85. 流れ星を探そう 2 ー玲に感じたなつかしさー
日本に残っている薫の兄・郁視点のパート2です。
そう。おかしいと思ってたんだ、実際。
薫は僕の一つ下の妹だ。正確に言うと、僕は六月十七日生まれで、薫は翌年の五月二五日に、予定より少し早く生まれたらしい。双子ではないけれど、とても近い距離にいた妹。ずっと仲良く、ほとんど喧嘩したりもしないで育って来た。
その薫が、高校入学と同時に、もう本当に入学式当日から、同じクラスの男子とつきあい始めた。
入学式翌日の朝、僕と一緒に家を出たけれど途中で自転車を降りて、ここに住んでる子と一緒に行くとか言うから、どんなやつかと思って、僕はその日だけ玲を待った。
「もう~どうしているの、郁! 先に行ってよ!」
薫がふくれっつらになって、僕に文句を言う。
「え、どんな人か知らないけど、兄としては挨拶しなきゃいけないだろ?」
そんな会話を交わしていたら、四階建ての古いマンションの階段を軽快に降りてくる足音がして、制服のブレザーにネクタイ姿の、神崎玲が現れた。
一目見て、……なんだろう、デジャヴって言うんだろうか。
なんで僕はこの男を、こんなになつかしいと思うんだろう?
思わず僕は沈黙して玲を見つめた。
薫の横に知らない男がいたことに驚いた玲は一瞬止まって、かすかに僕に会釈した。
「あっ、あの、ごめんね、この人、私のお兄ちゃんの郁。同じ高校の二年生なんだけど、挨拶するって言って、今一緒に」
慌てて薫が説明してた。玲はそれを聞いて、ふふ、と男の僕から見ても艶やかに微笑んで……びっくりするような良い声で、自己紹介をした。
「神崎、玲といいます。昨日から、薫さんと一緒に通学しようかと話をして……お兄さんも、一緒に行きますか?」
その堂々とした感じも、音楽が流れ込んでくるみたいな良い声も、なんだか文句のつけようがなく、僕は憮然として言った。
「いや、別に行くからいい。……薫をよろしくな」
そう言うと、玲は少し微笑んで。
「はい」
と真っ直ぐに頷いた。
それは、僕の心の奥に直感として降りてきた気持ちだった。
(連れて行かれちゃう。)
それがなんだったのか、その時の僕はまったくわかっていなかったんだ。




