6.それが別れになるなどと-02
「体調に変わりはないか?」
「はい、大丈夫です。初期のような悪阻も貧血も、嘘のようになくなりました。月読様が何かしてくださったのですか? お腹を触ってもらってから調子がいいような……」
「喜与を苦しませないでくれと願っただけだ」
「神様っぽい……」
「神だからな」
「ふふっ、そうでした」
笑い合う時間がとても尊い。毎回思う。このまま夜が明けなければいいのに、と。月読様と星を眺め、草花を愛でる。なんて贅沢な時間だろうか。
「そろそろ帰らねば、体に差し支えるぞ」
「はい。わかっております。ただ、名残惜しいのです。次はいつ来れるかわからないので」
「無理をせずとも良い」
「本当は無理をしてでも来たいです」
「喜与」
月読様はそっと私を引き寄せて抱きしめた。ふわりと香る白檀の匂い。月読様の胸の中は心地いい。
「いつもお主にばかり苦労をかけてすまぬ」
「苦労だなんて思っておりません。それに、月読様は神社の守があるのですよね」
「それはそうだが……。神は特定の誰かに干渉してはならぬ」
「もう干渉していますよね」
「……」
「すみません。意地悪を申しました。とても感謝しております。ここで会えるだけで私は嬉しい。辛いことや苦しいことがあっても、頑張れるのです」
月読様は黙って頭を撫でてくれた。
月読様は多くは語ってくれない。けれど、私のことを大切にしてくれていることはわかる。言葉や行動ひとつひとつが、どれも柔らかくて優しい。
「月読様……」
「なんだ?」
「私は罰が当たるでしょうか?」
「なぜ?」
私は言い淀む。
本当は考えないようにしていたけれど、どうしても考えてしまう。私と月読様の関係のことを。