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20 不思議な王宮へ(5)



「君たちの名前を教えてくれ」


私の言葉に涙ぐみながら赤のぴっちりスーツを着たクロースシスターズのうちの一人が口を開く。


「……赤の私がロッソ。黄色がジャッロ。緑がベルデ。黒がネロ。紫がビオラ……」


そう言ってオイオイと泣き出すロッソのたくましい肩を撫でながら、私は彼女が泣き止むのを待つ。

ビィーンと鼻を豪快にかみ落ち着いたロッソは話しはじめた。


「私たちは5人でやっと一つの魔法が完成するの。

だから私たちは5人いつも一緒でないと仕事ができないの。

個人で名前を呼ぶ必要が無いせいか、私たちは個人の名前を私達以外には誰にも呼んでもらえないの……。

だからアリス様にお名前を聞かれて……。

とても嬉しかったの。

急に泣き出しちゃってごめんなさいね。

さぁ続きの試着をしましょう」





沢山の服の試着が終わる。

私はサルドゥストに変えてもらった赤のドレスから、今度は背中が大きく開いた赤のマーメイドドレスに着替えていた。

胸元には金のチェーンを足元は黒のピンヒールを履いている。

ドレスはワンショルダーで右腕だけが長くシンプルでありながらも私好みのものだった。


ロッソに髪を整えてもらい複雑に編み込まれた髪に、この世界に来た時からつけているハートのクイーンレッドダイヤのバレッタにゴールドの玉のついたピンを散らばらせるようにつけられた。


「「「「「完璧!!」」」」」


「ありがとう。ロッソ。ジャイロ。ベルデ。ネロ。ビオラ」


「「「「「アリス様!!!」」」」」


私が彼女の達の名前を呼ぶと全員が笑顔になる。

私はそれを見て満足する。


「また頼む」というと嬉しそうに「「「「「もちろん」」」」」と息の合った返事をしてくれた。


「失礼するっす。終わったってきいたっす。

お嬢!! 綺麗っす!!」


私に飛びつこうとしたチーシャに拳骨を落とそうとすると、クロースシスターズたちがチーシャにタックルをしようとするのが見えた。

それをひらりと交わして得意げになるチーシャに拳骨をお見舞いする。


「痛いっす……。お嬢」


「…………」


「すんません。陛下との晩餐に案内するっす……」


クロースシスターズに軽く手を振り、別れを告げ私はチーシャの案内でサルドゥストとの夕食の席に向かった。



食堂と思われる扉をチーシャが開くと先に席についていたサルドゥストが立ち上がり私の元に近づいてくる。


「あぁやはり良く似合う。きれいだアリス」


「……ありがとう」


甘い声で甘い言葉を囁かる。

もちろん蕩けそうになるほどの微笑み付きだ。

私はそんなことに免疫が無いので、どう返していいか分からず無難に礼を言う。


サルドゥストはそんな私を見て更に嬉しそうに微笑む。

元々整った顔が緩やかに甘さを含んで変化する様子に私は柄にもなく照れてしまう。


「照れるアリスもいいものだな」


「……やめろ……からかうな」


「からかってなどいない。まぁ先ほどの続きの話は食事が終わってからにしよう。

まずは席に」


そう言って私の手を取る。

まるで母に聞かされていた物語のようにエスコートをされる。

そして席まで連れて行き、椅子を引き私を座らせる。

2人で向かい合ってテーブルを挟んで座る。

ウエイターがワインを持ってきて私にそそごうとしたのを止める。


「すまない私は酒を飲まないんだ」


「失礼いたしました。それでは果実水などいかがですか?」


「あぁそれで頼む」


恭しく礼をして私にワインの代わりに果実水を灌ぐ。


「さぁそれでは食べよう」


「……もはや……驚きも無い……」


「いや十分驚いているではないか。アリス」


そいってクククと笑うサルドゥストをじっとりとした視線で見る。

私が何故そのような反応をしたかと言うと……。

飲み物が淹れられてすぐウエイターたちが運んできた料理がテーブルに乗ったからだった。


並ぶのは……刺身に寿司。そして天ぷら。茶碗蒸しにその他、和食の副菜が並ぶ。

そうだあれだ。これは……高級旅館の夕食だ。


「浴衣にすればよかったか?

けれどあれは説明が難しい……」


「いや。確かにそうなんだが……。なぜだ?」


「なぜとは何がだ?」


「この食事だ」


「あぁこれは俺がそちらの国に行った時について来ていた者が興味本位から1年間料理修行に出てな。

作り方を覚えたり料理の本を買い漁ったりして魔法で作れるように改良したんだ。

おかげで俺は懐かしい味をいつでも食べられたぞ」


「…………なるほど」


「さぁいただこうか」


サルドゥストの言葉に私も箸を持ち、料理に手を出す。

口に入れた、ほうれん草のお浸しはそのまま『ほうれん草のお浸し』でとても上品な味だった。


私は久しぶりに食べる故郷の味に次々と箸が進んでいく。

と言っても数日だが。


あまりにもその数日が濃かったせいか久しぶりに感じてしまう。

そんな私をサルドゥストがワインを飲みながら、嬉しそうに微笑んで見ていたことなど気づかなかった。


わたしはデザートのわらび餅までしっかりと完食し、熱い緑茶をいただいていた。


「さぁそれでは続きを話そうと思うのだが、歓談室にゆっくりとできる準備をさせている。

そこで話してもいいだろうか」


「あぁ分かった」


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