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15 不思議な3:00pmへ(5)



クリスのバフっと両手を打つ音と共にキラキラと周囲が輝いていく。

光が収まり、私たちはそれぞれ顔を見合わせる。


サイエンは先ほどのテイストのままジャケットが執事服のように燕尾服に変わっている。

そしてネクタイをしていたのが詰襟に変わった。

リーピーはジャケットがベストに変わり、クリスも同じ色違いになっている。


「俺こんなの着たことないっす! 意外と似合うっす」


チーシャが立ち上がりぺたぺたと自分の体を触りながら自分の服装を確認している。

真っ白なズボンにキャメル色の編み上げブーツそして濃い紫のシャツにピンクのベストといった乗馬スタイルだった。


「お嬢も立ってください!」


そう言われて立ち上がる。

今回は私がそうしろと言ったので我慢する。

私の服装は水色と白のゴスロリドレスだ。


「さすがだな。クリス」


私の褒め言葉に「えへへ」と照れるクリス。

リーピーが自分の耳をクイクイっと引っ張るとテーブルにアフタヌーンティーのセットが現れる。

私はそれを見てリーピーに頷く。


「サイエン。紅茶を出せ」


「はっはい! 今すぐ」


そう言ってまた踵を鳴らすと白磁に小花の絵付けがされたカップに紅茶が入って出てくる。


「まぁある程度メニューは必要だろうが、それはゼミキールさんとでも相談すればいい。

働いて疲れた後に優雅に友達や彼氏とお茶をする。

そしてそれを非現実的な今まで自分が着たことのない服装で楽しむ。

これが店のコンセプトだ。せっかくの店の名前だ。そのまま利用すればいい」


「「「!!!」」」


「これ楽しいっすー」


3人が驚き固まる中チーシャの呑気な声が響く。


「サイエンは代表なのだろう?

ということはオーナーがゼミキールさんなのか?」


「あっいえ。ゼミキールさんは確かに飲食管轄の統括長ですがオーナーは更に上の人です」


「なら他の飲食店も手掛けているのだな?

夜職以外も」


「はい。ですので相談が上手くいけばこのコンセプトカフェでいけます。というか行かせます!」


「まぁ業態が変わるからその辺はもっとプロと話し合ってくれ。

ゼミキールさんが詳しいなら相談するといい」


「はいっ! そうします!」


今まで覇気のないどんよりとした雰囲気を醸し出していたサイエンに少しずつ生気が戻って来ているように感じた。

しばらくそのまま5人で今後の店の事をあーでもないこーでもないと話あっていた。

すると店の入り口がガヤガヤと騒がしくなる。


「あれ? 看板は『close』にしているはず……」


サイエンの言葉と共に真っ赤な鎧を纏った大柄な騎士がホールに繋がる階段の踊り場に姿を表した。

それに驚いたのかサイエンとクリスそしてリーピーがソファの影に飛び跳ねて隠れガタガタと震え出す。

チーシャは特に驚きもせず紅茶を優雅に飲んでいた。

仕方がないと思い私は木刀を片手に立ち上がる。


「店は閉まっている。勝手に入ってきてなんだ?」


男は茶髪を刈り上げており目元も鋭い。

そんな鋭い目を私の頭に留めるとすぐに片足をついて跪く。


「アリス様とお見受けします」


「あぁ私が有栖川牡丹だ」


「主人がお待ちです。ご同行願う」


「断る」


「……………………今なんと?」


「断ると言った」


その場の私とチーシャ以外の者が固まる。

チーシャは声を殺して「クックックック」と笑っている。


「……なぜとお伺いしても良いですか?」


茶髪の騎士が顔を上げて私に問う。


「まずは閉店している店に無作法に侵入して来た事を詫びろ。

そしてお前の所属と私を連れて行く理由を明確に述べろ」


「…………ご歓談中に許可も無く立ち入ったこと申し訳ありませんでした。

私、近衛騎士団ハートを率います団長のジャックと申します。

この度は我が陛下のお呼び出しにより、この世界に起こしいただきましたアリス様をお迎えに参りました」


「分かった。同行しよう。

ただし私の付き添いも連れて行く」


「あちらのチーシャですか?」


「あぁ知り合いか?」


「…………まぁ」


歯切れの悪いジャックの返答に私はチーシャの方を睨みつける。

チーシャはニコニコとした笑顔でこちらに近寄ってくる。


「お嬢。説明は後でするっす。

とりあえず行くっすか?」


今は説明する気がないのだろう。

まぁここまで一緒に来たのも何かの縁だと思い、私はチーシャの言葉に素直に頷く。

サイエンとクリス、リーピーの方に私は笑顔を向け挨拶をする。


「楽しかったぞ。店が繁盛する事を祈っている。

また顔を出させてもらう。それじゃ達者でな」


私の言葉に3人はぴょんと立ち上がり深々と礼をする。

それを見て振り返りジャックに声をかける。


「ところでその陛下とやらのそばにはビアールといういけすかないウサ耳男はいるか?」


「ビアール様ですか?」


厳ついジャックがキョトンとする。

私は神妙に頷く。


「陛下の秘書ですからおそらくは」


「そして先ほど私を呼んだのは陛下だとお前は言ったな?」


「はい」


「よしっ向かうぞ! その陛下とやらのところへ」


私はジャックをはじめとする赤い鎧を纏った大男達を押し除けて店を出る。

チーシャは相変わらずクスクスと笑い続けている。


「それではこちらへ」


ジャックが慌てて私を追い抜き馬車?

いや引いているのはダチョウのような真っ赤な鳥だから鳥車か? を指し示す。

私は素直に開けられた扉に向かう。

チーシャがぴょんとそれに乗り、私に手を差し出す。

ありがたくその手を取るとグイッと引っ張られて乗り込んだ。



パタンと扉が閉められ外から「出発」というジャックの声が聞こえた。



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