表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/93

5.それが約束だから-02

子を身ごもってからというもの、お義母様も旦那様も私に優しくなった。子を産むことを求められていたから、当然なのかもしれない。よくやった、よくやったと喜び、生まれてくることを楽しみにしている様だ。これで私も伴藤家に必要とされる。


悪阻と貧血がひどく、布団から起き上がれないこともあったけれど、家事を強要されることはなかった。


ただ、口を開けば「男子を産め」とそればかり言われて、その重圧に押しつぶされそうになることもしばしばあった。


三ヶ月ほど経つと、悪阻が少し治まった。寒かった冬を越し、そろそろ春の兆しが見え始める頃。布団から出られることも多くなり、家事も再開した。


「喜与さん、順調かしら?」


「はい、ようやく悪阻も減ってきて、動けるようになりました。ご迷惑をおかけして申し訳ございません」


「いいのよ。あなたはうちの後継ぎを産まなくてはいけないのだから。体を大切にしてちょうだい」


お義母様のこの変わりように、また一段と重圧がのしかかる。男子を産めば、私は今以上に伴藤家で大切にされるだろう。身ごもってから、旦那様に暴力を振るわれなくなった。旦那様も、子が生まれるのをまだかまだかと待ちわびている。


庭に植えられている梅の木にちらほらと花が咲いているのを見て、ふと名月神社が思い出された。月読様と一緒に植えた草花たちは、無事に冬を越せただろうか。気になるけれど、見に行くのも憚られる。


なぜなら私は月読様と約束をしたからだ。


『これ以上のわがままは申しません。一度だけでいいので私を抱いてください。その後はちゃんと伴藤家の嫁に戻ります。私は月読様に愛されているという証がほしいのです』


伴藤家の嫁に戻ることを条件に、月読様から愛の証をいただいた。それはもう、月読様とは会わないという意味が含まれている。


お腹の中には月読様との子。それだけで私はじゅうぶんだ。大切に育てなくてはいけない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ