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ルームシェア雑記〜再来オイルショック〜

作者: SuikA

理人は行きつけのドラッグストアのトイレットペーパー売り場の棚の前で立ち尽くしていた。

いつもで有れば様々な種類のピンキリの素材や香り、ロール数の違いで彩るトイレットペーパーが1ロールたりとも無いのだ。

(嘘だろ。供給不足はデマだっつってたじゃねーか。)

理人はいつも8ロール入りの1ロールずつが和紙で小包装されたものを買っていた。1ロールずつは和柄のエンボス加工がほどこされており8ロール全て違う和柄だった。包装紙も8種類違う和風な淡い色といった凝りようである。香りもシャボンやフローラルといったいかにもトイレ然としたものでなく上等なお香のようなものであるところも気に入っていた。トイレ内で適当に並べてもほのかな香りと共に和紙の柔らかな淡い色彩が彩り、置物などを良しとしない二下と理人のスタンスにも丁度よいものだった。価格こそ特売12ロールを2セット買ってもお釣りがくるほどではあったが、その分セールのたびにポッカリと空洞を作る隣の棚を余所目にいつでも購入できた利点があった。

それがないのだ。


(ふざけんなよ。)

カゴを握る手に知らずに力が篭る。

くだらねえ購買層がくそみてえな噂に踊らされて馬鹿みてえに集団は何かに鬱憤をぶつけなければ生きていけやしない生き物だ。

転売ヤーか?非常時のどさくさに紛れやがって独占禁止法の協定も非常時には教育の敗北を実感せざるを得ないな。全くもって低俗だ無様だ下品だ。そんな奴らは額に焼印を押して生活していけばいい。【私共は非常時には生活必需品の価格を釣り上げ転売を致しております。】立派な屋号だ。わかりやすい購買意欲を煽る看板にもなるだろうよ。

いやまてよ、このままあの8ロールの隠れた魅力に気づいてしまった奴らがこの店舗に増えてみろ、売り場の拡大、軽率なセールなど組まれた日には。頭にがらんどうの穴蔵が浮かび上がる。考えただけでもゾッとしない。

理人は8ロールが日常的に買い占められるロールモデルを思い描き、代案としては品質が同等であればそれを代用、緊急時に限り更に高品質のトイレットペーパーも購入することも可とし今よりストレス値を下げないことを第一条件に掲げることで内心の平常を保つことに努めた。


「おかえり。」

家に帰ると二下が玄関へと向かってくる。

「ただいま。」

「何か買えた?」

「トイレットペーパー全滅。」

「あれデマじゃなかったの?」

「デマだよ。でも現実は品切れ。」

「うっそだあ。」

嘘ならどれだけ良かったことか。

「まだ3つ残ってるから大丈夫だね。」

二下はトイレに確認に向ったらしく扉越しにボヤけた声が聞こえる。

「…3ロールか。」


「不必要な人は買わないでくださいって、必要に決まってるじゃねーか。」

理人は誰に言うでもなく呟く。不必要な人とはそもそも何をさすのだろう。主語の範囲がガバガバの呼び掛けに定義を求めるところがあった。

使用分以上の買い溜め、転売用、本来必要な人の分を買い占めることで間接的に誰かが困ることを見込んだ悪質な嫌がらせ。どれもくだらなすぎて考えることが嫌になる。

いつのまにかトイレから戻ってきた二下も考える。トイレっとペーパーが不必要な人。トイレが必要じゃない人。トイレットペーパーを使わない主義のひと。排泄器官のない新生物。宇宙人。フンコロガシ飼ってる人。

「トイレットペーパーが要らない人。」

二下は何かに納得したように呟いた。

理人は時計をみるともうじき昼になろうとしていた。昼食でも作るか、と台所へと向かった。


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