第6アクセス‐‐‐ウイルス
どす黒い粘土のような塊が四方八方から押し寄せる。その塊に触れたオブジェクトは一瞬でガラス塊を叩き割ったかのような大音響をたてて千のポリゴン片となり爆散、消滅する。これがウイルスに浸食されたものの末路だ。
今立っている場所もすでにところどころが粉砕し、足の行き場が困る。
タタタタッ!と軽快な音をたててこちらのライフルからエネルギー弾が放出される。放出されたエネルギー弾はウイルスと衝突した瞬間、ぱっと弾けウイルスを消滅させる。
「たく。いやになるね、ウイルスはきりがない」
軽機関銃《MK48・Mod0》を乱射しながら時雨がうめく。
「俺っちこれで三十二体目だぜ」
「なにっ。俺は三十一体目だ」
松村と常陸がウイルスの削除数を競い合っている。
「時雨の言うとおりだな。きりがねえ」
「まったくね」
「ああ」
円楽、紅、俺の順でため息をつく。
俺達第五第六部隊がこのウイルスに浸食されまくったサーバーに侵入して作戦を開始してからすでに小一時間近くが経過していた。
当初のプランではすでに目的の中心部まで到達している頃だが、まだその半分も過ぎていない。まだ犠牲者を一人も出していないものの、そろそろ各自のエネルギー残量が気になるところだ。
「ネルク」
「ん?」
対ウイルス防護フィールドを展開しながらミリタリーが近寄ってくる。
「あれ何だと思う」
「?」
ミリタリーが指さした方角を見ると三百メートルほど前方のウイルスの影にグリーンやブルーなどの色がぱっぱと輝いている。そしてひときわ大きく金色が光る。
「あれってもしかして」
「ああ、おそらくな」
二人で顔を見合わせてにやりと笑う。
「おいおまえら!いまから俺達二人が力を使用する。巻き込まれるなよ?」
俺の一声を待ち望んでいたかのように全員の顔がほっと和らぐ。
「遅いんだよ」
「ぶちかましてやれー」
俺とミリタリーに声援を送りながら、全員でほふく前進を開始する。今立ちあがっているのは二人だけだ。
「よっしゃ、いくぞ!」
「派手にぶちかます!」
俺とミリタリーは右手を上げる。と同時に、俺の頭上に赤いエネルギーで形成された何千本もの刀が、ミリタリーの頭上に黒いエネルギーで形成された何千丁もの銃が出現した。
「全方向射出!」
俺が右手を振り下ろすのを合図に、赤い刀が次々とウイルスに向かって射出される。
「こっちもいくぜ!」
同じようにミリタリーが右手を振り下ろすと同時に頭上の銃が一斉に火を噴いた。
風を切るが勢いで幾千もの刀が宙を舞い、幾千もの銃が凄まじい轟音を轟かせ火を噴く。
「いけいけ~。二人に続け~」
地面に這いつくばった状態のままで銃を乱射する。
膨大な火力により一気にウイルスが削除される。この隙を利用する。
「お前ら!あの前方の部隊と合流するぞ」
「おお!」
一斉に立ち上がり、地面を蹴る。




