倉庫には和菓子などお菓子が詰まっていた
夜マンションの自宅で酒を飲みながらテレビを見ていたら、突然テレビの画面が切り替わる。
お笑い芸人の代わりに強張った表情のアナウンサーが映し出され、北半島国が核ミサイルを発射した事を告げるJアラートが発令されたと話す。
また何時ものように頭上を飛び越えて行くだけだろうと思っていたら、首都がある方向で眩い光が迸り続いて核ミサイルが着弾したらしい爆発音が響き渡った。
ベランダに出て首都の方に目をやると、巨大なキノコ雲が立ち上がって行くのが見える。
ヤバい、核戦争が始まった。
俺は寝室に走り服や下着を鞄に詰める。
車の鍵を持ち自宅から飛び出て駐車場に行く。
向かうのは街の郊外で1人暮らしをしている伯父の家。
この伯父、プレッパーを気取っていて自宅地下に核シェルターを造り、核シェルターに数年立て籠もれるだけの食料を備蓄しているのだ。
車を走らせていると首都圏の方角に次々と巨大なキノコ雲が立ち上がって行くのが見える。
首都圏にある国軍や同盟国軍の基地や駐屯地にも核ミサイルが着弾しているのだろう。
伯父の家に付くとノンビリしている伯父が出迎えてくれた。
「早くシェルターに入らなくては」
「まだ大丈夫、風は此方から首都の方へ吹いているから放射能は流れて来ないよ」
そう言いながらも伯父は俺と共にシェルターの中に入る。
俺はこのシェルターに何れ程の期間籠もっていられるのかと、食料が詰まっている倉庫を覗いた。
幾つかある倉庫の殆どの中身は、和菓子やチョコレートなどのお菓子やコーラなどのジュース類。
「なんでお菓子ばかりなんだ?」と伯父に聞く。
「限定核戦争や原発事故クラスなら、3カ月もシェルターに籠もっていれば放射能も拡散して薄まる。
だから倉庫の1つは真っ当な食料で埋まっているだろう。
でも全面核戦争になった場合は、地上は放射能で汚染され尽され拡散されない。
お前が来るまでに国軍や同盟国軍の無線を傍受していたら、今回の核戦争は北半島国との限定核戦争では無く、北半島国の後ろ盾になっている2大国も参戦している全面核戦争らしい。
こんな個人の核シェルターでは、少なくとも数百年以上立て籠もらなければならない全面核戦争の放射能汚染には恒久的核シェルターと違って対応出来ない。
それなら好きな物を好きなだけ食べて死にたいと思い、お菓子やジュースを詰め込んだって訳さ。
もう医者の言う事を聞かなくても良いし、カロリー制限を守る必要も無いからね」