#5
これからも頑張ります
駆逐艦を一日中愛でたい
「おはよう、母さん。」
「おはよう。今日も早いわね。調子はどう?」
そう言って俺の方を見てくる母さん。この何度もループしてる世界の中での唯一の癒し要素だ。
「…………ママ大好き。」
「……えっ……ちょっ……どっ、どうしたの?」
俺は我慢できずに母さんに抱きつき、その胸の中に顔を埋めた。
マザコン?変態主人公?なんとでも言え。俺に今必要なのはヤンデレじゃねぇ…………癒し要素なんだよ!
「……頭なでなでして。いいこいいこして。」
「えっ……いっ……いいこ、いいこ?」
「うへへ…………よしっ!(このカオスな状況を耐え抜く)元気が出たよ。ありがとう、母さん!」
「どっ……どういたしまし……て?」
俺のいきなりの奇行に首をかしげている母親を気にせずに、俺は朝食をとった。
朝食を食べ終えて、学校へ行く支度をして、外へ出ると―――――
「おっはよー!よーちゃ―――――」
「あっ!UFO!」
「えっ!どこどこ?どこにいるのよーちゃん!?」
「…………バカめっ!……あばよ~、とっつぁ~ん!」
俺の家の外で待機していた幼馴染みの意識を何もない空に逸らして、その間に自転車に飛び乗って学校へと走り出した。
この三十回ほどの4月21日において、あのヤンデレが必ず女子と話したことに関して俺を問い詰めようとしてくることは分かりきっていることだ。ならば奴に捕まらなければいいのだろう?……と、言うことで最初から自転車で逃げているのだ。
「はっはっは!この速度には奴も付いてこれまい!今回こそ俺のか…………ち…………」
高らかに笑いながら後ろを振り向いたら、自転車の荷台にヤンデレが座ってました。
「よーちゃんスピード出しすぎ~。もっとゆっくり走ってよ~。」
何でだろう。とてもいい笑顔なのに……とても怖い。その顔怖い。
「いっ……いつからそこに?」
「んー……よーちゃんが自転車で走り出した後すぐに飛び乗ったよ?」
「そ……そうか。…………因みに、自転車の二人乗りはスピードの出しすぎよりも危ないって知ってるか?」
「知ってるけど、愛に危険は付き物でしょ?」
なにその愛怖い。
う~ん…………この三十回ばかしのループで、このヤンデレに勝つのが不可能なことは分かったのかな…………?
そして俺はこの後も―――――
「―――――いいね、もうパンドラの箱は空いちゃったってワケ。」
「あっはっはっはっは!いや~、何て面白いんですか本島さん。あっはっはっはっは!」
「おっ……おう。そんなにウケたならよかったよ。」
割りと普通?に大地たちと話し、
「―――――そう、ここ!ここでローマ帝国は5賢帝時代を迎えたの!5賢帝の覚え方は、ネルトラハッピー丸くなる!ネルトラハッピー丸くなる!」
「ネルトラハッピーって何だよ…………」
普通に授業を受け、
「―――――昼どれにする?」
「え~…………麻婆まぜそばっしょ?」
「うわ~……名前からしてヤバイもの臭がするんですがそれは……」
「……いや、男たるものこういったものは挑戦せねばいけないんだよ!」
「そうか…………ま、俺は無難にうどん―――――」
「いやお前もこれだからな。」
「あっ!…………テメー勝手に麻婆まぜそば買ってんじゃねーよ!」
普通に飯を食べて、
気が付いてみると―――――
「きりーつ、礼。」
「さよーならー」
一日は過ぎていた…………
いや早すぎない!?自分で過ごしてて驚いてるんだけど!この後死ぬことさえなければもう完璧でしかないんだけど!
……ってこの後俺死んじゃうのか~。
と、俺はここで、今まで必死に目を逸らそうとしていたことと向き合ってしまった。
いや~……後何回4月21日を繰り返せば俺はこのタイムループから抜け出せるのかねぇ。流石に百回千回は勘弁してほしいなぁ。
あ~…………死にたくねーよー。
「あっ……あのっ!東陽治さんですか!?」
……って、おん?誰だこの美少女は。
声をかけられてうつむいていた顔をあげると、俺の目の前には顔を真っ赤にした、ピンク髪の美少女が立っていた。
少しつり目だが、そこが彼女のよさを一段と引き出している……そんな感じの娘だった。
「あっ……おっ……俺のこと……ですか?」
やべっ!いきなりすぎてキョドって敬語使っちまったよ。これだからコミュ障は……
「そっ……そうです!」
「……えーっと……何か用……かな?」
やべえよやべえよ。ここ教室だから俺らめっちゃ注目されちゃってるよ。
しかもコイツ声でか過ぎない?皆が俺らのこと見てるの大体それのせいでしょ、絶対。
「あっ……えっと……お話があって……ここまで来ました。」
「はぁ、そうですか。……それで、お話って何です―――――」
「私と…………付き合ってください…………!」
「…………ん?」
いきなりのことで、俺は小首を傾げることしかできなかった―――――
今さらですけどタイトル『異世界転生したいのにさせてくれません!』みたいな感じにしてみたらよかったかもしれないとか思ってます。