喜ぶ娘。
お昼時の学生食堂。
わたし達が、一番忙しくなる時間。
「灯代子ちゃーん、ノリカスペシャル来たよー!」
「はーい!」
生徒のみんなから食券を受け取っていた烏丸さんの一声で、わたしはチンジャオロースーを炒めている中華鍋の右隣のコンロにフライパンを準備して、薄く油をひいて、巨大冷蔵庫の中から出してきたもやしを火にかけた。あらかじめ少し温めたフライパンの上で、油はパチパチと音を立てる。下にあるもやしばっかりに火が通らないように、さいばしでさっくりと動かしていく。その間に出来上がったチンジャオロースーをプレートに盛り付けて、鳩野さんに引き継ぐ。すぐにもやしに軽く塩コショウをして、まんべんなく火が通ったら余計な油が入らないように乙鵜さんが用意した豚骨スープのラーメンにサッと乗せる。あとは烏丸さんがチャーシューののっけて、出来上がり。えっと、次はマリネを…………。
「あっ!」
やった!
「ねぇねぇ、その器ってもしかして!」
「えっ……?」
「『たらの芽の筑前煮』だよね!? どうかな? その煮物、お姉さんが作ったんだよ。美味しかった?」
「は、はい……」
「うわぁーっ! ねぇねぇねぇねぇ、烏丸さん! 筑前煮おいしいって言ってもらえた!」
「よかったねぇ灯代子ちゃん」
「うん!」
うわー!
うわー!
すっごい嬉しい!
またがんばって作ろっと!