春 ― 鋼太郎、ついに高校生!
坂上武、71歳。
鉄郎、鉄塊歴33年。
鋼太郎、鉄塊歴15年。
坂上家の庭に集まる三世代の鉄と一人の老人。
武は新品のブレザーを広げながら、目尻をぬぐった。
「鋼太郎……お前がついに高校生……!
父さん(鉄郎)も誇らしいだろうな……!」
鋼太郎は無言。
だが、春の光を反射して誇らしげに見えた。
入学式
坂上家伝統(?)の入学式。
鋼太郎は新品のブレザーを無理やり被せられ、
台車に乗って体育館へ。
先生は壇上で紹介する。
「坂上鋼太郎くんは、坂上鉄郎くんの息子です。
無遅刻無欠席、無言無反抗の模範生を目指しましょう!」
全校生徒から拍手喝采。
部活動勧誘戦争・再び
体育館で各部活が勧誘合戦。
「鋼太郎! サッカーゴールポストの後継者に!」
「いや、軽音部で共鳴楽器に!」
「生徒会室のドアストッパーに!」
最終的に――
全クラブ共用備品兼、校内安全シンボルとして落ち着く。
学園生活の花形
文化祭の日。
1年2組はお化け屋敷を企画。
鋼太郎は通路のど真ん中に鎮座し、
暗闇の中で青いスポットライトを浴びて輝く役。
客が絶叫する。
「なにこれ!怖い!動かないのに怖い!!」
クラスは大盛況。
青春の一ページ(?)
春の遠足。
鋼太郎は広場の芝生に置かれ、クラスメイトに囲まれる。
「鋼太郎くん、恋してる子いるのかな〜?」
「鋼太郎くん、将来どんな鉄になりたいの?」
鋼太郎は無言。
でも夕陽を反射して、どこか赤らんでいるように見えた。
修学旅行 ― 鉄伝説ふたたび
2年生、恒例の京都・奈良。
大型バスのトランクでゆったり運ばれ、
クラスの笑顔の真ん中に鋼太郎。
鹿に舐められるのもやっぱりお約束。
武は遠足の写真を見て泣いた。
「鋼太郎……父さんと同じ場所に……親子二代の思い出だ……!」
卒業式
春、三年間の学び舎の締めくくり。
武は花束を握りしめ、体育館に立つ。
中央に誇らしく鎮座する鋼太郎。
肩には真新しい卒業証書ホルダー。
校長先生が涙ながらに読み上げる。
「坂上鋼太郎くん……君は坂上家の鉄の誇りです……!」
拍手が止まらなかった。
家族の絆
卒業式の夜。
縁側には、三世代の鉄。
武はビール片手に、鋼太郎を撫でながらつぶやく。
「高校も、立派に卒業したな……。
次は……社会人か……。
坂上家の鉄の系譜は、止まらんぞ……!」
月光に照らされる鋼太郎の輝きが、
坂上家の未来を物語っていた。