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13.あなたに伝えたいことは-04

月読様に会えた安心感からか、はたまた夜がしっかりと戻って来たおかげか、朝までぐっすりと眠ることができた。満月も夜泣きすることなく、ふええと声を上げたのはすっかり朝になってからだった。


「月読様も無事目を覚ましたし、ボクは出雲に帰る」


うさぎがどこから持ってきたのか、大根をもしゃもしゃ食べ散らかしながら挨拶に来てくれた。


「あなたにもたくさんお世話になって……。本当にありがとう。どうお礼をしていいのか……」


「お礼ならお主の食べている朝餉(あさげ)でもいただこうか」


「そんなものでいいの?」


「じゃあ昼餉(ひるげ)も……ぎゃっ!」


急にうさぎが悲鳴をあげたと思ったら、月読様に首元を掴まれて抱えられていた。ちゃんと抱えてあげるのが、月読様の優しいところだと思う。


「喜与の食事を取るでない。お主には私から礼を渡そうぞ。大国主(おおくにぬし)少名彦(すくなひこ)にも改めて礼を伝えてくれ」


「承知しました。ああ、そうだ」


うさぎは月読様の腕からぴょんっと飛び降りる。かたわらで寝ている満月の頭を、ふわふわの前足でぽんぽんと撫でた。


「喜与は伴藤家と縁が切れ、斉賀家と縁深くなるであろう」


「え……?」


「よく当たると評判なボクの予言だ。まあ、実際のところ、すでに伴藤家は離縁状を出しておったぞ。確認済みだ」


「うそ……」


「斉賀家もおおよその事情はわかっているだろうな。それほど遠くない、近所のことだからな」


また私は夢を見ているのだろうか。まさか伴藤家と縁が切れるだなんて、思っても見なかった。私は一生、伴藤から逃げなければいけないと覚悟していたのに。


「ううっ……ううっ……うええっ……」


「よかったな」


月読様とうさぎが優しく頭を撫でてくれる。

こんな奇跡のようなことが起こるだなんて。


「喜与さん、そろそろ――。って、えっ? どうしたの?」


様子を見に来た奥様が、大泣きしている私を見て慌てふためく。


「やだっ、どこか痛い? 変なもの食べた?」


そう言いながら私に触れようとしてくれた手が、直前で止まる。


「……うちの神様は温かいね」


私の左右にいる月読様とうさぎの気配を感じとってくれたのだろうか。奥様は眉を下げて微笑んだ。その言葉が私の体に浸透していく。胸がきゅっと詰まる。


「はい……、とっても!」


頷くと、月読様もうさぎも、一緒に微笑んでくれた。

嬉しすぎて、またひとつ涙の雫がこぼれ落ちた。


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