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お隣さんと作戦会議


「綾崎先輩、大丈夫ですか? 手が止まってますけど」

「ん? あー、大丈夫大丈夫、それより今後のことだけど、どうする?」

「そうですね……ただ行き帰りを一緒にするだけだと、流石に弱いでしょうか?」

「どうだろうなぁ、そもそも男女交際というものが俺にはよくわからんから何とも言えないな」

「うーん……」


フォークをくるくる、と回してパスタを食べながら、眉をキュッと寄せ色々と考えているようだが、美人だとこういう表情も似合うから困る。

こちらはこちらでハンバーグを食べながら考えるが、今後どうすればいいかなんて全くわからない。

なんせ俺たち2人は、どちらも恋愛経験値0なのだから。

どうすれば付き合っているように見えるかなんて、さっぱりわからない。


「とりあえず、私たちってお互いのこと、全然知らないじゃないですか」

「そうだな」

「なので、まずはお互い、簡単に自己紹介から始めませんか?」

「今更感漂うが……確かにそうだな、俺たちはお互いの事を知らなすぎる」


藤代がこっちに引っ越してきてもうすぐ2か月、お隣さんとして生活してきたが、俺はこいつの事を名前以外何もしらないんだよな。

彼氏彼女のフリをする以上は、お互いの事をある程度は知っておく必要がある。

もし、この関係が偽装のものだとばれたら、それこそまたあることないこと噂が立ちかねない。


俺はまぁいいけど、これ以上変な噂がたったら、藤代が可哀想だ。



「それではまず、私から……改めまして、藤代三葉です! 三葉、って気軽に呼んでくださいねっ!」

「絶対呼ばねー」


こいつはなぜ、頑なに名前で呼ばせようとするのか。

わからん。


「はいっ、じゃあ次はゆーくんですよ」

「ゆーくん言うな! はぁ、……綾崎悠人、16歳」

「知ってます! 綾崎先輩は誕生日っていつですか?」

「俺の誕生日? 9月だな、9月16日」

「え、9月なんですか? 私と近いですね」

「へぇ、お前も9月なの?」

「いえ、私は6月16日です」

「ぜんっぜん近くないんだけど!?」


そう突っ込むと、けらけらと藤代が笑った。


「9と6ですし似たようなものですって!」

「……まぁ、逆にしたら、な」


そうして、次々とお互いの情報を交換していく。

お互いの趣味、休日の過ごし方から、いつから付き合い始めたのか、どこで、どちらから告白をしたのかなどのすり合わせまで。


「へぇ、藤代の両親って、うちの学校の卒業生なのか」

「そうですよー、もう20年以上前の話ですけど」

「ってことは、例の屋上のジンクスとか、ああいうのの最初の発端にブチ当たる世代ってことだよな」

「あー……まぁ、そうですねぇ……ええ」

「?」


藤代にしては歯切れが悪い。


「まぁまぁ、うちの両親の事は追々ということで! それよりも――――」



その後も、あれやこれやと話し合い、早2時間近く。

これで、人に突っ込まれて困りそうなところはあらかた潰せたと思う。


ある程度のところまで決まったところでいったん休憩を入れてから再確認しよう、という話になり、追加で珈琲を頼んでいると、藤代が手帳にあれこれと書き出した。

几帳面な奴だ。


「なぁ藤代、やっぱこの、お前から俺に告白したーはちょっと無理があるんじゃないか?」

「そうですか? でも、綾崎先輩が私に告白したー、よりはまだ説得力あると思いますけど」

「そうかぁ……?」

「うーん、もし、仮に、綾崎先輩が私に告白したとするじゃないですか」

「おう」


俺がこいつに告白?

ない、ないな。


「すると私が、即座にごめんなさいするじゃないですか」

「おい……まぁ、事実そうだと思うからしゃーないけど」

「綾崎先輩もそう思うってことは、みんなもそう思うってことですよ、その時点で嘘っぽいってなるわけです」

「逆ならいいっていうのかよ」

「想像してみください、私が綾崎先輩に告白するとこ……ゆーくん、好きです、付き合ってください……! って」


だからゆーくんと……面倒くさいからいいや、もう。

それよりも、藤代が俺に告白しましたー、って状況を想像してみるが、あまりのリアリティのなさに笑ってしまいそうになった。

いや、実際に顔に出ていたのか、目の前で藤代がむくれている。


「何むくれてんだよ」

「べっつにー……で、どうでしたか想像してみて」

「あまりのリアリティのなさに笑いそうになった、これダメだろ」

「そこがいいんですよ、そこが。人って、リアリティがなさすぎると逆にそうかも? って思っちゃうもんですよ」

「そんなもんかねぇ……? まぁ、藤代がそういうならいいんだけどさ」


そういいつつ、珈琲のカップを机におろすと、メモ帳から目を上げ、じとーっとした目でこちらを見る藤代と目があった。


「……なんだよ?」

「綾崎先輩は、いつになったら私のことを三葉って呼ぶんですか?」

「別に呼ばなくていいかって結論になったと思うけど」

「さっきは時間がなかったからです、付き合ってる設定なんですから、名前で呼ばないのはやっぱりおかしいですよ」

「……おかしくないし?」

「もーっ、なんでですかっ、呼びましょうよっ! 説得力ですよ、説得力!」


じーっと見られるとなんというか……気まずい。


「いやでも、付き合ってるって言っても偽装なわけだろ?」

「はぁ、そうですね」

「そのうちお前にも好きな奴ができてこの関係も終わるだろうに、名前なんかで呼べるかよ」

「まぁそれをいうと、綾崎先輩に先に彼女ができて終わるって可能性もあるわけですけど」

「ないな」

「私に彼氏ができるってのも、ないと思います」


あれ、お互いに彼氏彼女ができない場合って、この関係いつまで続けるんだ……?

と、ふと思ったものの、藤代に本当の彼氏ができないはずはないな、と思い直す。

後は……。


「あ、そうそう、藤代に言わなきゃいけないことがあったんだ」

「?」




「お前、一人でいいから、新しく友達を作れ」

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― 新着の感想 ―
[気になる点] この押しの強さ、いったいどこ譲りなんだ……?
[一言] 僕の誕生日3/16だから運命感じる
2020/02/04 20:00 退会済み
管理
[良い点] そこは「俺が友達になってやんよ!」ではないのですかえ? 三葉たその「なまえをよんで?」はその為の布石ですな。 それにしても、ただ会話してるだけなのに三葉たその表情が豊かでたいへん可愛ら…
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