甘い話し
ドンドコドンドコドンドンドンドンドコドンドコドンドンドン
世界中の国々である噂が広まっていた。
ヨーロッパの国々が不法移民の入国を厳しく取り締まっているのとは逆に、東の島国では取り締まりが甘く入国仕放題だという噂。
その噂を聞き不法移民を目論む者たちは東の島国を目指す。
だが、元々単一民族で構成されている東の島国が不法移民たちの入国を簡単に許す筈も無く、東の島国中の空港や港での審査は厳しくなり、空港や港だけで無く海上や海岸では不法移民を満載した船が次々と捕まっていた。
ただ、東の島国を目指した不法移民たちの数より捕まった不法移民の数は明らかに少ない。
東の島国に不法入国を目指した者たちの出身国から問い合わせを受けた東の島国の回答は、
「海の藻屑になったのでは無いのか? 不法入国者や不法滞在者を把握できているのならサッサと逮捕して強制送還している」という物だった。
東の島国国内の不法滞在者か多く住むと噂されている市や町でも、不法滞在者が次々と行方不明になっている。
行方不明になった者の家族が警察に問い合わせると答えは何時も同じ、「国に帰ったんじゃないのか?」だった。
ドンドコドンドコドンドンドンドンドコドンドコドンドンドン
菊池博士は愛国者だ。
だから原発事故により漏れ出た放射能の除去を日夜研究し続けて、除去方法を見つける。
ある微小な生物が放射能を体内に取り込んで溜め込み、捕食されそうになった時に溜め込んだ放射能を纏めて捕食者に叩きつけ被爆させていたのだ。
だが微小な生物なため取り込める放射能の量は高が知れている。
だから菊池博士は微小な生物を巨大化させた。
巨大化させた生物に博士は「キクラ」と名付ける。
巨大化させたキクラ1体が体内に溜め込める放射能の量は、政府が事故を起こした原発の遥か沖合に放出している放射能が溶け込んでいる水に含まれる放射能の、5〜6000回分だった。
政府は菊池博士にキクラを増やすよう要請する。
ただキクラは生物、巨大化した身体に見合うだけの餌が必要だった。
ドンドコドンドコドンドンドンドンドコドンドコドンドンドン
東の島国の某湖で飼われているキクラの群れに餌を与える時間になった。
係員はキクラたちを集める為の太鼓を打ち鳴らす。
ドンドコドンドコドンドンドンドンドコドンドコドンドンドン
沢山の人が詰め込まれた檻がクレーンで吊り上げられる。
助けを求め泣き叫ぶ不法移民や不法滞在者が詰め込まれた檻は、キクラが群がり集まる上で檻の扉が外され湖中に沈められた。