7.命にかえても-03
夜中に陣痛が始まり、産まれたのは昼間だった。そこから少し眠り、今はもう夜が来ている。出産という大仕事を終えた私は、隣で眠る子を眺めていた。よく見ると、目元は月読様に似ている気がする。
「ふふっ、可愛い」
大激怒したお義母様と旦那様は、産婆さんに叱られてから一度もこちらに顔を出すことはない。男子を産めなかったことは申し訳ないけれど、こればかりは仕方がない。女の子でも可愛いのだから、何がそんなに文句があるのだろう。
けれど、この先のことを思うと少し心が重くなる。子を産むことで伴藤家で必要とされると思っていたけれど、生まれたのが女なのだから必要とされないのだろう。私は何を言われてもいいけれど、この子にだけはそんな思いをさせたくない。苦労させたくない。
「母が必ず守りますからね」
子を産んだことで、私も心が強くなったのかもしれない。守るべきものがあるというのは、生きる力になる。
今晩は月明かりが綺麗な夜だった。そういえばそろそろ十五夜だろうか。
「月読様、喜与は子を産みましたよ」
届くはずのない空に向かって、私は小さく呟いた。
すやすやと眠る子の手をそっと握る。小さくて柔らかい。そうだ、この子の名前は何にしようか。きっと私に決める権利はないのだろうけど。
ふにゃっと泣く子に乳をやる。私も子もお互いがまだおぼつかない。私の母乳だけで大丈夫だろうか。牛乳か、練乳をもらうことはできるだろうか。そんなことを思いながら、いつの間にかまた子と共に眠りについていた。