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システム=神  作者: 橿倪・クレナイ
インフェルニティ第二端末
13/21

第12セクション‐‐‐新たな仕事


 空中に沢山の半透明ディスプレイが浮かび、数人のブレイカ―がホロキーボードを叩いている。

 転送した先は、このインフェルニティの世界を管理する最重要施設、《管理塔》。外観は普通の高層ビルだが、特別な許可を出された者しか入ることができず、警備もかなり厳重だ。


「おい、ジェネ。来たぞ」


俺の呼びかけはむなしく反響し、薄暗い部屋の暗闇に吸いこまれていく。

 数秒その場で待ってみたが、ジェネが出てくる様子はない。


「ジェネさんなら会議室にいますよ」

「・・・・どうも」


 親切な男が優しく教えてくれる。小さく礼を言い、再び転移を開始する。転移の光が薄暗い部屋を明るく染め上げ、一生懸命仕事をしていた者達の顔を照らす。いい迷惑だったと思う。


「おい、ジェネ。来たぞ」


 先ほどの部屋と同じく暗い部屋だ。大きな円形の机と並べられた椅子。四方の壁にはいくつものディスプレイが浮かんでいる。

 いくつもある椅子のうちの一つに腰かけ、作業をしているジェネに視線を向ける。


 腰まで伸びた長い金色の髪に、右眼の黒い眼帯。整った顔立ち。純白の上着を羽織っている。俺とは正反対の色だ。だいたい日本の女子中学生の平均身長と平均体重になっているはずだ。三年前よりも大きく成長した彼女は少し女の子っぽさが出て来ている。


ジェネは仕事に忙しく、こちらに気づいていないようだ。

仕方ないから、耳に息を吹きかけて驚かせてやろうと思う。


「ふうっ!」

「ひやああっ!!」


以前のジェネからは考えられないほどの可愛らしい声が漏れ、飛び上がった。


「来てやったぞ、相変わらず忙しいみたいだな」


 今彼女の眼の前には、約十個のディスプレイが浮かび、頭が痛くなるほどに大量に文字が表示されている。どれも重要な物だとは一目で分かる。

 忙しい彼女を手伝おうとは思わなくもないが、いかんせんやる気が起きない。


「ネ、ネルク!・・・・コホンッ、全くだ。たまにはゆっくり休みたい」


男のような口調は相変わらずだ。頬を赤く染めながら肩がほぐすように、両腕をぐるぐると回す。


「で、新しい仕事ってなんだ?」

「ああ、それについてだが・・・」


 ジェネが俺から視線を外し、向かいの椅子へと向ける。俺もそれに倣って向かいの椅子を見るが何もない。正確には何かがいるような気配がするのだが、見えない。


「怖がるな。出てきてくれ」


ジェネが誰もいない椅子へと向けて声をかける。

すると、さっきまで誰もいなかった空間がゆらゆらと蜃気楼のように揺れ、何かが姿を露わした。


「・・・女の子?」

「ああ、そうだ。彼女が今回の仕事の依頼者だ」


 赤い少しカールのかかった長い髪に、あどけない表情。白いパーカーのような服を着ている。見た目的には小学生くらいだろうか。

 怯えた様子でこちらを見ている。俺がぎろりと睨んだら小さな悲鳴を上げて再び姿を消してしまった。


「あまり驚かさないでやってくれ。極度の人見知りだそうだ」

「・・・・・仕事の内容は?」


 驚けばすぐに姿を消してしまう少女となんてどうやったらコミュニケーションをとることができるんだ?正直この手の奴は少々苦手だ。


「彼女の管理するサーバーが特殊なウイルスに浸食されたみたいでな。彼女の力だけではどうすることもできず、なんとか逃げ出し我々に助けを求めてきたということだ」

「・・・俺にそのサーバーを奪還しろと?」

「ああ、悪いとは思ってる。だが今動けるのはネルクしかいないんだ」


 システムコンソールを呼び出し今暇な者をピックアップしてみるが、皆仕事に出払っているらしく誰とも連絡がつかない。寝ているという場合もあるが、わざわざ起こすのも失礼だ。

 ため息をつき、仕方なく仕事を受ける。


























「先ほども言ったように、彼女は極度の人見知りだ。サーバー奪還作戦にはなるべく少数精鋭で挑んで欲しい。彼女の精神状態が問題だ。まあ、それほど大きなサーバーではないからすぐに終わるだろう」

「・・・はあ、分かった。明日動く」

「いつもすまない。よろしく頼む」


俺は席を立ち、椅子の陰に隠れてこちらを見ている少女に視線を向ける。


「俺の名は、ネルク。お前のサーバーを取り返す仕事を受けた。よろしく頼む」

「は、はい。アルファです。よ、よろしくお願いします・・・・・」


自己紹介をしながらすーっと消えて行った。これから先が思いやられる。



 俺は大きなあくびをしながら家へと戻った。明日は忙しい日になる。早めに寝て、今日までのデータを保存しておく必要がある。

 俺達ブレイカ―は、寝る度にその日の出来事をデータとして保存する。いわゆる人間と同じような事をするわけだ。

 コートを脱いで壁に掛け、ベッドに横になりデータ保存のためのメモリーへとアクセスし、眼を閉じる。


 









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