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5.それが約束だから-05

温かいぬくもりに安心する香り――


気づけば私は月読様の膝の上で抱えられていた。


「月読様……」


「大丈夫か?」


「月読様――!」


その胸にすがりつく。

月読様は黙って私を抱きしめてくれた。


「……喜与、私に何か用があったか?」


「はい。月読様との子を身ごもりました」


「……そうか。それでお主の願いは成就したのであろう。伴藤家の嫁に戻ったのではなかったか?」


「はい。約束通り、伴藤家の嫁としての務めを果たしております」


「よかったな」


月読様は儚く微笑んで、抱きしめる手を緩めた。それがどこか他人行儀で寂しくて、そして悲しい。


「……月読様は嬉しくないですか? 私と月読様の子が、ここにいるのですよ」


「そうは言っても、お主はそれを伴藤家の子として育てるのだから、そこに私の感情はいらぬだろう。腹の子は伴藤の子だよ」


「そうです。わかっています。それでも、私はあなたの言葉がほしい」


「喜与はわがままな娘だ」


「月読様にしかわがままは言いません」


「一生のお願いは聞いたはずだが」


「……知りません」


「言っていることが無茶苦茶だ」


「そうですよ。私は伴藤家の嫁に戻ることを条件に、一生のお願いを聞いてもらいました。子を身ごもったときは嬉しくて嬉しくて……。悪阻も貧血もひどくて、それでも月読様との子が無事に生まれてくることを願って、耐えてきました。月読様の愛の証がここにあるから、頑張れるって思って。だけど私は……月読様に会いたくて……会いたくて……。そう思ってしまったら、どうしようもなくて。ずっと我慢していた感情が止められない……。もっとぎゅっと抱きしめてください」


顔を涙でぐちゃぐちゃにしながら、私は好き勝手なことを訴えていた。

月読様は迷惑だったかもしれない。面倒くさい女だと思ったかもしれない。それでも、私は自分の感情が抑えきれなかった。

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