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3 不思議な休憩所へ



「僕の方が優雅だ!」

「いや!僕の方が美しい!」



騒がしいな。と思い私はその休憩所をチラリと見遣ってスタスタと先に進む。


「お嬢……やっぱそうなるっすね……」


「何がだ?」


チーシャの呼びかけに私は足を止めてチーシャを振り返る。


「「あっチーシャ!!」」


「あー見つかった…………」


項垂れるチーシャのふわふわの髪を私は慰めるように撫でる。

癖になりそうだ。この手触り……。


「チーシャは僕の方が綺麗だと思うよね?」

「いや僕だよね?」


「どっちでも一緒でしょ……」


私に頭を撫でられたまま2人に返事をするチーシャ。

嫌がらないあたり、彼も私に撫でられるのが気に入っているようだ。

奇抜なピンクと紫の尻尾もゆらゆらと揺れている。


「じゃぁ君は!?」

「そうだよ。君は!?」


「あぁ?君たち双子か?」


「そうだよ。僕はパンプール」

「そうだよ。僕はダンプール」


「「僕達のどちらが美しい?」」


「…………どちらでもいいんじゃないか?」


双子はパンプールとダンプールと名乗った。

2人とも同じような整った顔をしている。

分け目が違う肩まで届くキラキラの金髪。

パンプールは青のジャケットに赤のネクタイを締め、ダンプールは赤のジャケットに青のネクタイを締めている。


少女まんが好きの私としてはどちらもよくある王子様のような容貌だ。身長も高い。

ただ…………。


「美しいのは僕だ!」

「いや僕だ!」


ギャイギャイと騒がなければ……だ……。


「このお姉さんに決めてもらおう!」

「そうしよう!」


2人の青の瞳が一斉にこちらに向く。

チーシャは私の後ろで怯えたようにプルプルと、私のブラウスを掴んでいる。

…………カオスだ……。

そう思った私は悪くないと思う。


「前提に、人とは各々好みというものがある。

そして君たちは双子だ」


「「分かってる!」」


喧嘩している癖に双子らしく息はぴったりだ。

私は大きくため息をついて口を開く。


「では外見での判断を求めているんだな?

それでは2人の外見の違いについて私に教えてくれ。

私は君たちの見極めは服装でしか見分けられないほど似ていると思ってしまう」


「「分かった」」


私とチーシャは休憩所らしく置いてあるベンチに座る。

パンプールが指をパチンと鳴らしてお茶のセットを出す。

ダンプールが指をパチンと鳴らしてお菓子のセットを準備してくれた。

2人がコソコソと相談している間、私とチーシャは優雅にティータイムを過ごすらしい。


「そういえばこうやって誰かとカフェとかに行った事ない……」


「えっ!? マジで!? 俺がお嬢の初め……」


ポカっとチーシャの頭を殴る。


「言い方」


「すんません……。

まぁ状況が状況っすが、楽しむっす!」


ニカリと笑うチーシャに思わず微笑んだ。


「やっぱお嬢は笑った方がいいっすよ」


「ダメだ。私の笑顔は人を不快にさせるらしい……」


「誰がそんな事を言ったんすか!?」


「父だ」


私の言葉に「あぁ」とチーシャが納得する。

私がなぜ納得するのかと聞こうとした時、双子が手を挙げて私達に声をかけた。


「「準備出来ました!」」


「よし。それでは聞こう」


私はカップを置いて2人に向き直る。


「まずは髪の分け目が違う」


「あぁそれは分かる」


「そして服の色が違う」


「……あぁそれも分かっているぞ」


「「何よりも!!」」


「ダンプールは涙ぼくろが右!」

「パンプールは涙ぼくろが左!」


「…………あぁそうか……で?」


お互いの目元にある小さな小さな、涙ぼくろを指差して固まる双子に私も返事に困る。

そしてわずかな沈黙の後私はなんとか口を開く。


「え?ちょい待て。お前たちこれで終わりとか言わないよな……」


「「え?終わりだよ?」」


「はぁぁぁあああ」


私は大きなため息をつく。


「お嬢。お茶を」


そう言っておかわりを注いでくれたチーシャに礼を言って一口お茶を飲む。


「お前たち。たかだかそれだけの違いでどちらが美しいか揉めていたのか?」


キョトンとした顔でこちらを向く同じ顔。

あぁ分け目と服装とほくろの位置は違うが……。


「「じゃあ!あなたがどちらが好みか教えてよ!」」


私は置いてあるマドレーヌを1つポケットにあったハンカチに包む。

後で食べようと思ったからだ。

そして立ち上がりチーシャに声をかける。


「チーシャ行こうか」


「あっ! はいっ! お嬢」


2人で立ち上がり歩いて行こうとするとスカートを掴まれた。


「「どっちが好みか! それだけ教えて!」」


「はぁ。わかった。それを答えれば手を離すんだな?」


「「もちろん」」


私はそのまま振り返り仁王立ちに腰に手を当てて言う。


「どっちも私の好みではない」


「「えぇそんなぁ」」


「私の好みはお前たちみたいな細っこい体の持ち主ではない。

しっかりと、それでいてしなやかな実用性のある筋肉を兼ね揃える。

そして威圧するほどの目力と大きな包容力を持ったような者だ。

お前たちは一般的に綺麗なのだろう。

しかし私の好みでは断固としてない」


プルプルと震える2人。


「綺麗って言った?」

「うん。言ったね」


「お前たちって言った?」

「うん。僕達2人ともだね」


「「そっかありがとう!」」


「仲直りできたならよかった。

兄弟なのだから揉める事もあるだろう。

しかし長引かせる事はダメだ。しっかりと仲直りしろ」


「「うん!ありがとう!またね」」


そう言って2人は私とチーシャがお茶を飲んでいたところに戻り、2人で仲良くお茶会をはじめた。


「お嬢……あの2人を納得させるなんて……」


「あの2人はいつもああなのか?」


チーシャは力無くコクリと頷く。


「いつも意味のわからない事で揉めているんです。

久しぶりにあんな仲良く過ごしているところを見ました」


「それならよかったじゃないか。

さぁ私たちも先を急ごう」


「はいっ! お嬢!

でもここを過ぎたらすぐ着きます」


そう言ってチーシャとまた真っ暗な森の中にある淡く光る一本道を進んだ。



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