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SIDE:藤代三葉は辟易する


「ごめんなさい、お気持ちは嬉しいのですが、お付き合いはできません」


私は深々と頭を下げ、目の前の……なんていう人だっただろうか?

とにかく、男の子に謝った。


放課後の屋上と言えば、どこの学校でも定番の告白スポットだ。

この場所で数々の男女の恋が実り、また、それに匹敵するだけの数の恋が散っていった。

かくいう私も入学から今日までおおよそ1か月、この場所で、何人もの告白を断ってきた。



この学校……私立洛水館学園には、あるジンクスがある。


曰く「学校の屋上で告白が成功したカップルは、末永く幸せになれる」らしい。

その話の発端は25年ほど前のとある生徒だというが、はっきり言おう。


そのカップル、最初にした屋上での告白は断られて終わってますよ? と……。


なんせ、その本人たちから聞いたのだから間違いはない。

そんなのをジンクスにするなんて、本当に大丈夫ですか?

だからと言って、私がそれを訂正する謂れはないんですけど。


ま、それはそうと。


「ど、どうして……!?」


ほらきた。


「どうしてと言われましても……私は、貴方のことはよく知りませんし……」

「なら、これから知ってくれればいいじゃないか!」


ああ、もう本当に面倒くさい。


正直、私……藤代三葉は、何度も繰り返されたこのやり取りに辟易していた。

こうして屋上に呼び出されたのも、これで何度目だろう。

相手も勇気を出して私に想いを伝えてくるのだからと真摯に対応してきたが、流石に嫌になってくる。

入学してからほぼ毎日……多い時には1日に朝昼夕と3回も呼び出されたこともある。

私の事情も考えて欲しい、特に夕方は予習復習に夕飯の準備等々、これでも忙しいのだ。



……そして、こうも続くと疑問になってくるもので。



――――この人たちは一体、私の何を見て、どこが好きになったんだろう?


と。


はっきり言って、私は自分の容姿が他人より優れていると自覚している。

何せ、私のお母さんは年齢不詳のとんでもない美女だからだ。

お母さんの高校生時代の写真を見るたび、よくもまぁこんな美少女が世の中にいるもんだと思ったものだ。


そんな自慢のお母さんだったからこそ、花七お婆ちゃんに会うたびに「どんどん若い頃のお母さんに似てくるわね」と言われ、子供ながらに嬉しくなったのを覚えている。

……目元だけ、お父さんに似てしまったのを残念がっていたけど。

お父さん、ドンマイ。


あとは「藤代さんって見た目はいいけど中身がちょっとね……」なんて言われるのは絶対に嫌だったので、勉強も頑張った。

そのおかげで、今やこの国内でも有数の名門と言われる両親の母校にも、首席で入学。

今や私は容姿端麗、眉目秀麗、才色兼備な優等生!


……なんて言われるも、それは結局私の一部、外側、いわば皮でしかないわけで。

これまで話したこともないこの人たちに、そんな優等生な皮だけを見て好きだと言われても……というのが私の本音だ。


……今後、1人の人間として、藤代三葉を本当の意味で好きになってくれる人なんているんだろうか?

なんて心配になるわけで。


……引っ越し前にお母さんが

「三葉ちゃんもきっと、素敵な人に出会えるよ! なんて言っても、私とお父さんが過ごした学校ですもんね!」

なんて言ってたけど……本当にそんな人、いるのかなぁ?



そんな時、なぜかふと頭に浮かんだのは先日の夜。

面倒臭そうに私を見るお隣さんの綾崎先輩の表情……面倒なら声なんてかけなければいいのに、お人好しな人……。


あれ以降、綾崎先輩とは一言も会話はしていないし、目があってもすぐに目をそらされる。

正直、あの件を持ち出して私に付きまとうようになるのでは? なんて警戒していたのに、完全に肩透かしだ。


「藤代さん?」

「あ、すいません」


いけないいけない、思わず笑いそうになってしまいました。

なんにしても、彼とお付き合いする、という選択は私の中にはないわけで。

あとは納得してもらえるまで、謝り続けて、できる限り早々に諦めてもらうのを期待するしか……。



 *



「はぁ、疲れる……」


あれから10分。

まさか10分も粘られるとは思いませんでした。

先に屋上から去る彼を見送り、給水塔の壁へともたれかかりながら、思わずため息をついてしまったのは仕方がないと思います。

うん、私よく頑張りました、花マルをあげましょう。


それにしても毎回思うのですが、「付き合ってるうちに自分の事を知ってほしい」なんて言われても困ります。

そもそも、男女のお付き合いに発展する前にまずは、自分の事を知ってもらう努力が必要なのでは?

そこを怠り、まずは付き合ってくれ、などという発想が私には信じられません。


そして何よりも。


「なんで! 私が! 謝らないと! いけないんですかー!」


どうして私が「ごめんなさい」と頭を下げないといけないのでしょう? 意味がわかりません。

理不尽! ほんと理不尽!!


「ほんとにもー! なん! なん! です! かぁー!!」


こんな時間です、誰も聞いてないでしょう。

夕日に向かってそう、叫んだ時でした。


「――――ぶはっ」

「っ!? だ、誰かいるんですか!?」


まさかこんな時間に屋上に人が!?



大慌てで声のした方を覗き込むと、そこにいたのは――――。

屋上で告白失敗した母…一体誰のことなんだ…!



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― 新着の感想 ―
[一言] は、花七ぁ……
[良い点] 絆されワールドが止まりませんね(≧∇≦)b
[一言] ついに登場してしまったか、最強のサラブレッドが。 そして継承されるなんでですかー。
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