表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ボクに溺れて?  作者: 天塚
4/10

眼鏡

 それからというもの、結構な頻度で倉田さんと会うようになった。会うといっても偶然ではあるが。今日も友人と夕飯を食べた帰りにまた塾帰りと思しき彼女に出会った。

「おや、また会ったね。」

 別に無視する必要もないので最近はもっぱら自分から声をかけている。

「こんばんは~。最近ほんとよく見ますよね~。」

 いつもどこか抜けたような彼女の声は私の気を少なからず抜かせる。

「そろそろ偶然とも言えなくなってくるな。もう時間も時間だし帰ろっか。」

「はーい。」

 そうして今日もまた彼女と帰り始めた。普段は他愛もない世間話だったが、今日は珍しく綾音のことを聞いてきた。

「そういえば綾音さんとは上手い感じにやってるんですか?」

 今まで綾音のことは一度も、名前すら話したことがなかったのだから、なぜ知っているんだ、という問いが出かかった。だがここで深く追及するのも面倒だし、追及したところで何かがあるわけでもない。私にできるのはただのらりくらりとぼかした話をすることのみだ。

「うん。同じ学科だから毎日会って喋るし、つかず離れずの距離感で個人的にはいい感じだと思うよ。ついこの間も遊びに行ったし。」

「へー。大学生の恋愛って私たち高校生とそんなに変わるんですか?」

 私を振ったはずなのにガンガン攻め込んでくる。でも彼女も踏み込んだ話をするのを躊躇しているのか、まだ私自身の話を展開してくる。

「俺の知りうる範囲内だったらそんな変わんない気がするけど……あ、出会いとかデートの場所とかは結構変わるかな。ほら、大学生ならバイトも始めてお金にも少し余裕が出るし、あとはサークル然り合コンとかかな。」

「えっ?先輩ってそういう合コンとかよく行く方なんですか?」

 質問攻めもつらくなってくる。もともと一対一で話すのは苦手だからさっさと帰りたくなってきた。その感情が早くも私の足取りに現れ、若干進みが速くなった。

「いや……自分からはほとんど行かないかな。大体俺の友達が数合わせで呼んでくる。こんな典型的理系男子なんかお相手さんのほうが困るってもんだ。実際に連絡先もほとんど貰わない。」

 そんな自分に対して彼女はお喋りが得意だ。彼女は間髪入れずに言った。

「えっ、先輩って絶対モテるじゃないですか!優しいし、頭いいし……その分厚い眼鏡も外したらめちゃくちゃイケメンですよ!?」

 少しびっくりしている様子だ。残念ながら私は自分の容姿に一ナノメートルの自信を持ってない。対照的に学問に対しては一定の自負はあるのだが。

「頭いいってことは否定しないけれどイケメンだとかそういうのはよしてくれ。照れくさいじゃないか。」

 毎度ボサボサの頭を掻きながら言った。

「大学生って先輩のこと分かってないんですね……。先輩は今着てる服もそんなセンス悪いわけじゃないし、そのボサボサの髪の毛と眼鏡を何とかしたら絶対輝きますよ!コンタクト持ってないんですか?」

 なんだろう……声に凄い重みを感じる。まるで綾音から私を虎視眈々と狙ってきてるような……。

「一応コンタクトは持ってるんだけど……俺毎日外して洗浄液につけるとかそういうの良く忘れちゃうからさ……だから基本眼鏡で過ごしてるんだよね。ていうか眼鏡外したらいいとかその根拠はどこにあるんだい?」

 どうしよう。さっさと帰りたくなってきた。もうとっくに彼女の家の前についてるというのに話は続いている。早くいい感じに切り上げないと……。

「そりゃあ眼鏡をはずした先輩を見たことあるからに決まってるじゃないですか。まさか私が希望的観測に基づいて言っているとでも思ってるんですか?」

「いや……そういうわけでは。今まで学力はともかくとして容姿を褒められるなんてなかったからさ。」

 返事は弱弱しい。しかし私を無視するかのように彼女は話を続けた。

「でもめっちゃカッコいいですよ。眼鏡を外した守屋先輩。たしか……文化祭のステージ発表の時、眼鏡は邪魔とか言ってその日だけコンタクトで来てたんでしたよね。ほら、篠笛とても上手でしたよ。その時にですね、私の隣の女たちが、『あのステージのイケメンって誰?あんな人見たことない……』って噂するものだから……あれに気づかないなんてどうかしてますよホント。って、ともかく、そんなぐらいには格好いいですよ。」

 オタクが自分の専門の話になった瞬間饒舌に話すなるアレと似たものを感じた。少し目をそらしながら会話を切ろうとした。

「そっか……ありがとう。じゃあそろそろいい時間だし――」

 やっと帰れる。そう思った瞬間、彼女はあまりにも大胆な提案をしてきた。

「あっ、じゃあ今から先輩の家行きましょう!一度自分のカッコよさに気づいてもらわないとこっちが困ります!明日土曜なんで大丈夫ですよね!」

「へっ!?」

 素っ頓狂な声を上げた私に見向きもせず、彼女は私の手を引いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ