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システム=神  作者: 橿倪・クレナイ
インフェルニティ第二端末
16/21

第15セクション‐‐‐衝突

「なあ」

「は、はい?」

「確かに俺は「都市が見渡せる場所」とは言ったが・・・・」


 俺達は都市が見渡せる高い場所に来ている。確かにここからの見晴らしはとてもいい。さっき戦っていた大通り等は丸見えだ。

 だが、俺はこの場所におおいな不満がある。なぜなら。


「何で観覧車なんだよ!」

「なによ。別にここでもいいじゃない」


 都市を見渡せる高い場所というのは、高層ビルの屋上に観覧車の一番上だった。

 ここまで来るのに、ウイルスとの戦闘は三回。ビルの室内で動きにくかったが、どれも単体だったため楽に進むことができた。


 周りを確認できるのなら別に観覧車でもどこでもいいのだが、なんだかここは緊張感が薄れてしまう。それに、今まで出会ったのは地面を走る狼型のウイルスだが、飛んでくる鳥型のウイルスもいないとも限らない。もし鳥型がいればこんな所は恰好の的だ。逃げる場所もない。


「おお、うじゃうじゃいるな」


 都市の全体を見渡してみると、予想以上のウイルスが徘徊していた。ここから確認出来るものは全て狼型の固体だが、その数は大体100~150体ぐらい。あの大群と正面衝突をすれば勝ち目はない。

 それともう一つ気がついたのだが、この都市にはゲームセンターのような建物が沢山ある。何故だろうか。


「このサーバーの管理室は?」

「あ、あそこです」


 アルファが示したのは、この都市の中で断トツに高いビルのてっぺんだった。この観覧車の頂点よりも高い。眩く輝き、黄昏の空に唯一イレギュラーな光りを放っている。


「あそこまで登れってか?」


 ウイルスに浸食されているこのサーバーでの移動手段は一つ、徒歩しかないだろう。

 俺はがっくしと項垂れる。


「ほら、しっかりしなさいよ。置いて行くわよ」


 大体のことを確認した俺達は無事一周した観覧車から下りる。相変わらず空は黄昏の色から変わらない。サーバーの時間軸も止まっているのだろうか。


「まあ、一応あのてっぺんまで向かうか」

「は、はい」

「それしかないでしょ」


 とりあえずあの空高くにそびえるサーバーの部屋に辿り着くことが先決だ。容易ではないだろうが、ぶつぶつ文句も言っていられない。俺達はゆっくりと歩みを進める。







































 アルファのサーバー、つまりここはゲームネットワークを管理するために造られたサーバーらしい。ここには現実(リアル)世界の人々のゲームアカウント情報が大量に保管されているはずだ。どうりで、ゲームセンターのような建物が沢山あるわけだ。

今はまだ大丈夫ならしいが、このままウイルスに浸食されれば、保管されているメールアドレスや個人情報などが流出してしまい、大変な事になる。


俺達は今、ウイルスの群れに見つからないようにビルの陰に隠れている。戦闘は可能な限り回避していきたいが、この先にいるウイルス達が邪魔で先に進めない。


「レーダーに反応、数は6」

「分かってるわよ」


 紅は物陰から勢いよく飛び出し、ウイルスの四角を突く。

 緑色のエネルギー弾が紅の突き出した腕から放出され、不意を疲れたウイルスの二体が爆散する。


ゴガガガガガ・・・


機械質な鳴き声をあげた狼型のウイルスはすぐに動き出す。紅が大量のエネルギー弾を発射しても奴らは軽く避けて見せた。

本当にこのウイルスは未知数だ。特殊な攻撃方法も備えているかもしれない。例えば、口からビームとかを出したり。そんなものを出されたらひとたまりもない。


「せいっ!」

 

 紅が注意を惹きつけてくれている間に、俺は物陰から一気に走り出してウイルスの背後を突く。またしても不意を突かれたウイルスは次々と俺のフォトンブレイヴの餌食となって爆散する。


ギャギャギャギャ


 最後に残った一体は、逃げるかのように走り出した。


「逃がさないわよ」


 背後から紅が放ったエネルギー弾で戦闘終了となった。あのまま逃がしていれば、今度はウイルスの大群を引き連れて戻ってくるだろう。そんな事になれば確実に負ける。

 今は時間が惜しい。ウイルスに見つかる前に、すぐさま移動を開始する。

 しかし、走り出した俺達に問題が発生した。


「ま、待ってください~」


 アルファの走る速度と俺達が走る速度が違うため、アルファを置いて行く形になってしまった。


「ああ、もう」


 俺はアルファをおんぶして走り出す。さすが見た目が小さな子なだけ、体重も小さな子の重さに設定されていて、かなり軽い。先を走っていた紅にすぐに追いつく。

 アルファをおんぶしている俺を見て紅は羨ましそうな顔をして、一言ぼそりと言った。


「あ、後で私にもしなさいよ」

「え~、お前重いから無理」

ガスッ


 いきなり頭をしばかれた。くそ、両手がふさがっているせいで防御が出来なかった。後で思えてろよ。


























 あと少し走れば空高くにそびえ立つビルの下に到着する。路地裏のような細い通路を通り、徐々に近づいて行く。ビルはもう眼の前だ。

 路地を抜け、広い大通りに出た。そこには。


「・・・・おい、マジかよ」

「・・・不覚ね」

「はうう・・・・」


 大通りには、周辺一帯を埋め尽くすほどのウイルスが徘徊していた。腹をすかせ、餌を求めるように一斉にこちらを見る。これはもう、絶体絶命の危機だ。


「二人とも、合図したら全速力でここから逃げろ」


 こんな大群相手に正面から戦って勝てるわけがない。最悪自爆で敵を巻き込み、一気に消滅させるぐらいしか出来ない。こんな所で全員死ぬわけにはいかない。せめて二人だけでも逃がさなければ。

 俺の言葉に紅は表情を曇らせた。だが今はそんな事を気にしている余裕は無い。ウイルス達は今にも飛びかかってきそうだ。


「急げ!迷ってる暇はない!」


 左手に銃、右手にフォトンブレイヴを同時に構える。二人を追いやるようにして裏路地から逃がす。


「ちゃんと帰ってきなさいよ!」


 去り際に紅が大声で叫ぶ。二人の足音が遠ざかると、俺はウイルス達に包囲されてしまった。もう退路はない。


「・・・・ゴメンな・・・」


 小さく謝罪の言葉を呟く。この状況で生き残れる確率はゼロに等しい。

 だが、最後は戦って散りたい。せめてこのサーバーにいるウイルスの数を少しでも減らしておかなければ。

 銃とフォトンブレイヴの出力を最大に設定し、ウイルスへと向ける。


「いくぜ。ウイルス共」


ガガガガガガガ

ギャギャギャギャギャ


 覚悟を決め、俺は地面を蹴った。




















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