鋼太郎の結婚編
ある日、またもや吉報
坂上武、75歳。
鉄郎、鉄塊歴37年。
鋼太郎、鉄塊歴20年。
武が昼寝していると、現場監督が家に飛び込んできた。
「坂上さーん!! おめでとうございます!!」
「……何がだ?」
「鋼太郎くん、結婚するそうです!!!」
お相手は――
お相手は、最近導入された最新型ダンプカーのダンプ美ちゃん。
大容量の荷台、エコ設計、最新鋼板ボディ。
現場では鋼太郎の隣で活躍するうちに、みんなが自然と言った。
「お似合いだよな、あの二人(?)」
こうして、職場公認のカップル誕生。
プロポーズ(?)
ある日、現場にお祝いのクラッカーが鳴った。
鋼太郎の隣に、ダンプ美ちゃんがそっと寄り添って止まる。
作業員:「鋼太郎さん……ついに決めたんすね……!」
もちろん無言のプロポーズ。
しかし、二台の金属のきらめきは誰よりも幸せそうだった。
結婚式
式場:坂上家の庭+特設鉄製チャペル。
司会進行はおなじみ現場監督。
親族席には父・鉄郎と母・アイアン子が並ぶ。
武は涙を止められない。
「孫が……孫が……結婚するなんて……
おじいちゃんは……もう思い残すことは……!」
誓いの言葉
監督が問う。
「坂上鋼太郎! あなたはダンプ美さんを、一生大切に……鉄として愛し続けますか?」
鋼太郎は無言。
しかし、太陽を受けて一層ピカピカに光った。
それが何よりの返事だった。
ダンプ美ちゃんも荷台をちょっと上下させて返事。
披露宴
会社の先輩たちがこぞってスピーチ。
「鋼太郎さんは……黙ってますけど……俺たちの心の支えでした……!」
「ダンプ美ちゃん、末永くお幸せに……荷台は大切に……!」
子どもたちは鋼太郎の横腹に寄りかかって寝ていた。
新婚生活
鋼太郎とダンプ美は、現場で並んで働き、夜は坂上家の車庫に寄り添って眠る。
武はこっそり覗いてつぶやいた。
「お前たち……いい夫婦だな……。
鉄だって、家族を作れるんだ……!」
鉄郎とアイアン子も、誇らしげに見守っていた。
そして――
満月の夜。
武は家の縁側で、並んだ鉄四世代(鉄郎・アイアン子・鋼太郎・ダンプ美)を見ながらビールをあおる。
「お前ら……鉄だって、こんなに幸せになれるんだ……。
父さんも、じいちゃんも、もう思い残すことはない……!」
鉄たちは無言だが、どこまでも温かく光っていた。




