13 不思議な3:00pmへ(3)
私とチーシャは一旦、店の外に出て再び店の扉に手をかけた。
サイエン曰く
『きちんと! きちんとやるので! 仕切り直しを!』
との事で私たちは店を一旦追い出されたのだ。
「そろそろ良いっすかね」
「そうだな。行くか……」
チーシャが扉を開ける。
すると先ほどまでの草臥れた雰囲気は一掃され、落ち着いた店内に騒がしくない程度のBGMが流れている。
「姫。ようこそいらっしゃいました」
先ほどまで寝ていたネズミ耳のリーピーと呼ばれていた者が出迎える。
眠そうなタレ目なのは元からなのだろう。
しわくちゃのグレーのスーツだったものがキレイになり、細身の体に良く似合っている。
「どうぞこちらへ。当店へは初めてですね。
システムの説明はご入り用ですか?」
「ああ。初めてだ。
システムは他の店と変わらないなら省いて貰って構わない」
「承知しました。
それでは本日の担当ホストをお呼びします。
少々お待ちください」
そう言われて私とチーシャは席に座る。
「お嬢……お嬢……思っていたより丁寧で……俺びっくりしてるっす」
「あぁ。私もだ。やればできるんじゃないか?」
「……でもあいつ酒飲めないって言ってたっすね……」
「…………そうだった……。
でも酒が飲めなくてもどうにかする方法はあるんだがな……」
2人で席に座り喋っているとサイエンスとクリスとリーピーが3人揃ってやってきた。
「姫。本日は起こしいただきありがとうございます。
当店の代表のサイエンです」
「僕はクリスだよー」
「リーピーと申します」
それぞれ私に名刺を差し出すのでそれを受け取る。
「お隣、失礼します」
そう言ってサイエンがチーシャと逆側の私の隣に座る。
クリスとリーピーはテーブルを挟んだ向いに座った。
「姫。今日は何飲みますか?」
「まぁ見学の段階だから全員水だ。
ただシャンパンを降ろしたテンションでいけ」
「「…………無茶な……」」
サイエンとクリスが同時に言う。
「なんか言ったか?」
「お水はいりまぁーす!
A卓アリス姫よりサイエンにお水入りましたぁ!!」
サイエンとクリスが私返事に固まっていたところ、平然とシャンパンコールいや違う。
ウォーターコールを始めるリーピー。
私はリーピーに軽く頷く。
「やるじゃないか。
ただシャンパンコールは遠慮させてもらう。
省かせてもらおう」
「承知しました。
それでは感謝をこめてサイエンから一言だけ。
サイエン。姫に一言」
「…………姫に感謝を……」
「ふむ」
リーピーがピッチャーに入った水と氷を持ってくる。
そしてクリスがそれをグラスに入れて準備する。
「ぼっ…………僕達も……頂いて良いでしょうか?」
「あぁ好きなだけ飲め」
私の言葉に今度はリーピーが全員分の水を準備する。
「「「それでは乾杯」」」
「乾杯」
私は3人に返事をし、水を口につける。
そしてグラスを置いてしばし待つ。
「「「…………………………」」」
その場を沈黙が流れる。
チーシャが私の耳にこっそりと耳打ちする。
「お嬢、まだ続けるんすか?」
「もちろんだ。これからがホストの本領だ」
私の言葉にサイエンとクリスがビクリと肩を揺らす。
「ひっ姫……は……よくこういうところへ?」
「さほど」
サイエンがなんとか口を開くも私の返答でまたもや黙る。
「「「…………………………」」」
「おいお前達。私は今姫だぞ?
いくら水だけとは言えチャージは払うと言っているだろう。接客しろ」
サイエンとクリスがビクリと肩をまたもや揺らす。
リーピーはマイペースに私のグラスに水滴がついているのに気づき、おしぼりでそれを拭っている。
「さてはお前達…………接客の仕方忘れたな?」
「いっいえ! そう言うわけでは!」
「そんなはずは…………」
「ではやれ」
「「「………………」」」
またもやの沈黙に私は大きく「はぁぁあ」とため息をつく。
「チーシャ仕事だ」
「お嬢次は何をするんつもりっすか?」
「私の接客を見せてやる。
姉さんに仕込まれた腕をお前達に見せてやろう」
私の言葉にサイエンとクリスが息を飲んだ。
私は自分の格好を上からゆっくりと見る。
「おいサイエン。
お前、先ほどまでのだらしない服装は魔法で整えたのか?」
「あっはい。
クリスがそういうの得意なんで……。
やってもらいました」
サイエンは先ほどまで黒に赤いラインが入ったクタクタのスーツ。
赤いリボンの巻かれたぐちゃりと潰れかけたシルクハットを頭に乗せていた。
髪もパーマがかかり赤のインナーカラーが入ったぐちゃぐちゃの髪だったが、今はきちんとウェーブしている。
顔色は相変わらず悪いが……まぁスッキリとした顔で整っているだろう。
クリスは茶色の髪に茶色のスーツを3人の中で1番まともに来ていたが、それらも艶を取り戻している。
小柄だが親近感の湧く雰囲気に仕上がっていた。
「なるほど。クリス、裏に案内しろ。
そして私の言う通りに魔法をかけろ」
「はいっ!!!」
私はクリスを連れてバックヤードに移動する。
クリスにあれやこれやと指示をして魔法をかけさせて化粧品も出させる。
「先に戻っていろ。すぐに戻る」
クリスを先に席に向かわせて私は最後に口紅を塗る。
「まぁこんなものか」




