#72 感想会
~おとめtheルル~
20代くらいの青年。
イラスト、アニメ、ゲームが趣味。
文章は丁寧に書き込むけど遠回りな表現は苦手。
小説の腕はアマチュアなので、優しく見守ってね。
#72 感想会
人気俳優、土浦晋の友達でお笑い芸人の宇連泰三。
人気が伸びない彼を応援するため
土浦晋は従弟である山村にも協力してもらうよう声をかける。
そうして山村や晋兄に縁のある僕たちはさっそく彼の公演を見に行ったのだが、その公演にはほぼ僕たちしかおらず、予想通りのクオリティだった....
この様子に申し訳なくなった晋兄が、感想会という名目で
ファミレスの一角を貸し切りにして招待してくれたのである...。
後から来た音月由珠羽と宇連泰三が
僕たちの席に案内される。
「ああ...え、えーっと、
この度は僕のためにお集まりいただいてほんまありがとうございます。」
宇連泰三が挨拶する。
「公演会お疲れ様。今日はみんな僕の奢りだから
好きなだけ食べていってね。」
「まさか、本当に人気俳優が目の前にいて、そんな彼に食事を奢ってもらう...?
どういうことですか、理解が追いつきません...。」
美里愛は晋兄を見たまま呟いている。
「そんじゃ、ミックスピザと、鶏の唐揚げ、それから...」
「私も私も!えーっと、チーズハンバーグ定食とー...」
美歩と優衣奈はまったくもって躊躇していなかった。
「あ、あのー...。人数多すぎ、じゃないですかね...?
ここはいくつかのグループに分けたほうが...」
このはの提案で、それぞれグループに分かれることになった。
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「いっただっきまーす!」
食べるのがメインの、食べる組の姉と美歩と優衣奈の3人。
「君たち...本当に遠慮なく食べるね...」
あまりお喋りが得意ではない、大人し組の琉夷さん、幸佳は3人と同じ席に、
同じく大人し組の、岩田くんや水野さん、このはや誠に池戸、
そして美里愛と優斗さんたちは向こう側の広い席へ。
「それじゃ、さっそく感想を聞かせていただこうか...。」
そしてこの席に残ったのは
山村と僕、晋兄と由珠羽、メインの宇連泰三の5人だけ。
なんでだよ!!これって感想会なんじゃなかったのかよ、この裏切り者ーっ!!
...ガチガチに緊張する僕と、それを優しく撫でてくれる山村。
「仕方ないよ、友...」
するとさっそく宇連泰三が話しかける。
「あ...今日の公演どうでやした?やっぱりアカンかったかなあ...」
いきなり自信のない発言が飛び出す。
「いやあ、なんて言うか...」
山村も言葉を考えている様子だった。
「どうしてよ?私はその公演を見ていないからこんなこと
言えた立場じゃないんだけど...
最初から諦めているようならその公演はもうダメね。」
由珠羽からの大きな一撃。
さすがに泰三もショックを受けた様子。
「...いや、ごめんなさい...けれど私は思うのよ。
演者というのはやっぱり自分がいちばん楽しんでいなきゃ。」
戸惑う泰三に続ける由珠羽。
「私もonetuberとして活動しているからわかるの。
応援したいって思う人たちが望んでいるのは、
演者たちの全力で楽しんでいる姿だと思うの...!」
話はさらに続く。
「だから今のあなたみたいに自分で自分の公演を否定するっていうことは、
今の演技を全力で楽しめていないってこと...だから...!」
「なあその辺にしておいてやりなよ...」
話し続ける由珠羽に晋兄が止めに入る。
「って本当ごめんね...!感想会なのに公演見てない私がいろいろ
偉そうなこと言って...それで山村くん、どんな内容だったの?!」
「あ...えーっと、、、」
「そ、そうですね、最初はー...」
公演中眠っていてあまり覚えていない山村の代わりに
僕が内容を教えてあげた。
[友...本当にありがとう...!]
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「ええっ?!そこはもっとこうツッコミが必要でしょー!」
由珠羽が熱心に話を聞いている。
するとそこに姉が割り込んできた。
「ふあぁっ、食べた食べた...ってまだ話してるじゃん!」
有名人たちの前だというのに自由だなぁ、おいっ...。
「...食べてるだけの姉ちゃんに言われたくないわっ!」
この空気感に慣れてしまっていた僕は
みんなの前でそうツッコんでしまう。
「おお...今のツッコみ、悪くなかったよ...」
「そうね、自然な感じでツッコんでた...」
由珠羽と晋兄が僕をおだてる。
やめろやめろっ!つい癖でツッコんでしまっただけだ...!!
「自然な、ツッコミ...
そうか。自分には、自分が全力で楽しいと思えるツッコミ(ネタ)が
足りてへんかったんやな...」
泰三は自分の愚かさに泣きそうになってしまう。
「なんで....なんでや...!
ツッコミを全力で楽しめない自分、関西人失格やな...」
するとこんな落ち込む泰三に向かって姉が言うのであった。
「関西人は、ツッコミだけで終わりじゃない!!」
...は?これツッコんでいいところ?
「私がツッコんであげるから、あなたは全力でボケてみなさい!!」
酔ってる?姉ちゃん...
大丈夫これ...?
「そ、そんな...急に言われ申しても...」
「なーんでこんな立場逆転してんの?!
あんた、それでも関西のお笑い芸人かっ!!」
鋭い一言に、泰三が立ち上がる。
「せやな...自分は関西のお笑い芸人や...!
こんなところで負けてられへん...!!」
立ち上がった泰三は姉に向かってこう続ける。
「思い出さしてくれてありがとう、宿屋のお嬢ちゃん!」
「いや、ここは宿屋じゃなーーい!!」
姉とのやり取りにみんなから笑いがこぼれる。
そして流れに乗じて姉に頭を下げる泰三。
「...お願いしゃす!自分を...弟子にしてください!!」
「うむ!いいだろう!」
こうしてなぜか関西のお笑い芸人が姉に弟子入りすることになってしまった...
めちゃくちゃだよ、もーう...!!
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翌朝。
彼、泰三さんが東京にいられるのは今日も含めて残り5日。
その間にもうあと2公演あるらしいのだが、その公演がはじまる前、
我々の家の近くの公園に来るよう指示していた。公演だけに....?
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「師匠!本日からよろしくお願いしゃす!」
何はともあれ、さっそく頭を下げて姉に挨拶する泰三さん。
「うむ!それじゃあ、さっそく...」
師匠として姉は何をするというのだろう...
すると泰三さんが右手を高くあげて言う。
「その前にひとつお聞きしたいことがあるんでやすが...」
「何でも聞きなさい?」
どんと構える姉。
「し、師匠の出身はどこでやすか...?」
「鹿児島だよ?」
...あ...
泰三さんはポカンとした表情で姉を見つめる。
「か、か、か、関西とちゃうんですかーー?!」
ものすごい慌てたかと思うとまた落ち込んでしまう。
「そんな...なんで本場関西の人が鹿児島の人間に教わらなアカンねん...」
落ち込む泰三さんに僕は声をかけてあげる。
「あのな、泰三さん...姉の関西人慣れを...なめたら、アカンで...」
「いやいやいや、2人ともホンマは関西人やろーーっ!?」
僕のアドバイス(のつもりだったの)にうまくツッコんでくれた泰三さん。
普段はこれくらい勢いのあるツッコみができるんじゃないか。
いつしか僕は、
姉と一緒に泰三さんのことを見守りたいと、そう思うのであった...。
続く...
はじめまして、おとめtheルルです。
クスッと笑える作品を作りたくて文章を書きはじめました。
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