1.神様との出会い-02
旦那様とは部屋が別だ。私は旦那様の妻なのに、まるで伴藤家の使用人のような扱いを受けている。けれど、旦那様の気分次第で寝所に呼ばれ、その時だけは妻のお役目とばかりに必要とされる。
必要とされているだけ、ましだろうか?
コトが終われば私は用済み。あとは無事に男子を身籠ることができたならいいのだけど。
そんな生活を、もう一年続けている。旦那様との行為は、子どもをこさえるだけの作業。元々この結婚に私の意思はなかったし、旦那様もお義母様に言われるがまま。お義父様はお義母様の尻に敷かれ、実質伴藤家はお義母様が牛耳っているのだ。
そして、私は一向に子を身ごもる気配がない。そのことについて、お義母様も旦那様も目に見えて苛立っているのが分かる。
「はぁ……」
体の気怠さを紛らわすため、外に出た。
今夜は月が明るい。
井戸で水を汲んで口を潤すと、火照った体に染み渡っていった。庭に植えられたキキョウが、緩やかな風に煽られて揺れる。
伴藤家はみな寝静まって、しんとしている。月明かりの中、草花を眺めるのが私の癒しだ。この時間だけは唯一私が自由でいられる時間。現実を忘れて、一人心を休めることができる。
――せめて男子を産んでちょうだいね
お義母様の言葉が頭から離れない。
それならば、神頼みでもしようか。