第18セクション ‐‐‐介入者
俺、ネルクは何もないただ白い景色が広がっている場所にいた。四肢の感覚は無い。
奴、東風直人に体への接続を遮断され、俺の意識は深い閉鎖空間に囚われている。つまり人工知能である俺達のデータを一時的に保存しておく特殊なサーバーに転送されている。システムへのアクセス権を失っている状態である今の俺では、自力で体に戻ることは出来ない。
畜生、奴が今この瞬間にも俺の仲間を危険にさらしていると思うと、怒りが込み上げてくる。何もできない自分に歯噛みする。
無意味に何度もシステムにアクセスするが、帰ってくるのは拒否のメッセージだけだ。
今四肢が動くなら、この空間をめちゃめちゃにしてやりたい。
「・・・・畜生・・・」
何もない虚空に向かって俺は小さく呟く。
「はじめまして」
突然声が響いた。
俺の前に突如として光りの粒が凝縮しポリゴン片が徐々に人の形を形成していく。そして一人の男が出現する。
そいつは出現するなり、俺を見つけると小さく挨拶をした。一体こいつは何者だ?
綺麗に整えられたオールバックに、長細い顔、細い目。上下の服装は、黒いスーツで整えられている。
「あんたは?」
「私は秋津 宗という者だ。現実世界では東風博士の助手をやっている」
東風の助手、奴と同じ生身の人間。東風直人の次に高いシステム権限を持つ。
奴が実験をしている間はこいつがシステムの管理をしているということか。
「ここから出せ!奴をぶっ飛ばす!」
「いいぞ」
秋津が発した返事に俺は呆気にとられる。
こいつは俺をここに幽閉していなければならないはずだ。なのに、こいつは何を言っているんだ?
秋津は手元に操作パネルを呼び出して何かを操作し始める。すると、俺の視界にシステムアクセス許可のフォントが表示される。四肢の感覚が段々と戻ってくる。
「・・・・あんたは何がしたいんだ?」
俺は疑問をぶつける。秋津は手元のパネルを操作している手を止めてゆっくりと俺を見る。そして小さく頭を下げる。
「君には謝罪しておかなければならない。今、東風博士は自分の私利私欲のためにいくつかのサーバーを実験台として使用している」
すると俺の前にいくつかの窓が出現し、他のサーバーの現状態が表示される。どれもウイルスに浸食され、緊急メンテナンスが行われている状態だ。
それが一つだけでなく、十や二十くらいの数のサーバーが一気に停止している。
「いくら君達が人工知能であると言っても簡単に消してもいいとは思わない。私はもう耐えられない。君達を助けたいと思う。だから、どうかあの人を止めて欲しい」
「・・・・・・」
なら俺に頼むのではなく、現実世界でシステムを操作して奴を止めればいいではないかと思う。
秋津は俺の思いを読み取ったかのように口を開く。
「博士の権限はとてつもなく高位のものだ。とてもじゃないがこの私でも介入できない。だから、この世界の君に頼みに来た。もちろんシステムでバックアップはさせてもらう」
俺は秋津をまっすぐに睨む。
人間は信用ならない。だが、こんなチャンスは無い。奴と戦うための手段をくれるというのなら甘んじてそれを受け取ろう。
「では、博士をたのむぞ」
「ああ、・・・・ありがとう」
―――システムアクセス許可 パターン青 異常問題無し
全信号システムオールグリーン 再リンク開始―――
遅くなりました。
読んでいただきありがとうございます。
投稿が遅いのに、いまだお気に入りに登録していただいている方々、ありがとうございます。
書くペースがとてつもなく遅いですが、これからも私の作品をよろしくお願いします。




