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4.本物の愛-03

「喜与、そんな風に自分を粗末にするでない」


月読様は落ちた着物を拾って、そっと私に羽織らせる。


「私の体が貧相だからいけないのですか?」


「いや」


「私が伴藤の嫁だからいけないのですか? 何度もあの男に犯された体だから――」


言い終わる前に抱きしめられ、私の頭は月読様の胸に押し付けられた。


「皆まで言わずともよい」


悲痛な声が耳に届く。月読様は私の事情は知っている。私が毎晩のように花に水をやりながら、愚痴をこぼしていたからだ。詳しく話したことはないけれど、察してくれているに違いなかった。


「喜与、この傷や痣は殴られたからか?」


はだけた胸のあたりに大きな痣ができている。殴られすぎて気づかなかった。たぶん、体のあちこちに、小さな傷や痣があるのだろう。もう、どこが痛むのかすらよくわからない。


月読様はそうっと触れたあと、そこに柔らかな口づけをくれた。体の奥が痺れるようにビクンと反応する?


「痛むか?」


「痛くないです。なんだか……、心臓が……壊れそう……」


先ほどからバクンバクンと物凄い音を立てている。急に緊張と羞恥が襲ってきて、はだけた着物の裾をぎゅうっと握った。


「喜与が私を煽ったのだぞ」


「それは、そうなんですけど……でも、あの……私、こんな感覚初めてで……」


「ではやめるのか。一生のお願いとやら」


「や、やだっ、やめないでっ、お願いっ。月読さ――んぅっ」


月読様の手が私の体を這う。優しくゆっくりと、まるで壊れ物でも扱うかのように大切にしてくれる。


甘い吐息と甘ったるい声が出た。

痛いことなど何一つない。


涙が溢れる。

熱を孕んだ月読様の瞳は、まるで星空を映し出しているように綺麗で儚い。


「大丈夫か?」


「はい、嬉しくて泣いているのです。こんなに幸せなことがあるのですね」


「私もとても満たされた気持ちだ」


何度も口づけを交わす。

月読様と一つになれた喜びが、また一筋涙となって流れる。


知らなかった。

これが本当の愛の営みなのだ――

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