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17 不思議な王宮へ(2)



「すまなかったなアリス。なかなか迎えに行けなくて」


そう言って抱きしめようと近づいてくる男。


真っ赤な髪に真っ赤な軍服を纏い、軍服にはジャラジャラと何やら装飾がされている。

身長も高く体格はしなやかな筋肉がついているように見受けられる。


「い゛っだ!!! おい! アリス!

お前足踏んだな!」


私は赤いヒールの靴で思いっきりヒールをめり込ませるように男の足を踏んだ。


「いきなり抱きつくとは失礼な。まず名を名乗れ」


私の言葉にジャックが立ち上がり何か言おうとする。

私はそちらをひと睨みし黙らせる。

ジャックは私と男の顔を交互に見て口を引き結び黙る。


「いいジャック。アリスと俺の間にそのようなものは必要ない」


「ほぅ? 私とお前の間にあるのは無関係だけだが?」


「ククク。なるほど。そう育ったか。

まぁいい。ついてこい。

あぁ。名乗れと言っていたな。俺はサルドゥスト。

サルドゥスト・ハート」


「私は有栖川牡丹だ」


「あぁ知っている。牡丹。いや昔のようにアリスと呼んだ方がいいか?」


「昔?」


「詳しい事は城で話そう」


そう言って着いてくるように促すサルドゥストに私は着いていくことにした。

チーシャをチラリと見ると跪いたまま私にヒラヒラと手を振っている。

そして声には出さず『後で』と口パクで言ったのを私は頷きで返す。


ジャックの先導でサルドゥスト、その後ろに私。

私の後ろにも赤い鎧を纏った騎士が着いてくる。


「チーシャと随分仲良くなったらしいな」


「あぁそうだな」


「牡丹はあぁ言う男が好みだったか?」


「いや違うが?」


「そうか」


私の言葉に急に嬉しそうに柔らかく微笑むサルドゥストに一瞬ビクリとする。

前を向いていたサルドゥストは私が身震いした事に気づかなかったようだったので安心した。


「陛下。本当にこちらでよろしいのですか?」


「あぁ。しばらくは外で待っていろ」


ジャックの言葉にやはりと思う。

この赤髪の男が陛下だった。


私はサルドゥストに促され、部屋に通される。

部屋はシンプルだが作りが良く、座らされたソファもとてもいいものだと分かる手触りだった。


「さぁ。早速話をしよう」


そう言ってサルドゥストは私の隣に腰掛け、カップを取る仕草をすると目の前のテーブルにはお菓子や軽食。

そして湯気がたちのぼるカップには紅茶が入って出てきた。

そのままカップを取り紅茶を一口飲んでテーブルに置くサルドゥストに倣い、私も紅茶を一口飲む。

カモミールティーだった。


「美味い」


「そうか。口にあったようで良かった」


「それで話とは? 私をここに呼んだのはお前だな?」


「お前ではない。サルドゥストだ」


「…………サルドゥスト」


私が名前を呼ぶまで数分。

お互い睨み合いが続いた。

私が男の名前を呼ぶと嬉しそうに顔を緩める。

軍服が邪魔に思ったのか乱暴に脱ぎソファに引っかける。

中は黒いシャツを着ていたようだ。

やはり軍服の上から分かるほど、適度に筋肉がある。

シャツだけになるとそのスタイルの良さが際立っていた。


「なんだ? 俺の体が好みか?」


「あぁそうだな。その実用的な体は好みだな」


「ククク。まぁ実用的かどうかは実際に体感すればいい」


私はサルドゥストが何を言っているのかわからず小首を傾げる。

サルドゥストはそんな私を見て軽く微笑み口を開く。


「とりあえず何から話すべきか……」


私の仕草に己の意図が通じていないことも気にせずに、サルドゥストはお茶を一口飲み軽く思案する。


「ではある程度私から質問させてもらいたい」


「あぁもちろんだ」


「まずは、ここはどういう世界なんだ?

私のいた世界と違うのか?」


「そうだな。まずはそこから話そうか。

アリスが分かりやすいように言うとここは異世界。または異次元の国になる。

アリスの世界が表の世界だとすればこちらは裏の世界。

表と裏で対なる世界。そんなところだ」


「まぁそうだろうな。魔法があるしな」


「そうだな。

そしてこの世界とアリスのいた世界を結ぶ嵐が時折り起こる。

今回は俺が意図的に繋げたが、それには膨大な魔力が必要になる。

だからまぁ嵐で飛ばされたものが、あちらやこちらの世界に迷い込むことが時々あるということだ」


「私は嵐ではなく、サルドゥストに連れてこられたと言うことか」


「ああ。

ビアールを向かわせそしてアリスをこちらに呼ぶ時に少し問題が起こってな。

本当はすぐにここに呼ぶつもりだったんだ。

ビアールもビアールであぁ言う奴なんだ……」


「まぁビアールは後で1発殴らせろ」


「俺はいいが。殴れたらな」


そう言ってサルドゥストは声を出して笑う。

軽食に手を伸ばすサルドゥストを見ながら私は更に疑問を口にする。


「それで? なんで私は呼ばれたんだ?」


私の質問に手を伸ばしたままピクっと固まるサルドゥスト。

彼の手を伸ばした先のサンドイッチをふいっと取って、固まったままのサルドゥストの口に突っ込む。

そして私もサンドイッチを口に運ぶ。


もぐもぐと食べて、次は……と考えているとサルドゥストが復活した。

まずは急ぎ口の中のサンドイッチを胃に流し込もうとして咽せていた。

視線一つで水をだしそれを一気に呷って落ち着いたらしいサルドゥストは口を開く。


「本当に覚えていないんだな?」


「何をだ?」


「…………分かった。そこから話そう」


私はクッキーを手にして、もぐもぐ食べつつサルドゥストの話を待った。



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