第5アクセス‐‐‐開戦
作戦当日。ID、MJ・0005ネルクこと俺が率いる第五部隊と、ID、WJ・0006ミリタリ―が率いる第六部隊は、例のウイルスに侵入されたサ―バ―の入り口に集結していた。
作戦開始まであと小一時間ほど。皆アップデ―トにより新しく手に入れた武器をいじっている。
ウ イルス削除用の武器はだいたいが銃だ。それも見た目はリアルの世界に存在する実物の銃と全く同じだ。違うといえば唯一、打ち出す弾丸だ。
リアルの世界の銃は、火薬や様々な気体の圧力を用いて、高速で弾丸と呼ばれる小型の飛翔体を発射する。しかしこの世界では、己を構成するポリゴンのエネルギーを具現化させて戦うという競技が存在する。銃もエネルギーを使う方が面白いという奴が出てきて、外見はそのまま、弾丸はエネルギー弾というSF銃が出来てしまった。
銃の他にも、爆弾やミサイル、刃物などが存在するが、これらを含めてすべてエネルギー系だ
今俺が装備しているのが、装弾数十五プラス一発のSIG・SAUER・P226が二丁だ。水や泥に数時間浸かってしまっていても正常に作動し、耐久性が抜群なフルオート拳銃だ。
「ほら、お前のだ」
「ミリタリー?」
いきなりベルトのようなものを投げられた。
「これは?」
初めて見るものだ。黒いベルトの端に、ほのかにグリーンの輝きをまとったひし形のクリスタルが付いている。
「対ウイルス防護フィールド発生装置らしいぜ。今回のアップデートで新たに導入されたみたいだ」
「へえ~・・・・」
なんとなく装置を起動させてみる。ブワンという音をだし、薄いグリーンの丸い結界が形成される。
「まあ、これで危険性は少し減った訳だ」
「気休め程度だと思うけどな」
二人でクックと笑う。
なんとなく周りを見渡してみるが、ざっと見て約三万人ほどのブレイカ―がひしめきあっている。
今回アップデートされ、新たに仲間として加わったブレイカ―が二万人、そして俺とミリタリーが率いる第五第六部隊に配分されたのが五千人。四分の一の人数を割り当てられた訳だ。
「おい、ネルク、ミリタリー、準備が出来たぞ」
ごつい銀のプレートアーマーを全身に完全装備した円楽が歩み寄ってくる。
一瞬甲冑のお化けかと思った。
「・・・・ごつい」
「うるせえ。安全対策だ」
円楽に続いて、皆がぞろぞろと周りに集まってくる。
「よし、皆準備出来たな。これから作戦を説明する」
俺とミリタリーは少し高い位置にあるオブジェクトの上に上る。
「え~、俺とミリタリーが率いる第五第六部隊はこのゲートから侵入する」
俺の背後に規律する、巨大な縦に長方形なゲートを見やる。本来ならば、ゲートはまばゆい白い光を放っているはずなのだが、このゲートはどす黒く歪んでいる。ウイルスに浸食された証だ。
「他の部隊も別のゲートから侵入し、ウイルスを殲滅しながらサ―バ―の中心部へと向かう」
「分かっているとは思うけど中はウイルスだらけ。死にたくかかったらここに残ることをお勧めするけどな?」
正直皆怖い。これから向かう先で死んでしまうかもしれないという恐怖はなかなか捨てられるものではない。
しかし、ミリタリーの警告で動く者はいなかった。
「俺達はここに集まる時点でもう覚悟を決めてんだよ。いまさら尻尾をまいて逃げだす訳にはいかねーよ」
皆その一言にうなずいた。
「よおうし、お前ら。この仕事が終わったら何でもおごってやる。だから誰も死ぬなよ」
「了解!」
俺達、第五第六部隊は絶対に生き残るという思いを心に秘め、ゲートをくぐった。




