表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ホラー集

必ず恋が成就するラジオ番組

作者: みこと

ホラーは初めて書きました。


夏のホラー2022参加作品

 


「ねぇ知ってる?」


 そう言ったは俺の幼なじみの金井美樹かないみきである。


「何が?」


「ラジオで、必ず恋が成就する番組があるんだって」


「どうせ眉唾だろ」


「そうじゃないらしいよ、かなりの数のカップルが誕生してるんだって」


「ふ〜ん」


「ただちょっと曰くがあるらしいよ」


「どんな?」


 俺はあまり興味はなかったのだが、少し気になったので聞いてみた。


「そのラジオを聴いて結ばれたカップルには不思議なことが起こるんだって」


「どんな?」


「よくは知らないけど、くだらない事から恐ろしいことまでいろいろだって」


「そうなんだ」


 このときの俺は話半分に聞いていた。




 ◇◇◇




 俺の名前は新井翔太あらいしょうた。普通の、いや中の上の高校に通う2年生。


 今は夏休みで毎日部活で学校に通っている。



 最近俺たちの間でよく話題になる話がある。


 一学期、学校内でカップルがたくさん誕生している。


 でも俺たちの中には彼女がいる奴が1人もいない。


 それで誰が1番早く彼女が出来るか、というのがよく出る話題である。


 話が盛り上がるのには理由がある。


 それは付き合う彼女は誰でもいいという訳では無い。


 重要な事はどれだけいい女子を彼女に出来るか、という事である。



 ーーーーーー



 俺には密かに想っている女子がいる。


 同じクラスの佐倉瞳さくらひとみである。


 艶やかな黒髪に長いまつ毛。可愛いと言うより美人と言う容姿をしている。


 スラリとしていて女子にしては長身だ。


 背筋を真っ直ぐ伸ばし、凛々しく座っている彼女を、俺は気づかれないようにいつも眺めていた。


 彼女は剣道部で、全国大会3位の実力がある。


 そんな彼女はクラス、いや学校のマドンナ的存在である。


 噂では何人も告白しているが、断られているらしい。


 もちろん俺にとっても高嶺の花だ。


 しかしそんな彼女と付き合えたら友達に散々自慢できる。


 今は単なる妄想に過ぎないが。



 ーーーーーー



 今日も気づかれないように彼女を眺めていた。


 そうしているとふと思い出した。



 ー必ず恋が成就するラジオ番組ー



 そう、幼馴染の美樹の話だ。


 さっそく詳しく美樹に聞き、その番組を聴くことにした。


 いろいろ調べてその番組の時間帯をつきとめた。



 ーーーーーー



 ラジオは聴いたことなかったし、そもそも持ってなかったので電気屋で買った。


 放送時間は月曜日の午後11時50分。


 少し中途半端な時間だなぁと思った。




 ラジオを置き、その前に何故か正座で放送時間を待った。


 そして放送時間になった。



『は〜い始まりましたぁ。恋のラジオ、司会のラブリーそうめんで〜す』


「なんだえらく軽い番組だな、それにラブリーそうめんって…」


『ラブリーそうめんで笑った君、ちっちっちっ。風水では麺類は縁を呼ぶ食べ物と言われてるんだよぉ〜。こういったことを馬鹿にしてると絶対に恋なんて実らないからね』


「ほうほう、軽い割にはなかなかまともだな」


『さて早速リスナーの声を聞いてみよう。……お、珍しく葉書だ。え〜っと、ラジオネーム、ギリギリッスさんから「こんばんはラブリーそうめんさん」はいこんばんは「先日早速彼女ができましたよ」お、おめでとー「でもね、ちょっと不思議なことが起きたんです」ほぉ〜「俺には双子の妹がいるんですけど、その妹にも彼氏が出来たんです」これは不思議だね「さらに。俺の彼女も双子で、そのお兄さんの彼女が俺の妹なんです」おおおダブルツインズ。ははは頭痛が痛くなる話だねぇ〜それはおめでとう幸せにねぇ〜』


「マジで不思議な事が起こるんだな」


『それで今日の恋のアドバイスのテーマは!「告白するには」だよぉ〜……告白するには、レストランとか校舎裏とかそんなところにいきなり呼び出して「付き合ってください」ていうのはダメダメ〜。まずは仲良くなってから。そのためにはちょっとデートに行ってみよう〜。でもいきなりデートに誘うって難しいよね。軽く誘ってもダメ。デートしてくださいと直接言うのもダメ。そ、こ、で、いいこと教えてあげるね。ごく普通に近づいて「すみません、一緒に出かけるのに付き合ってください」これくらいがちょうどいいんだよ実はね。それで変にプランとか立てちゃダメ。デートってバレバレになるからね。行き当たりばったりでちょうどいいんだよ実はねっ。ぜひ、ぜひ試して』


 そしてちょうど0時


『何か不思議なことが起こるかもしれないよ。……では皆さんガンバ〜。ラブリーそうめんでした』


「ふぅ、マジかな。でも確かにあの誘い方だと断られてもダメージ少ないしなぁ〜試してみるか」



 ーーーーーー



 彼女の行動は把握している。


 水曜日に道場で自主練している。


 偶然を装って彼女が出てきたところで話してみよう。


 そして道場から彼女が出てきた。


 あっ、と気づいたふりをして近づいて行った。



「あの佐倉さん」


「何?」


 彼女の声をこんなに近くで聞いたことなかったけど、結構可愛らしい声してるんだな。


「すみません、次の日曜日出かけるのに付き合って下さい」


「え、あ、いいよ」


「え、いいんですか?」


 しまった、誘っておいて簡単にOKだったからビックリしてしまった。


「別にいいけど」


「あ、はいお願いします」


「何時?」


「10時駅前なんてどう?」


「うん分かった、行くね」



(やったぁぁぁありがとうラブリーそうめんさん)



 ーーーーーー



 日曜日そわそわしながら待っていた。


 じっとしていられなくて1時間も早く来てしまった。


 そうすると向こうから佐倉さんがやってきた。


 淡い水色のワンピースでいつもと雰囲気が違ってドキドキした。



「ごめん待たせた?」


「ううん、さっき来たところ」(嘘だけど)


「どこへ行くの?」


「特に決めてないんだ、出かけたかっただけで」


「そう、じゃあ適当にぶらぶらする?」


「そうだね」


 それからは夢のような時間だった。たまたま見つけたオシャレなカフェに入ったり。ファミレスで食事して映画を見てゲーセンで遊んで。


 佐倉さんも終始笑顔で…


 もう付き合ってるんじゃないかな俺たち。




「今日は誘ってくれてありがとう」


「ううん、また行こう」


「そうね」


「じゃまた」


「バイバイ」


 小さく手を振る佐倉さんがめっちゃかわいい。


「今日は寝れないな」



 ーーーーー



 次の水曜日また道場に行った。


 佐倉さんが出てきたところに行った。



「佐倉さんこんにちは」


「こんにちは」


「この前はありがとう」


「え、何の事?」


「いや、一緒に出かけたでしょ」


「え?」


「この前の日曜日出かけたよね」


「この前の日曜日?」


「うん」


「その日は大会でこの街にいなかったけど」



「え」



 ーーーーー



「ねぇ知ってる?」


「何が?」


「ラジオで、必ず恋が成就する番組があるんだって」


「知ってる、ラブリーれいめんっていう変な名前の司会者のやつでしょ」






誤字報告ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言]  ニセモノだって、ちゃんと理解したうえなら、ニセモノでもいいかも(笑) 「れいめん」さんのほうとどっちが、ごりやくすごいんでしょうか?  あ、ツインズ。  同性の兄弟、姉妹のカップルでなく…
[良い点] 噂にあった通り、カップルは成立したものの不思議な事が起きましたね。 本物の佐倉さんが大会に出場していたなら、新井君が日曜日にデートした佐倉さんは何者だったんでしょうね。 [一言] デートで…
[良い点]  面白かったです!シンプルな怖さでした!世にも奇妙な感覚に囚われました!  日曜日の佐倉さんは一体なんだったのか?あのラジオ番組も幻だったのか?もしかして幼馴染の美樹さんすら幻だったのか?…
2023/01/10 21:51 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ