをかけるように説明を続ける守次は困惑する俺をあざ笑う訳でもなく、ただ哀れむかのように見つめた。


「・・・・・まぁ、知っている訳もないか。俺も気付くのに時間がかかったしな」


何か言っている。しかし耳に入ってもそれは今の俺の頭では噛み砕けずにただの言葉の羅列として処理されていく。

確かに守次の言う通り、この記憶喪失は都合が良すぎる。仮に使徒としての記憶だけが残っていたと妥協しても、彼女が裕雪(ひろゆき)とした約束は個人的なもので使徒の彼女には関係ないことだ。どうしても都合のいい矛盾だけが残る。

だとしたら・・・騙されている?だが何のため?

守次は俺がマスターになっていることを当然と感じているようだが本来は俺も彼女も予想していなかった事態なのだ。その血筋から言って契約したことは必然と割り切れるが本人は今だ引きずっている程だし。

しかしもしも・・・・“あの時点”で契約することが想定外なだけで、俺の契約自体は予定されていたとしたら・・?

瞬間、脳裏に彼女とのやりとりが回想される。



『ごめんな…さ……い!マスターを救うにはその方法しか無くて…!』

『………必ず…帰ってきて下さい…マスター…』

『どうして・・・・どうして怒らないんですか・・・!?

お前のせいで!とかどうしてくれるんだ!とか、マスターだって思った筈です!』

『マスターが選んだのなら間違いないです!』



(考えすぎだ!

もしそうだとしても・・・・たとえ悪意があろうとなかろうと・・・連雀が約束を守ろうとしているのは事実だ!)


それを前提とするならばわざわざ祐雪との約束の対象となっている俺を戦いに送り出すのはそれこそ根本的に矛盾している。

何か理由はあるのだろうが何より、まだ1週間も経たない短い間柄だがその中でも積み重ねた信頼がある。

今までの連雀が嘘だとは思いたくない・・・・いや、嘘じゃない!


「俺が伝えたかったのはそういうことだ。お前がこの矛盾に微塵でも疑心を持っていれば当然あの天使など信用できる訳もないし、そんな奴を守る為に大人しく戦う筈がない。

・・・・・・だから意味のない戦争に巻き込まれる前に最後に通告しておく・・・今の内にでも神器を俺に渡して――」

「断る」


今度は俺が守次の言葉を遮って拒否を示した。

既にその目はさっきまでの動揺の色を消し去っている。


「・・・・・その意味が分かっているのか?」

「参考にはなったが・・・所詮お前は敵だ。それに―」


先ほどのように慌ててではなく、ゆっくりと椅子から腰を離した俺はポケットからコーヒー代を適当に出すとそれを机に置いてこちらの意志が理解できないと言いたげな表情を浮かべている守次を見下ろしながら続けた。


「お前は俺の大切な人を悲しませている・・・さっきも、以前も。

それは間違いなく許せない」


それだけ告げて俺は背を向ける。恐らくもう二度とこうして話すことはないだろうが後悔はしていない。

俺は俺の日常を・・・大事な皆を守るために“戦っている”のだ。決意を新たに足を進ませ・・・・・・


「キャー!」


背後に明確な殺気を感じてそれを止める。

近くにいた女性店員がお盆を落として叫び声を上げるが言うまでもなく、俺も理解していた。


「末裔・・・・・大人の忠告には従っておくものだぞ?」


口調は変わらないがその声には明らかな苛立ちと殺意が込められていたのは確かめるまでもなく、ゆっくりと振り返るとそこには同じく席を立って片手に見慣れない銃・・・量子兵器らしきものを構えた守次がいる。


「・・・・ここ、一応公共の場なんだけど?」

「知るかよ、俺はお前が思っているほど気長じゃないんだ。せっかく与えた最後のチャンスも断りやがって・・・それを断ったんだ、悪いが付き合ってもらうぜ?」


内心の焦りを見せず口角を上げて挑発する俺は不本意ではあるが敵意を露わにした彼に内心感謝した。やはりどれだけ言葉を並べてもコイツは敵なのだと嫌でも認識させてくれたことに。

それに・・・・一つだけやり忘れていたことがあった。


「そういや・・・・一つ言い忘れていたな」

「あ?」


胸元に下がる白桜に意識を集中させながら俺もまた敵意ある笑みで告げる。


「あのとき殺されたお返しが・・・まだだったな」



#14 完



《#15 再戦》

主のもっちです(´∀`)


4日連続で不投稿はすみませんでした。アクセスをみる限り、もしかしたら毎日更新があるか確認してくれていた方もたようで・・・・。

今後は安定できるよう2日に1話は更新しようかと思います。や、もちろん理想は1日に1話で頑張ります。



できれば感想書いてもらえたら頑張れるかな~(チラチラ)

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