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25 不思議なハート辺境伯領へ



ウルドゥストが酔いつぶれたので、酒盛りは終了を迎えた。

サルドゥストがそっと自分の軍服の上着をウルドゥストにかけていた。


「おい。クロードとやら。ウルドゥストを頼む」


「あ゛い゛ぃぃぃ」


ウルドゥストとサルドゥストのやり取りに、途中から男泣きを超えて号泣していたクロードにドン引きながらも声をかける。

ウルドゥストはクロードに抱き上げられて運ばれていった。


私はサルドゥストとチーシャ。

そして空気に徹していたジャックと連れ立って庭園に向かいサルドゥストが再び竜巻を呼ぶ。


サルドゥストが私を来たとき同様に私を抱き上げる。

来る時とは違うのは軍服の上着が無いので、シャツから直にサルドゥストの体温を感じる。

私はそれが気持ちよくてスリスリとサルドゥストの肩口に頬を擦りつける。

それでは物足りなくてサルドゥストの温もりを求めて両腕で首に抱き着いた。



♢♢♢♢♢


アリスを抱き上げるといきなり俺の方に顔を擦り付け始める。

それが物足りなくなったのか体を密着させるように首に抱きついてきた。

薄いドレスの布から伝わるアリスの柔らかい体に思わず理性が飛びそうになる。


「おいっ! アリス!

どうした? じっとしろ! 落ちるぞ!」


「いやぁ。落ちるのやだぁ。落としちゃダメぇ」


「「「………………………………」」」


その場に居た全員がアリスの変貌に呆気にとられ思わず固まる。

その間もアリスは俺の首筋に顔を寄せたり甘噛みをしたりし始める。

俺はアリスの変わりようと、切れそうになる自身の理性の糸を必死で繋ぎとめることに忙しい。

ジャックを見れば見てはいけないものだと決断したのか背中を見せている。

チーシャは両手で顔を覆いながらも顔を赤くしつつ指の隙間から明らかにこちらを見ている。


「………………チーシャ」


「多分っす。多分っすけど……お嬢酔っているんじゃないっすか?」


「は?」


「いや、お嬢が20歳の時に家で酒を飲んだけど……その後、禁止にされたって言ってたっす……。

だから……もしかしたら…………」


その言葉を聞いて、俺は一度でも組の誰かに、このようなアリスの姿を見られたと思えば殺気が溢れ出した。


「ひぃ………………っす」そんなチーシャの声も耳に入らないほどだった。


「んー? サルドゥスト?

なんか怒ってるの? 怒っちゃやだぁ」


一瞬にして 俺の殺気が霧散する。

アリスが俺の額に自分の額を合わせて、とろとろとした視線で俺の目を覗き込んできたからだ。


「サルドゥストの目は綺麗だねぇ。

私、サルドゥストの瞳好きぃ」


そう言って再び俺の首に絡まりつつ首筋に顔を擦り寄せる。


「それにサルドゥストの匂いも好きぃ」


「…………他には何が好きだ?」


俺は思わずそんなことを言っていた。


「フワフワでサラサラな髪も好きでしょう?

それに私を包み込むこの体も好きぃ。

大きな手も好きぃ。

でもねぇ一番好きなのは、私を忘れずに迎えてくれたこと?

私、ずっとずっと覚えていたの。あの約束。

私はサルドゥストが私の王子様だと思っていたの……」


「………………そうか」


チーシャは俺たちのやりとりを見つつ、砂糖を揶揄ではなく本当に吐き出していた。

俺はそんなことも気にせず更に力を込めてアリスを抱きしめる。

アリスはそれに気づき「キャッキャッ」と子供のように喜びの声を上げていた。

ハート城に到着して俺は速足で私室にむかう。


途中、メイドたちに引き留められたが、ジャックとチーシャがそれを阻止してくれた。

私室について、俺はソファに座わる。

アリスを俺の膝に座わらせ向かい合わせになるようにする。

力を抜いて俺に体を預けるようにもたれかかるアリス。

この体勢が癖になりそうだ…………。

と考えてしまう頭を軽く振って視線を自身の右手に送る。


「アリス? 水を飲もう?」


「えぇ? なんで? 私まだお酒飲みたい……」


「だめだ。もう俺以外の前で酒は飲ませられない」


「ん? サルドゥストとなら飲んでいいの?」


「……あぁ。だから今日はとりあえずこれを飲んでくれるか?」


「うん。分かったぁ」


素直に俺から水のグラスを受け取ると、おぼつかない両手でグラスをなんとか握り、水を飲み始める。

俺は最初アリスがグラスを落とさないように支えるために視線をグラスにやっていた。

それからちゃんと飲めているか確認するためにアリスの顔を見る。

するとアリスの口から時折、水が口の端から首筋に流れていく。


「もうー冷たいぃ」


そう言ってグラスから口を話したアリスの唇が水にぬれて艶やかに光っている。

アリスは首筋に流れた水が胸元に入り不快なのか顔を歪ませる。

俺は思わず「ゴクリ」と生唾を飲んだ。

グラスを持っているせいで水を拭えないアリスが俺の膝の上で身じろぎする。


「…………アリス……水が気持ち悪いのか?」


「うぅーん。気持ち悪いぃ」


「分かった。俺が綺麗にしていいか?」


コクリと頷いたアリスを確認して俺はアリスの胸元に流れた水と共に肌を吸い上げた。

音を立てて吸い上げるとくすぐったいのか、俺の首筋に顔を埋める。

一際強く吸い上げると、アリスは俺の首をガリッと音が立つほど噛んだ。

その痛みに我に返る。

目の前のアリスの肌には赤い痕がたくさんついた。


「くすぐったい! ダメ! サルドゥスト!」


「すまない……。アリスがあまりにも綺麗で我慢できなかった」


「もう。ダメだよ? 私……サルドゥストから見て綺麗なの?」


「あぁ。俺にとって初恋はアリスだ。

そして大人になった今のアリスも好きだ」


「ふふふ……嬉しい」


そう言ってアリスの体からガクリと力が抜ける。

俺は慌ててアリスを抱き留める。

「スゥスゥ」という穏やかなアリスの寝息が聞こえた。

俺はそれを確認して大きく息を吐いた。


「………………危なかった…………。いや…………アウトか?」



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