同情するなら母を返せ。
閲覧ありがとうございます。
おかあはいつも、知波と一緒に空を見る。
私を置いて、知波と一緒に空を見る。
母親に、会えると信じて。
自分達の時間が、再び動くと信じて。
だから二人は、星に願って空を見る。
二人だけの世界。二人だけが、入っていい領域。
その領域には、笑顔しか存在しない。
笑顔しか、存在してはならない。
そうして二人は、天を仰いで空を見る。
私を置き去りにして。
「お母さん、知波のこと見えてるかなぁ?」
「うーん、わかんない。見えてたら、返事してくれるかなぁ?」
「うーん、わかんない。でも、知波がいい子いい子してたら、きっと会える」
「もっともっと、わたしがいい子になれば、きっと会える」
「そうだよね」
「うん、そうだよ」
やっぱり二人は、今日もきらめく空を見る。
この薄汚れた大地から、穢れ無き二人は空を見る。
望んで。
願って。
微笑んで。
そしてきっと。
堕ちる。
だってあんなに綺麗な流れ星は。
いずれ燃えカスになってしまうのだから。
いつか二人は、消えて行く。
泡になって、塵になって。
でもそれまでは。
二人で一緒に、空を見ている。