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26 不思議なハート辺境伯領へ(2)



目は覚めているが妙に体が重い。

まるで何かが私の上に乗っているかのような重さだった。


ゆっくりと目を開けるとさすがに驚いた。

端正な顔が目の前にある。

今は閉じられているがこの目が開けば宝石のような真っ赤な瞳が見えるはず……。

キャパオーバー過ぎて思わず考えが違う方に飛んでいた。


自分の状況をしっかり確認しようとひとまず考える。

私の頭の下にはサルドゥストの腕が枕の様に敷かれている。所以……腕枕だ。

そして重いと思っていたのは逆の腕で私を抱きしめるように背中に回っているサルドゥストの腕の重みだった。

どうやら上半身は裸のようで綺麗な鎖骨が見えている。

その鎖骨や首筋をみると何やら噛み痕のような………………?


「っ………………!!」


思わず声にならない悲鳴を上げた。


「おはよう。アリス。気分はどうだ?」


「…………………………」


先ほどまで、閉じられていた目が怠そうに開き、真っ赤な瞳が私をとらえる。

返事をしない私に体調が悪いと勘違いしたのか慌てるように体を起こすサルドゥスト。

その現れた上半身を見て更に私は絶句した。

首筋や鎖骨周りのいたるところに噛み痕が残っていた。


「頭が痛いのか? 気持ち悪いのか? ぶふっ…………」


甘い声で私の頭を撫でるために近づくサルドゥストに私は思わず掛布団を投げる。

私は、服は昨日のドレスのままだったようで真っ白なシーツの上に私の真っ赤なドレスが存在感を表すように広がる。

布団からもぞもぞと這い出たサルドゥストが私を見て一瞬固まる。


「………………すまない。つけすぎた……」


そう言うサルドゥストの視線を追って自分の胸元を見ると大量に赤い痕がある。


「…………………………っ!!」


私はベッドの上で膝立ち状態で固まってしまう。

そんな私の目には私の頬にそっと手を当て優しく微笑むサルドゥストが映る。


「その表情を見ると……俺は期待していいんだな?

覚えているんだろう? 昨日の事を。ずいぶん我慢させられた」


そう言って近づき始めるサルドゥストの顔を必死で両手で押しとどめる。


「おい……。覚えているんだろう?」


私の両手を片手で簡単に拘束し、問うサルドゥストに私は観念して白状した。


「………………あぁ。覚えている」


「あれはアリスの本心として捉えるがいいか?」


「いや! ちょっと待て!!」


「いや待たない。お前の本心をきちんと素面で聞かせろ」


「それはっ! ちょっと待てと言っている! 顔が近い!」


「昨日はアリスが覚えていない間に奪われたらかわいそうだと思って……ここにはしなかったんだぞ?」


そう言って色気駄々洩れのまま私の唇を親指でなぞるサルドゥストに昨日の自身の失態が蘇ってくる。


「俺はこんなにお前が好きなのに。いつになったらアリスは言ってくれるんだ……」


そう切なそうにサルドゥストが赤い瞳を揺らす。

そんなサルドゥストの姿をみて、私は思わずサルドゥストの肩に頭を預ける。

これならば、私の顔は見えないだろう……。


「…………好きだ……」


「っ!! ふぅ……。

……酒の入っていないお前から聞くまで信じられなかったんだ……」


「好きだ。サルドゥストの髪も目もその優しい手も。そして約束を守ってくれるその心も……」


「俺もアリスが好きだ。初恋のアリスを俺は忘れられずにいた……。お前が好きだ……」


サルドゥストの顔が近づき、何度も何度も私にキスをする。


「ん? うむぅ……うぅ!! うっ!!」


「いって! なんだよ!」


「いきなり舌を入れるな!! こちとら初心者なんだ!!

それに!! まずは風呂に入る! そして腹が減った!」


危うくなりそうなキスに私は耐えきれず、サルドゥストの背中を思いっきり殴った。

私の思いっきりの力にも動じず渋々と言った様子でやめ、風呂場に案内して湯も張ってくれた。

私はサルドゥストが暴走する前になんとか止めることができた。


「俺は昨日シャワー浴びているから、一緒に入るのはまた次な」

と言って扉を閉めるサルドゥストに思いっきりタオルを投げたが扉に阻まれポスンと落ちる。


風呂場に案内され、着替えなどの準備もしてくれたので私は気兼ねなく風呂につかることにした。

シャワーを軽く浴びようとすると目の前の鏡に自分の姿が映る。


「っ!!」


思わず叫びそうになったのを喉に力を入れてぐっとこらえる。


「つけすぎだ…………」


首筋や鎖骨に胸のぎりぎりのところまで真っ赤な痕がついていた。

しかし、サルドゥストの首筋を思い出し、何とか自信を納得させ私はゆっくりと入浴を楽しんだ。


風呂から上がり、サルドゥストの準備した服を広げる。

もこもこした柔らかい生地のパーカーにショートパンツ。

足を冷やさないようにという気遣いからか同じ生地の長い靴下だった。

それを着て扉を開けるとサルドゥストも身支度をすませたようで、シャツとズボンというラフな格好をしていた。


「こっちに来い」


そう言われてサルドゥストを警戒していると、クツクツと笑いながら私に近づく。


「まだ取って食いやしねぇよ。髪乾かすぞ」


「なるほど。それは頼む」


私がソファに座るとサルドゥストの手が私の髪を優しく撫でる。


「これで乾くのか?」


「あぁ。手から微風で温風を出している。俺もアリスの髪が好きだからな」


「そうか一緒だな」


そう返事をして少し微笑むとサルドゥストは一瞬驚いた様子を見せる。

しかし、すぐに嬉しそうに微笑んで私の髪をひと房とりそこに愛おしそうに口をつける。


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