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虐げられた花嫁は神様と泡沫の愛を誓う  作者: あさの紅茶


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12.神様の気配-02

「外が夕方のように明るいだろう? だが今は本当は深夜だ」


「え、なぜですか?」


「月読様の力が弱まってしまったからだ」


「どうして……?」


「そんなの、お主を助けるために決まっている。体に痛いところはないか?」


「……ないです」


「お主の痛みはすべて月読様が代わりに受けられたのだ。それで力を使い果たしたのであろうな」


「そんなっ……。月読様……」


熱湯をかけられて着の身着のまま裸足で飛び出してきた。名月神社に着くころには体中が痛くてたまらなかったというのに、その痛みを月読様が代わりに受けただなんて。


「どうしたらいいのですか? 月読様は目を開けてくれますか?」


「今しばらくかかるやもしれぬ。月読様が目を覚ましたときにお主が元気でいてくれないと困る。だからお主も回復に努めるのだ。月読様は喜与、喜与と恥ずかしいくらいに名を呼んでおったからな」


「月読様……」


私の膝に頭を預けて、静かに目を閉じている。とても綺麗なお顔。そっと月読様の頬に触れる。


「……っ、月読様……月読様……ううっ……」


触れられる幸せ。

申し訳ない気持ち。

感情がごちゃ混ぜになって、胸を締めつける。

涙が止まらない。


静かに襖が開いた。知らない女性と目が合う。その女性は目を丸くして叫んだ。


「目を覚ましたのね! ちょっと待って!」


とたんに家の中が騒がしくなる。私の布団のまわりには、斉賀家の人が取り囲むように座った。お祖父様、お祖母様、旦那様、奥様。そして奥様の腕の中には小さな赤子。


「あの……」


「まさか起き上がれるだなんて思わなかったら、びっくりしちゃって。ほら、あなたの子よ。抱けるかしら?」


奥様が抱いている赤子を私の腕に乗せてくれる。小さくてふにゃふにゃしている。ちゃんと、生きている。私の子。守れた。守れた……!


「……ううっ……ううっ……」


「うんうん、よかったわねぇ」


「……すみま……せん」


「何も気にしなくていいから、このまましっかり回復しなさい」


「でも……わたし……」


「何も言わんでいい。落ち着いたら話しておくれ」


「これも何かのお導きじゃろうて」


皆が口々に言った。温かな言葉にまた涙が溢れた。



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