幼き者の拠り所。
私は急いでキャンデイーを集め、たまたま近くにあった「お菓子詰め放題」とプリントされた小さな袋に詰め込んだ。元々のパッケージは、真ん中できれいに裂けてしまっていた。
「おかあ、どこ行ったの……?」
私、原見うずらは小五の頭脳を回転させ、おかあが行きそうな場所を模索した。
おかあは、外出するとよく私とはぐれる。おじいもいるときはどちらかが見張っていれば問題ないけれど、おじいがギャンブルへ行っていて私しかいない場合はそうもいかない。うっかり財布の金額を遥かに超える物を買いそうになるのを止めたり、チラシを見ながら案内する必要があるからだ。今回は、私が通りすがりのおばあさんにマヨネーズの棚を教えている間におかあがどこかへ行ってしまったのだ。間違えて会計を済ませずに店の外へ出てしまう前に、おかあを止めなければならない。
「……まずは出入り口近くへ行って、そこから探していこう」
そう呟いて一歩踏み出した直後、背後から聞き慣れた声が聞こえてきた。
「あっ! うずらちゃんいた!」
振り返ると、そこには知波と手ぶらのおかあがいた。知波は、おかあが学食のパートとして働いている学校「星花女子学園」の中等部に通う二年生だ。
ちなみに年下の私が知波のことを呼び捨てにしているのは、ちょっと嫌いだからだ。本人は全く気にしていないけれど。
「知波がおつかいに来てたら、野菜売り場でたまたま灯代子と会ったの! 偶然だよねー!」
「ねー!」
……認めたくないけど、たぶんそれは運命だと思う。そう思うのは、私だけだろうか。
ちなみに年下の知波がおかあのことを呼び捨てにしているのは、おかあととても仲が良いからだ。本人達はお互いをまるで古くからの親友のように…………いや、それとは違う。そんな言葉よりももっと……。
「……ところでおかあ、カートとカゴはどうしたの」
「………………あっ! どっかに忘れてきた!」