幼き者はスーパーを駆ける。
私、原見うずらは、母親が叫んでいる現場に出くわした。
「やーだー! これわたしが先に取ったのー!」
「いいだろ俺にくれよー!」
私は、おかあと一緒にスーパーへ買い物に来ていた。そうしたら、途中でおかあとはぐれて、お菓子売り場でようやく見つけたと思ったら、これだ。
「大人なんだから子どもに譲れよオバサン!」
「これうずらが好きなキャンデイーなのー! ちょうだーい!」
私よりいくらか年下の半袖半ズボンの男の子とおかあが、キャンデイーを取り合っていた。
……というか、そんな風に引っ張ったら。
「あっ!」
「うおっ!?」
袋詰めにされていたキャンデイーは床にぶちまけられ、男の子とおかあは同時に尻餅をついた。
「お客様、どうされましたか!?」
すぐに、店員さんが聞きつけてきた。
「……すみません。キャンデイー取り合っていたら袋が破れちゃって。私が買います」
「え? あ、はぁ……?」
これ以上面倒事になる前に手早く説明して、私は床に散らばったキャンデイーを集めることにした。男の子は怖くなったらしく、既に逃げ出していた。
「……ほら、おかあも一緒に集めて…………」
私が次に顔を上げた時、そこにおかあはいなかった。