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TS錬金術師の受難 〜神の悪戯で絶世の美少女に〜  作者: 天秤座
第1章:TS錬金術師と苦難の始まり
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第16話:現在の実力は?


 秘密を打ち明けて貰い、二人に対して少しは心を開いてもいいのではと思う。


 ……四十二歳まで一緒にいる男女が仲の良い幼馴染程度でいることは疑問だが、嘘はないのだろう。


 気づくと私のことをエリンが見つめていて、ふと表情を和らげる。


「……やっぱりあなたの“秘密”はまだ話せないのよね?」


 蒼碧の瞳に真正面から射抜かれて、息が詰まる。


 胸の奥がじくじくと痛む。だが、私は俯いて小さく答えた。


「……すいません。今は……心の準備ができていなくて。いつか……きっと」


 自分でも頼りない返答だと思った。けれど、嘘を重ねるよりは正直でいたかった。


 短い沈黙が落ちる。


 知らぬ間に私の横にいたヴァルターが前を向きながら言う。


「……無理をする必要はない。ゆっくり考えればいい」


 その言葉に思わず顔を上げると、彼の眼差しは真剣で、どこか柔らかかった。


 私は小さく息を呑み、胸の奥に温かさと罪悪感が同時に広がるのを感じた。


 話をしながら村へ戻っていると、空の色はすでに茜に染まりつつあった。西の森に沈みかけた陽が、長い影を地面に落としている。


「……もう夕暮れか」


 ヴァルターが小さく呟き、足を止めた。


「日が落ちれば、森からウルフが活動を始める時間ね」


 エリンが辺りを見回し、真剣な眼差しに変わる。


 確かに、昼間は人気の少ない道も、夜になると魔物の通り道になる。村に帰るまでの距離を考えると、油断はできなかった。


「静流、戦えるか?」


 ヴァルターがこちらを振り返る。


「はい。もちろん」


 私は軽く頷く。

 今さらウルフで恐怖は感じない。


「危なかったらサポートするから安心してね」


 エリンさんは聖職者なので、もし誰かが怪我をしても大丈夫だ。魔物に対してここまで優位な状況は初めてなので油断しないように気をつけよう。


 その時、低く唸るような声が風を裂く。

 木々の影から現れたのは、漆黒の毛並みを逆立てた三体のウルフだった。黄色い眼光が夕闇に光る。


「来たわね……」


 エリンが杖を構える。

 ヴァルターは剣を肩に担ぎ直し、わずかに口元を歪めた。


「ちょうどいい。……一人一匹ずつ、やってみるか」


「ええ、賛成」


 エリンの声にも余裕があった。

 ゴールドランク冒険者の目安がウルフの群れの単独討伐なので、ミスリルランクの二人なら当然楽勝だろう。


 しかし、私の実力もゴールドランクはある筈なので二人に判断してもらおう。

 ここまでの道中で、冒険者ランクはアイアンだと伝えている。きっと驚いてくれるだろうな。


 私も剣を握って二人と肩を並べた。


 ウルフたちは低く唸りながら散開し、それぞれ私たちに狙いを定める。


「……行きます!」


 宣言し、地を蹴った。

 一番最初に一匹のウルフに接敵する。


 あの夜、群れに囲まれて四方八方から襲われた時は脅威であった。しかし、脅威の理由はその連携と速度が噛み合ったときの対処の難しさである。行動パターンさえ見切れば対処は容易い。


 旋回しているウルフの進行方向を読み、横薙ぎに剣を振るうと、その首をあっさりと斬り飛ばすことに成功した。一定の力を得た今、ウルフはもはや脅威ではない。


 ヴァルターとエリンをみると、やはりスキルを使うまでもなく、大剣の薙ぎ払いと杖による頭部への打撃でそれぞれ仕留めていた。


「動きが意外と速いな、静流」


「ちょっとびっくりしちゃったわね。でも速いというより、無駄がないのかしら?」


 少しは驚いてくれたかな。


「どうでしたか?意外と戦闘力には自信があるんです。夜間にルブランからコルンへ移動しのですが、ウルフの群れを相手に生還しました」

 

 あの夜は過酷だった……。時間が経つほど増えるウルフたちの連携と物量のごり押しだけでなく、上位種のシャドウウルフ二匹が奇襲を仕掛けてきた。


 その時に大きな負傷をしたが、その二匹を殺した後に少しずつ群れが撤退していった結果、命拾いすることになった。


 「静流は技術タイプだな。実力的にはシルバーといったところか」


「そうね……スキルは別として、さっきの戦闘だけならシルバーランクね」


「……思ってたより、私は弱いんですね」


 何か恥ずかしい……。ゴールドランクには届いていないのか。


 ――いや、錬成術師(アルケミスト)()最終黒衣(ラストウェポン)を十全に使えば実際の戦闘力はもっと強いので、実際にはゴールドランクの強さはある筈……。


 「すいません。あの……ウルフの群れ討伐でゴールドランクではないんですか?」


 二人は顔を見合わせてから、同時に手を打った。「ああ」と納得した様子をみせる。


 「まだこっちの大陸は、旧基準のままみたいだな」


「あの目安が大雑把過ぎたから、あっちでは結構前にクレームが酷かったわよね」


 ヴァルターは納得したように答え、エリンは少し遠い目をして何か思い出しているだ。


「えっと?もしかして目安が変わったんですか?」


「そうだな。あれは目安だからといって大雑把すぎた」


「確か目安は、単独での討伐数で決まってましたよね。ブロンズはゴブリン2体、アイアンはウルフを2体、シルバーはオークを2体で、ゴールドはウルフやオーク等の群れを討伐可能でした」


 簡単な目安だったので覚えている。これによればゴールドランクくらいはありそうなんだけど。


「みんなが知ってる弱い魔物を基準にして、群れに含まれている上位種については全く書かれていないでしょ?」

 

 「……言われてみればそうですね」


 目安なので参考程度と思っていたけど、もしかして、群れというのは上位種を含めてということなのか……。


「ゴブリンならゴブリンキャプテンが率いる群れでシルバーランクといったところだ。ウルフの群れは最上位にブレインウルフがいる。そいつを含めて全滅させるとゴールドランクになる」


「結構群れに含まれる上位種の違いでランクも変わっちゃうから、あくまで目安は参考程度に考えておいたほうがいいわ」


「そうだったんですね……知りませんでした……」


 少し落ち込んでしまう……。

 なるほど、私はブレインウルフから見逃されていたのか。群れの規模が実際はもっと大きくて、戦力の浪費を嫌った可能性が高いな……。


「……そう落ち込むな。静流は十分に強い」


「そうよね。スキル頼みのぼんくらが沢山いる中、静流の技量はかなり高いから心配いらないわよ?」


「……ありがとうございます。足手まといにならないように頑張りますね」


 ――まだルブランを出て数日しか経っていない。そこまで急ぐ必要もないか……。ヴァルターとエリンという仲間にも出会えた。これからもっと強くなればいい。


 

静流が思っているよりも魔物は強いです。

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