すっきりミント味(メルトペンギンのおはなし)
メルトペンギンのおはなし編第1話です。
「とても寒い街ゼレフ
身体がアイスクリームでできているペンギン、メルトペンギンが現れる街
メルトペンギンは喋らないし何を考えているのかもわからないのだけれど…
そんな彼らはどんな生活をしているのか?
彼らの生活を想像して描かれたゼレフの童話がある
このおはなしではその童話を紹介する」
こちらはプロローグなのですが1話にして投稿するにしては短いので前書きに入れさせていただきます。
「スゥ!おはよ!」
「おはよーチコちゃん!」
空から降ってきて1番初めにチコちゃんと出会った
今日はいい日になりそうだ。
「ねぇチコちゃん。今日はどこに行けるのかな?」
「うーん、今日は風が強いから…下に見えてる景色より、結構遠くに行けそうね」
「楽しみだね!」
チコちゃんの言った通り、風がぼくたちを遠くに運んでくれた。
「きもちいい風…ねぇチコちゃん、今日は溶ける前にたくさん遊べるといいね」
「しばらく晴れなさそうだから、今日はいっぱい遊べそうね」
「チコちゃんは物知りだ!」
「スゥはもうちょっと自分で考えてみようね」
「そうする!」
風が弱くなってきた。
ぼくたちも地上に向かって移動し始めた。
「チコちゃん!きっとあの公園に降りるよ!」
「早速考えてみたのね。でもどうかしら…私の予想では…あの森に降りることになるかしら」
「じゃあどっちになるか、しょうぶだねっ!」
「ふふふ、それもいいかもね」
ゆったりとした風がふわりふわりとぼくたちを運ぶ。
公園が眼下に迫る。
「かった!」
次の瞬間…!
ひゅおっ!
「えっ!」
ぼくたちはぶわっと飛ばされた。
「うわぁあ~!」
公園が視界でぐるぐる回る。
そうしてどんどん離れていく!
がさっ!がさがさっ!
ぼくたちはなにかにひっかかった。
これは…針葉樹!
「ここは森だ!」
「わたしの勝ちね」
「流石チコちゃん…!まけたよ!」
あれ?でも…。
「チコちゃん…これ…ひっかかって…降りられないよ?」
「あら、スゥも?私もよ」
ぼくたちは顔を見合わせて…手足をバタバタと動かした。
枝が揺れてもぼくたちは下に落ちることはなかった。
「これはまずいよ!こんな高い場所にいたら…陰もないし太陽も近いから…」
「溶けちゃうわね」
「今日はたくさん遊べると思ったのに~!」
「方法がないわけじゃないのよ」
「ほんと!」
「頭を切り落としなさい」
チコちゃんはにっこりと言った。
「ひぇ…」
「何をためらうの?私たちはいつでもつながれるじゃない」
「それはそうだけど…」
「まあ…切り落とすなんて言い方が悪かったわね…ついでに言うと…もうすぐそうなるわ」
「え…なにを…」
チコちゃんがそういうとぼくの首と身体のつなぎ目がドロリと溶けて…2つに分かれてしまった!
「うわあぁぁあ!」
そのまま真っ逆さまに木の下に落ちた。
もちろんチコちゃんも。
「いてて…いたくないけど…」
「よかったわね、下にいけたわ」
「ぼくの身体どこらへんにいる?」
「こっちに走ってきてるわよ」
ようやく頭を拾い身体にくっつけた。
「はい、チコちゃんも」
チコちゃんの頭も身体とくっつけてあげた。
「ありがと」
「じゃあ踊ろう!」
ぼくたちは森の中で踊ることにした。
「なんか色々あっても踊ってればなんにも怖くなくなるよね」
「私たちは終わらないからね」
「終わりがあったら違うのかな?」
「さあ、私たちにはわからないわ」
「チコちゃんでもわからないこと、あるんだね」
「当たり前じゃない。どれだけ永い時を経ても、経験したことの無いことはわからないわ」
「ぼくはわからないことばっかりだけど」
「それでもいいのよ。あなたはそういうスッキリしたメルトペンギンなんだから」
「そういうもの?」
「そういうものよ」
「じゃあいいや!」
「踊りましょう。溶けるまで」
「うん!」
ぼくたちは踊った。
やがて雲間から太陽が出て、ぼくたちを照らした。
いつの間にか身体はなくなっていて、気がつけば頭もなくなりつつあった。
眠くなってきた。
目が覚めるとまたぼくがはじまる。
今日のぼくは、もう眠ってしまう。
さようならチコちゃん。
おやすみチコちゃん。
読んでいただいた通りこちらのおはなしはメルトペンギン視点の童話となっています。メルトペンギンの意思や思想を直接反映させたものではありません。ゼレフの町の誰かが想像したおはなしなのです。
メルトペンギンのいる町編と混ざって読みにくいかもしれませんが各話括弧内にて何編かをお知らせ致しますのでよろしくおねがいします