さん 候爵邸にて宰相と
よろしくお願いします!
「もう王太子妃じゃないから。城から使者を寄越さないで」リリシアーナ。
何度も来る王城からの使者、王妃大臣の使者を門前払いしてくれたフェンディル候爵だったが。
今日は宰相本人が候爵家に平身低頭で「リリシアーナ王太子妃殿下にお目通りを。今日を最後に王城からは使者を寄越しませんから」と頼みこんで来たので通した。
「しかし、王太子妃様、先帝様の宣下はなされております。貴方様はまだ、王太子妃様でらせられます。どうか、臣下一同の願いをお聞き届け下さい。この国を助けてください。王太子妃様」宰相。
「とにかく、私は王太子妃ではありません。新しい王太子妃様にしてもらって下さい」リリシアーナ。
「執務については、、、王太子殿下が、システィーナ様は身重だから仕事はリリシアーナ様にと申されております」宰相。
「は??今の私はただの候爵令嬢ですよ?」リリシアーナ。
「王太子殿下は、リリシアーナ様を側室にするとおおせです。ですので執務はリリシアーナ様にと」宰相。
場の空気が凍った。控えるアンナから殺気が放たれる。
宰相は震えたが耐えた。
「側室、お断りしますとお伝え下さい。自分の仕事は自分達でするよう、側近達に進言させて下さい。では、失礼します。」リリシアーナ。
「どうか、お助け下さい!先日も奴隷制度の復活、人身売買の許可、麻薬密売疑惑有り商会への貿易許可書に、王太子は玉璽を押しそうなったのです!王太子に任せていたらこの国は、、、!」宰相。
「止めたのよね?頑張って。」
「限度があります!奴隷制度の復活、人身売買など、近隣諸国との条約違反です!国交断絶されかねません、戦争を引き起こしかねない!」宰相。
「まあ、そうね。病気療養させて、玉璽を、取り上げなさいな。王家の血縁者から後継を立てたら?」リリシアーナ。
「我らもそう考えております。王太子妃様。こちらをお受け取り下さい。」
宰相が見たことのない蜜蝋が押してある封書をリリシアーナに差し出した。
「これは?」リリシアーナ。
「、、、王弟殿下からでございます。我らも王弟殿下のお考えを支持いたします。」宰相。
「あいまいで何を言いたいかわかりねます。宰相閣下。」しらを切るリリシアーナ。
「一月後、王太子殿下はシスティーナ様とご結婚されます。その後、間を置かず王命を出されます。リリシアーナ様を側室にと。」宰相。
「王命と言えど、お断りします。早速出国の準備をしますわ。お知らせありがとう、宰相閣下。」リリシアーナ。
「お待ちください!リリシアーナ様。私はこの国が大切です。我が国は豊かで美しい国です。そこに生きる王国民も大切です。この国の代表である王室は尊敬される存在であるべきです。国民らが誇れる王室でなければ求心力を失い国は荒れます。王弟殿下は尊敬に値する人物であられます。」宰相。
「そう、、、、でも、少し考える時間を頂戴。そうね、王弟様について教えて。今は辺境伯であられたわね。お会いしたこと無いわ。御歳は30歳ほどだったかしら?」リリシアーナ。
「いえ、23か24歳ほどかと。
亡き陛下の異母弟であられます。先々帝が御譲位されて離宮に移られからお生まれになりました。子爵家の御婦人を側室とされ、お生まれになったのが王弟ハロルド様です。
王太后様と先々帝は政略結婚で、あまり仲がよろしくなくて。先々帝は50歳で25歳の先帝陛下に王位を譲られた後、お一人で離宮へお移りになりました。王太后様は先帝陛下と王城でお暮らしでした。
ハロルド様は離宮でお生まれになり、離宮で育たれました。成人して辺境伯となられました。
、、、いえ、リリシアーナ様には、真実をお伝えします。先々帝は王太后様と不仲、侍女であったハロルド様のご生母様と婚姻するため、御譲位なさいました。王太后様と先帝の政治に口出しせぬ事、産まれた子には王位を継承させない事を条件に。
そのために先々帝はハロルド様が先帝様、亡き陛下の血脈の邪魔にならぬよう計らいました。ハロルド様が10歳を過ぎたあたりで、辺境伯にお預けになりました。ハロルド様は王位継承権を返上し、辺境伯家の養子となられました。先々帝はハロルド様が王都にいてはハロルド様を担ぎ上げる貴族が出ると心配なされたのです。ハロルド様はご聡明であられた。しかし、、、先々帝は今の王妃様の無能、グリオン王太子のご性格をお知りになり、ハロルド様から王位継承権を取り上げた事を後悔なさっておいででした。お亡くなりになる前に万一の時はと、その代の宰相にハロルド様の王位継承権の復権を認める正式な書類を残されました。、、、今回の王太子のなされようは、我ら臣下一同、王国の存続の危機と認知いたしました。どうか、リリシアーナ様。王弟殿下の申し出、お受け下さい。」宰相。
先帝はグリオンの資質を不安に思い、年上の聡明なリリシアーナを婚約者に据えた。リリシアーナあってのグリオンの王太子位だった。
グリオンは初めはリリシアーナを姉のように慕い、懐いていた。しかし大臣閣僚達がリリシアーナを褒め、リリシアーナに政治の相談をし、グリオンにリリシアーナを見倣うよう言い始めた辺りからグリオンはリリシアーナを嫌うようになった。
「もう王室に関わりたくないんです。すごくめんどくさそうです。他の令嬢をあたって下さい」リリシアーナ。王弟の手紙内容が察せられた。
「お助けください。このままでは王国は混乱します。混乱に乗じて北の帝国が国境を越えて来るかと。すでにその動きが見られるのです。早急に、事を納めねばなりません。王弟殿下の妃に相応しく能力もお有りなのはリリシアーナ様しかおられません。リリシアーナ様もこの国が滅ぶのも、王太子の側室になるのもお嫌でしょう?」
「側室になる前に戦争始まりそう?」リリシアーナ。
「直ちに動かねば、帝国は今の好機を逃さないかと。」宰相。
「今、王太子殿下は何をしてるの?」リリシアーナ。
「、、、昨日は産着や玩具を取り寄せてましたね。」宰相。
「システィーナ様は?」
「ドレスのデザイナーを数人呼んで宝石商も呼んで、注文しておられました」宰相。
2人は沈黙した。
「わかったわ」リリシアーナ。
リリシアーナもこの国を愛していた。王国民を守る為にリリシアーナはまた重責を背負う決心をした。
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ハロルドの生誕秘話。
先帝45歳くらいの時、離縁され王宮侍女として働いていたナディア(30歳)と言葉を交わすようになった。
ナディアは子爵令嬢で、結婚して男爵夫人となったが、子が出来なかった。結婚して10年経ち、夫が「愛人に子が出来た。離縁してくれ」と。
実家に居場所はなく王宮に勤めた。次第に王と心を通わすようになった。
ナディアは自分は子を成せないと思っていた。
王は離縁出来ないが、王妃と別居してナディアを側室に望んだ。話し合いの結果、譲位してナディアと離宮へ移った。
ナディアは王と結婚して直ぐにハロルドを妊娠。王50歳、ナディア35歳でした。
王妃は王を愛していなかったので、王に怒りはしなかった。
息子(先帝)の出来も良かったので、王が引いた形です。
先々帝とナディアは仲睦まじく、ハロルドも愛されて10歳を頃まで両親と暮らしていました。先帝の息子グリオンが5歳になり、建康に育ちそうなので、ハロルドは辺境伯家へ養子に出されました。
先々帝が65歳で亡くなった後、辺境伯家へ養子に出されたハロルドがナディアを呼び寄せます。この話の時には、ナディアは辺境伯家で平穏に暮らしていました。




