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クレイ=大地の傀儡=  作者: カッパ永久寺
二日目 再会
16/75

食後

「さぁて……」

 ひもじい朝食を食べ終えた俺たちは一度俺たちが寝ていた竪穴式住居に戻ってきた。

「今から持ち物検査をする!」

「持ち物検査!?」と、絢が驚く。

「そうだ、持ち物検査だ! 何か怪しいものを持っていないかチェックするやつだ!」

「なんでこんな時に持ち物検査するんですか?」

「こんな時だからこそだよ」と俺は胸を張って言った。

「絢、もしも自分が無人島に漂流したら、とか考えたことあるか?」

「チョー最高です!」

「…………」

 チョー最高です……か。

 こいつはどこに遭難しようが漂流しようがタイムスリップしようがたくましく生きていくんだろうなぁと思った……。

「私、無人島生活とか憧れますです。テレビでやってたみたいに魚取ったり火をおこしたり料理したりしてみたいです!」

「無人島の話はもういいから……それより、今のことを考えないと」

「だからなんで今持ち物検査するですか?」

「だから……もし、無人島とかに漂流した時のこととか考えてみろ。まず、自分が持ってるものとか整理したりするだろ?」

「確かに……その時に生活に役立つものとか出てくれば万々歳ですからねぇ」

「だろう? それで、今俺たちは『漂流』している」

「ひょーりゅー?」

「そうだ、『漂流』だ。弥生時代に『漂流』してきたんだよ……。そんな俺たちはここでたくましく生きてかなきゃならない。そこで……俺たちは効率よく生きていくため、持ち物検査をする必要がある!」

「なるほど。確かに私たちはここでは『未来人』ですから持ってるものがここでの生活に役立つかもしれませんねぇ」

 そういうと絢はポケットから懐中電灯を取り出した。

「この懐中電灯……百均で売ってたやつなんですけど、ここ弥生時代で売ったらいくらぐらいになるんでしょうねぇ?」

「なるほど……未来の産物なんて弥生人側にしてみれば目が飛び出るほどすごいものかもしれないからなぁ」

「もしかしたらこの懐中電灯一個でヒメノミコト様の宮殿を買えるかもしれませんねぇ」

「…………」

 さすがにそれは言い過ぎかもしれないが……。でも、電気のでの字もない時代だからもしかしたらいけるかもしれない。

 卑弥呼の宮殿を買収。そして俺たちがヤマタ国の王&女王!

 それは素晴らしい考えだった。

「問題はこの時代に『電池』というものがないってことですね。この電池が尽きたらもう使い物になりませんねぇ」

「そうか……」

 懐中電灯ぐらいなくてもなんとかなると思うが、大事な未来の代物なので大事にしておかなくては。

「絢、懐中電灯の他に何か持ってなかったか? ……そういえば箸墓古墳に行くときお前デッカイ荷物持ってってなかったか?」

「デッカイ荷物……」

 絢は考えてる。長考している。

「そう言えばどっかいっちゃいましたね」

「どっかいっちゃったって……」

「タイムスリップした時……元の時代に置いてきちゃったか……もしくはタイムスリップしてる途中に時間の狭間? みたいなのに落としたとかになっちゃったと思いますです」

「そうなのか……」

 時間の狭間って、大丈夫なんだろうか……。

「まぁ……あのリュックには作業道具しかなかったですから……」

「作業道具って……お前何しようとしてたんだよ……」

 『見るだけ』って言ったじゃねぇか……。

 まぁ、今はそんなことどうでもいいんだが……。

「それじゃあそのリュックはどっかにってしまって……それで絢、ほかに何か持ってないか?」

「えと……」

 絢はがさがさとポケットの中を探った。

「せんとくんにn」

「それはいいって……」俺は絢がその人形を出すのを制した。

「それ以外のもので、他には」

「えと……」

 他のものは大したものじゃなかった。ポケットティッシュ5個、飴玉8個、文庫本3冊、漫画本一冊、新聞の切り抜き数枚、ゆるいキャラクターのキーホルダーが付いた鍵の束、そのほか諸々……それらが絢のポケットの中に入っていた。

 お前のポケットは四次元ポケットか……

「大したもん持ってねぇんだなぁ……」

「そう言う武くんは何か持ってるんですか?」と、絢が訊く。

「えと……」

 あいにく俺が持っていたのは生徒手帳と携帯電話ぐらいだった。

「武くんも大したもの持ってないですねぇ」

「うるせぇ」

 大したもんと言えば……携帯電話ぐらいだろうか。

 しかし当然のことながら、ここでは通信機能なんて使えない。せいぜいオフラインのアプリぐらいしか使えない。

 まぁでも、売れば卑弥呼の宮殿は買えるかなぁ。

 そんなわけで、二人とも大したものを持っていなかったわけだが……

「後私が持ってるのは……」

 と、絢は首にかかったそれを手に持った。

「その勾玉……」

「はいです……」と、絢は首にかかった勾玉のペンダントを見た。

「あの時のだなぁ」

「そうですねぇ……」

 絢は何かをしのぶかのような目で、その勾玉を見据えていた。

 何をしのんでいるのだろうか。

 確か、『お母さんの形見』とか言ってたけど……

 あの時ピカピカと光った勾玉。

 なぜクレイと共鳴したのか。

 この勾玉のこと、後でホノニギさんに訊いてみようかなぁ。

 ホノニギさんもさすがにこの勾玉のことを知らなかったようだが。

「確か私が小学生に上がるころにお母さんから授かったんです。なんでもこの勾玉、お母さんがおばあちゃんから授かったものだったそうで、そのおばあちゃんもおばあちゃんのお母さんから授かったそうで……親子代々受け継がれてきたものみたいなんです」

「ふぅん……」

 親子代々ねぇ……

 どれほど昔の『親』から受け継がれてきた代物なのだろうか。どちらにしてもずっと昔から受け継がれてきたものらしい。そんなものを絢が預かっている。そして……その勾玉の力が、発動された。

 なんだか運命を感じる代物だなぁ。そんな昔から受け継がれていること然り、俺がその勾玉の力(絢の力)に助けられたこと然り。

 本当に不思議だ。

 何もかも不思議だ。

 『巨大土人形』のヤマタクレイと俺と絢と。

 そこに、どんなつながりがあるんだろうか。

 どんな関係が、どんな因縁が、どんな運命が……

 ……案外何の関係もなかったりして。

「とりあえず……今はここで生きていくことを考えないと」

「そーですね。とりあえず一週間、ここで暮らすことになりますですから」

 空を見上げ、東の空の太陽を見た。

 太陽は真っ赤に燃えていた。

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