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5.それが約束だから-01

突然の吐き気と目眩に襲われて、土間で倒れた。

気付いたときには布団に寝かされており、知らない人が視界にいた。それがお医者様だとわかったのは、お義母様がその人を「先生」と呼んでいたからだ。


「ああ、喜与さん。目が覚めたのね」


「……はい。すみません、私……」


「いいの。寝ていてちょうだい」


「え……?」


「あなた、身籠ったそうよ」


「えっ!」


まさか……。

本当に……?


お義母様が見たこともないような顔で微笑んでいるので、どうやら本当らしい。確かにここ最近体調は優れなかった。少し熱っぽくもあったし、食欲も落ちていた。ただ、寝込むほどではなかったから、だましだまし家事をしていたのだけど。


「栄養つけて、元気な男の子を産むのよ」


「はい、ありがとうございます」


上機嫌なお義母様はお医者様と共に部屋を出ていく。その後を追うように旦那様も立ち上がったけれど、一度くるりとこちらを振り返る。


「喜与、よくやった。男子を産めよ」


「……はい」


しんとする部屋。私は両手を下腹にあてる。まだぺちゃんこの腹。ここに、子がいるのだ。


きっと月読様の子。

確証はない。


だけど、そうとしか思えなかった。

私が望んだ愛の証が、ついに芽生えた。

嬉しくて嬉しくて、涙が溢れる。


「月読様……」


あの日以来、ずっと会っていない。もう会わないと決めたのだ。恋しい日もあったけれど、私の体調がすぐれず、それが足枷となってくれて家にとどまっていた。この先も、また行くことはないだろう。でも、それでいいのかもしれない。だって私は、一生のお願いを叶えてもらったのだから。


「どうか、無事に生まれてきますように」


名月神社に想いを馳せながら、ひたすら祈った。

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