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5 不思議な喫煙所へ(2)



「君の質問にできる限り答えよう」


イケオジもといゼミキールの言葉に私はまず最初の質問をする。


「まずこの世界は私の住んでいる世界ですか?」


「そうとも言えるし、そうとも言えない」


んん? どういうことだ?

私が険しい顔をしていたからかチーシャがピンクと紫の縞々尻尾で私の腕をそっと撫でる。

触らせてはくれないがそのフワフワ感に心が和む。


「難しいですね……」


「そうだね。でも今はまだそうとしか言えないんだ」


ゼミキールも申し訳なさそうに眉を下げる。


「いいえ。それは仕方ありません。

大丈夫です。

それでは質問の仕方を変えますね」


「あぁ助かるよ。ありがとう」


「これは夢ではなく現実と捉えてよろしいですね?

この体は痛みや感覚があります」


「その質問の答えは『イエス』だ」


私はなるほど。と顎に手を置いて考える。

質問の仕方を少し変える。

もしくは言葉を選ぶ必要がありそうだ。


「それでは今私たちがいるこの国の名前は教えていただけますか?」


「その答えは『イエス』だ。この国は……そうだな……。

トラ……ハート国……」


ハート国の前に何かゼミキールさんは言いかけた気もするがそれよりも……。

やはり聞いたことが無い国の名前だったので、自分が地球ではないどこかよく分からないところに来たことだけは、はっきりとした。


「それでは最後の質問です。

私はもとの場所に戻れますか?」


「…………それは僕にもわからない。

できるにはできるが……できないとも言える」


「分かりました。ありがとうございます」


私はゼミキールに頭を丁寧に下げる。


「ごめんね。言えることが少ないね。

それにもとの場所についても…………」


「お嬢? 大丈夫っすか?」


私はどんな表情をしているのだろうか?

営業スマイルをしているつもりなんだが……。


「大丈夫です。もし戻れたらとは考えますが……。

今はそれよりもどうするべきかを考える方が効率がいいのでそうします。

あっ最後の質問って言いましたが、もう一つだけいいですか?」


「もちろんだよ。レディー」


ゼミキールが優しく微笑みながら答えてくれる。

私も微笑みを返しながら本当に最後の質問をする。


「私はこの先どうすればいいですか?」


「…………そうだね。君はとある人に呼ばれたんだ。

今、その人は迎えに来ることができない。

だからこの先を歩いて行ってごらん。

多分、君の見知った人に会えるかもしれないし、会えないかもしれない」


「分かりました。

とりあえず私はその私を呼んだ人を探します」


「そうだね。でもまずはお茶とケーキを召し上がれ。

先ほどの休憩所では満足に休めなかっただろう」


ゼミキールの気遣いをありがたく受け取り、私は再度ケーキにフォークを入れる。

いちごの乗ったフワフワのショートケーキだ。


「お嬢。お嬢。こっちも食べるっすか?

こっちはモンブランっす」


「モンブランも好き。食べる」


私はチーシャのモンブランも味見する。

どちらもしつこくない甘さで、スッと口の中で溶けていく。


「お気に召したようだね」


「はい。美味しいです。お茶もとてもいい香り」


「僕はコーヒーも好きだけれど紅茶にこだわっていてね。

今日は初めてのお客様だからアールグレイにしたけれど、もし他のも興味があるなら次回は違うものを準備しよう」


ゼミキールの言葉に私は大きく頷いた。

ゼミキールは私を見てまるで娘を見るかのような優しい微笑みをくれる。


「ご馳走様でした。色々とお気遣いいただき本当にありがとうございます」


「いいえ、こちらこそ。あぁそうだ。

これを持って行くといい。何かに役立つ」


そう言ってゼミキールに手渡されたのは親指くらいの小さな瓶だった。

小さいのでラベルになんて書いてあるかわからず目を凝らして見る。


「魔王!! 芋焼酎!!」


「あぁそうだ。君が飲まなくても飲みたがる者がいるだろうし、いないかもしれない。

その時には自然ともとのサイズに戻るようにしているから安心しなさい。

それじゃ道中気をつけて」


私は再度ゼミキールに丁寧な礼をして喫煙所を後にする。

頂いた芋焼酎は割れないようにハンカチで丁寧に包んでポケットに入れる。


「お嬢、先に進むっすか?」


「あぁそうだな。

チーシャは私に着いていて大丈夫なのか? 今更だが」


「おぉ……話し方が元に戻っている……」


「当たり前だろう。

どう見てもゼミキールさんは目上の方じゃないか。

で? 大丈夫なのか?」


「大丈夫っす! お嬢についていくっす!」


なんか違う言い方にも聞こえるが、チーシャがついてきてくれるのは心強い。

私は無意識に頬を緩めてチーシャに向き直る。


「助かる。チーシャがいれば安心だ」


私の言葉に「お嬢ーーーー!!」と言って飛びかかろうとしたので、飛びついてきたチーシャの顔面を鷲掴みにする。


「ふがっ」

と情けない声をあげて私の手からチーシャが離れる。


「痛いっす……」

といいながら自分の顔を抑えめそめそとするチーシャ。


しっかりとその辺の躾はしておいた。

猫も躾は大事だと思う。




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