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主人公、仮住まいを作る

カン、コン、カン、コン


石斧が木の幹を打つ音が森に響く。いや、それだけではない。


「ほら、そっちの木を運べ!」


「手が空いてるやつ、枝を落とせよ?」


「ああ、そのヤシの葉たくさん取ってきてくれ。全然足りん。」


人間の兵士たちの活気ある声もまた鳴り響く。


今朝もドワーフを製造したので総勢10名のドワーフが必死に石斧を作り、できたらすぐに人間の兵士に手渡され、急ピッチで木が切られていく。


石斧なんかで木が満足に切れるのかって?無論、石の斧だって立派に木が切れる。勿論、鉄製の斧に比べれば作業効率は落ちるだろうが、そこは人の数でカバーするしかない。


そして俺たちが作っているのは高床式の長屋みたいな家だ。


ここは亜熱帯の森だろうか、なかなかに湿気が高い。で、ネットで亜熱帯の森での家を検索したところ、ヒットしたのは高床式の家だった。それにより湿気が家の中にこもるのを防ぐのだ。


しかし、材料は木と葉だけだし、道具は石の斧だけ。のこぎりがないので切った木を板にできない。勿論、丸太のように太い木は斧で割ったりしたりはしたが、そんなに器用にはできない。


一つの長屋で10名ほど生活できるスペースができる。今のカイト領の人口は以下の通りなので、最低32棟は必要だ。いやいや、今後の人口増を考えて、とりあえず35棟作ることにした。


<カイト領の人口(3日目)>

王:1名

ガイド?:1名

従者:1名

ドワーフ:10名

人間:300名

-------------

合計:313名


「しかし、35棟も作るとして、一体どの程度時間がかかることやら」


そう、それが心配なところ。家を作っているのは50名程度で、そのうち半分が木を切り、半分が家を作っている。他の者は食料を探しに行っているから全員は家の建造に割り当てられない。


当然、インターネットのスキルで家づくりの動画を見せているので、みんなの頭には家づくりのイメージはある。ただ、頭には情報があってもそれをすぐに実践できるはずがない。そんなことができるのは天才だ。だから、試行錯誤しながら、徐々に改善しながら進めていくしかない。


建造ペースとしては今の状況では1日に2棟できればいいほうだ。作業に慣れてきたとしても1日3棟が関の山だろう。と考えれば、目標数までは12日かかる計算だ。


「人手が全然足りんな。まぁ、増やしすぎても今度は食料が問題になるが。」


まぁ、木を切るだけならもっとスピードアップ出来なくもない。ミヨの魔法で一気に木を切ってしまうというのも手だ。ミヨに相談したところ、風の属性魔法でスパンと目の前で木をぶった切ってくれた。


だが、ミヨに頼りきりになるのはまずいと思って初日はミヨの魔法抜きでやってみたのだが・・・これではらちが明かない。



4日目


俺は家建造の作成を変更した。


「じゃあ、ミヨ、頼む。」


「はい。マスター。”ウィンドカッター”」


ミヨが放った魔法は風の属性魔法の”ウィンドカッター”という、その名の通り風の刃で対象を切り裂く魔法だ。ミヨの魔法が次々と木を切り倒していく。


「おおおおおおお」


人間の兵士たちから感嘆の声がする。無理もない。彼らでは3人がかりで1本切るのに5分~10分かかっていた伐採が、ミヨの魔法では数秒なのだ。生産性が違いすぎる。


そして、50人の兵士たちはひたすらミヨが切った木を運び、家を建設していく。木を運び、枝を打ち、葉を集めいていく。家の建造スピードは一気に2倍以上になった。


「これは、やはりエルフをそろそろ生産するべきかもしれないな。」


俺が現在作れる兵種で唯一魔法が使えるエルフ。コストは1体につきMP30だが、この魔法の力を目の当たりにするとそれも割安かもしれない。


というわけで、早速エルフの製造に入る。


ソルジャーコアから生まれる新たな俺の部下。3体のエルフが目の前に現れた。まぁ、お決まりかもしれないが全員女性だ。金髪の髪に長い耳。それに細くしなやかな体。その美貌は俺がよく見聞きしていたエルフそのもの。


「初めまして。ご主人様。さぁ、何なりとご命じ下さい。」


「ああ、初めまして。俺はカイトという。君たちの名前を聞きたい。」


「ビシスと申します。」


「私はボワですわ。」


「僕はウーネだよ。」


一人、僕っ子が混じっている気がするが、まあいいか。


「うん、期待している。では早速だが、皆がどのような魔法が使えるのか教えてくれるか?」


「私は火と風の属性魔法が使えます。」

ふむふむ、ビシスは属性魔法・・・と。しかも今最も必要な風の魔法が使えるとはありがたい。


「私は回復の無系統魔法が使えますわ。」

ふむふむ、ボワは無系統魔法・・・・と。回復魔法とは心強い。これから怪我する奴も出てくるしな。というより、回復魔法を使える奴は今後増やしていかないとまずい。そういう意味で重宝しないといけないな。


「僕は錬金の創造魔法が使えるよ!」

ふむふむ、ウーネは創造魔法・・・と。あれ?それって確か結構レアな魔法だった気がするのだが・・・


「ウーネ。今創造魔法って言ったか?確か結構レアな魔法だったと思うのだが。その錬金魔法で何ができるんだ?」


ウーネは少し考えたような顔をした。


「うーんとね、魔力をめっちゃ食うから沢山はできないけど、物を変容させることかなぁ?例えばこんな風に・・・」


といって、近くにあった小さな石をひょいと拾い上げ、錬金魔法を発動させると、あら不思議、石が鉄の塊になった。


「まっ、マジか?おお、ファンタジー・・・」


これは、とんでもない奴を仲間にできたのかもしれない。こりゃ、石斧なんて作ってる場合じゃないかもしれない。だが、問題は一日にどの程度魔法が使えるか?という点だ。少量の鉄では役に立たない。


「凄いな。ちなみに、その手に持った鉄を一日にどの程度作れるんだ?」


小さな石といっても、ゴルフボール程度の大きさはある。


「この程度の大きさならあと100個は作れるかな?」


「なっ、なんだとっ!?」


すごい。ゴルフボールクラスの鉄の塊でも槍やナイフ程度の刃物はできるだろう。それに釣り針もできるし、ゴルフボール10個もあれば剣だって作れる。まあ、剣はまだいいとしても、その実用性は計り知れない。


俺はウーネに近寄り、ガシッっとその肩をつかんだ。


「ひっ!?王様?どっ、どうしたの??」


「よく・・・よく、俺の元に来てくれた!君はみんなの救世主だっ!」


「うっ、うん?・・よくわからないけど、僕頑張るよ?」


ウーネは少し引き気味でそう答えた。いやいや、彼女は自分の価値をわかっていない。彼女は救世主だ。これで石器文明から鉄器文明に一気にランクアップできる。


「勿論、ビシスとボアも救世主だ。一緒にこの村?を発展させよう。」


「「はいっ!」」


二人は元気よく答えた。


とうわけで、さっそく俺はバティスタを呼んだ。俺の隣にはミヨとウーネがいた。ミヨの木の伐採作業はビシスが受け持った。


「主よ、どうしたんじゃ?」


俺はにやにやが止まらない。


「ふふふ、バティスタさん。念願の鉄が手に入るぞ。」


「なっ、なにぃぃ?それは本当か?」


バティスタの眼も爛爛と輝く。無理もない。石斧なんて作っているのは彼の本意ではない。そういって、俺はバティスタに鉄の塊を見せた。


「ほほぉ。よい鉄じゃな。して、これはどこで手に入れたんじゃ?」


バティスタは鉄を真剣に見つめている。確かに自然界で純度100%とも言っていい鉄の塊がひょいひょい落ちてるわけはないから、どこで手に入れたのか気になるのも当然だろう。


「ここにいるエルフのウーネが錬金魔法を使えてな。なんと石を鉄に変えてくれた。」


「ほほぉ?それは凄いな。して、この鉄の塊をどの程度作り出せるんじゃ?」


「聞いて驚け、なんと100個程度だそうだ。」


それを聞いてバティスタは驚きのあまり、目を丸く見開いた。


「主よ。それならもはや石の斧は作らんでよいよな?で、早速じゃが何を作る?鉄の斧でも作るか?」


話が早くて助かる。まずは是非刃物が欲しい。ナイフサイズで構わない。それだけで家の建造も採取に狩猟もかなり効率化できる。


だが、最初は・・・


「バティスタさん。最初はあなたたちドワーフの工具作りからだ。鎚に鋏が必要だろう?それに、炉も必要なはずだ。」


そう、鉄の塊があってもいきなり刃物ができるわけではない。それに、ウーネが使えるのはあくまで錬金術であり、石を鉄に変えても冶金や鍛錬といった鍛冶仕事はできないのだ。


そこで登場するのがミヨだ。


「ミヨ、土の属性魔法で、確か錬成魔法があったよな?あれで鉄に圧力をかけて硬くしたり、ハンマーのような造形を作ったりすることは可能か?」


「はい。できると思います。マスター。」


うむ。いい答えだ。


「よし!じゃあ、ミヨとウーネはバティスタさんの要望に沿って工具を作ってくれ。バティスタさん、それでいいよな?」


「文句があるわけないじゃろう?あぁ~、もうわくわくするわい!」


バティスタさんは小躍りした。


さて、MPはまだ10Pt残っている。勿論無駄にはしない。MPが繰り越しできるならまだしも、それはできないということだからな。何に使うかといわれれば、当然兵士製造に決まっている。むしろそれ以外の使い道がない。


残りのMPで作る兵士は決めてある。ハーピーだ。


ハーピーはMP5で製造できるお手軽な亜人なのだが、何といってもその特徴は空を飛べることだ。


つまり、上空からこの辺一帯を偵察できるということ。俺たちはまだ俺たちのいるこの森がどこまで広がっているのか?はたまた、海が近くにあるのか?ここは大陸なのか島なのか?さえわからない。


その辺の情報をシーラなら知っているかと思ったが、彼女はこの森の名前しか知らないとのことだ。それが本当かどうかは定かではないが、今は疑っても仕方ない。


というわけで、早速ソルジャーコアでハーピーを2体生産する。


現れたのは鳥の羽以外は普通の人間の姿をした2体の少女のハーピー。紫色の髪が独特だが、かわいらしい風体をしている。


「この度は作成いただきありがとうございます。王さま。」


「早速ご命じください。」


「まぁ、待ってくれ。まずは自己紹介からだ。俺の名前はカイトだ。これからよろしく頼む。」


二人は俺に合わせて自己紹介を始めた。


「私の名前はライラです。」


「私の名前はラナ。」


ライラにラナか。うん、素直そうで協力的だ。


「では、早速最初の命令だ。この村付近の地形を上空から確認してくれ。あと、人や亜人の集落や海があるかも確認すること。ただし、あまり遠くに行くなよ?ここまで戻ってこれなくなっても誰も助けてやれないからな。」


「任せてください!」


「では、行きます!」


そういって二人は手分けして町の周囲の探索に出かけた。


<カイト領の人口(4日目)>

王:1名(♂)

ガイド?:1名(♀)

従者:1名(♀)

ドワーフ:10名(♂)

エルフ:3名(♀)

ハーピー:2名(♀)

人間:300名(♂:150 ♀:150)

-------------

合計:318名(男:161 女:157)

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