主人公、ドワーフを生産する
さて、目の前に現れた兵士300名。彼らを遊ばせておくわけにはいかない。
というより遊ばせておく余裕がない。
今俺たちに必要なのは兵士ではない。必要なのは猟師であり漁師であり農家である。つまり、食料を作ってくれるありがたい人たちだ。
勿論、大声で泣いても叫んでもそんなありがたい人たちが表れるわけはないので、自分たちで何とかするしかない。だがその前に・・・
俺は兵士のほうを向き、全員に話しかけた。
「みんな。まずは呼びかけに応じてくれてありがとう。私の元に来てくれたことに感謝する。ただ、これだけの人数なのでこの300名を束ねるリーダーを決めたい。この中でリーダー格の者はいるか?」
すると、兵士たちがささめきだした。「おいおい、リーダーってどういうことだ?」「え?俺に聞かれても・・・」といった感じで困惑しているのが見て取れる。
「なるほど。リーダーが不在なのがよく分かった。それなら俺が決めさせてもらう。」
そして、俺は一番前にいた一人の中年男性を指名した。
「貴方をこの300名の兵士のリーダーに任命します。お願いします。それと、名前は?」
簡単に言えば使命は適当である。俺の視界に入る範囲で一番年長者のように見える者を指名した。それが彼だ。
「デュ、デュークとです。カイト様。全くもってお役に立てる自信がありませんが、精一杯頑張らせていただきます。」
うむ、よい心掛けだ。そう、仮にデュークが適切じゃなければまた目ぼしい兵士をリーダーにすればよいだけだ。デュークが立派に役目を果たすなら引き続き任せればいい。
俺はデュークの挨拶に頷き、早速最初の任務を与えることにした。
「諸君。来て早々悪いが、はっきり言って我々は今最大のピンチを迎えている。それは、食料不足だ。どれほど深刻な事態か伝えよう。なんと、君たちの今日の食事分すらない。」
「「「・・・」」」
兵士は静まり返る。そりゃもう唖然としており顔が青ざめている者もいる。
「というわけで・・・君たちの最初の任務はいたって簡単だ。デューク、兵士たちを適切に編成して付近を探索し、食料を確保するんだ。それと、付近に川がある。ミヨになん名かつけて魚を取ってきてくれ。」
「へっ、へいっ!」
デュークは早速編成に乗り出す。
「よし、適当に10名一組になってくれ。ああ、できれば男女均等でな。どんな魔獣やら亜人がいるかもわからん。」
「10名一組になったら、その中で1名リーダーを決めろ。じゃんけんでもあみだくじでも何でも構わん。」
「武器だぁ?んなもんは今はない。あきらめろ。そうだなぁ、その辺に落ちてる木の棒とか使えそうなものがあれば使え。石も投石に使えそうなやつがあったらどんどん拾え。」
「よし、じゃあ30組できたな?6組ずつに分かれて東西南北をあたるぞ。1組…ああ、お前んところだ、お前んところはミヨ様についていけ。残りの5組は寝床や火をおこすのに使えそうな葉や枝とかを集めておけ。探索する奴らはあまり離れすぎるなよ?帰ってこれなくなるぞ。よし、じゃあ各隊出発。」
お、いいぞいいぞ。デューク君なかなか優秀じゃないか。
編成から出発するまで10分足らずだ。悪くない。
で、兵士たちがそれぞれ作業に入る中、俺は何をするかといえば…
「で、シーラ。この兵士製造っていうのは確かMPを元にして作るんだったよな?」
そう、兵士製造はガバナーのMPを消費することで兵士を製造できる摩訶不思議な仕組みなのだ。
「はい、そうですよー。」
「確か俺のMPは100Ptだったはず。それで今何が作れるんだ?」
「ああ、それでは兵士製造について簡単に説明しますね!」
ということで、教えてもらったことを簡単に説明すると以下のことらしい。
・MPの残量と都市レベルに応じて製造できる兵士に制限がある。俺の都市は現在レベル1かつ、MP100なので、その範囲で製造できるものに限られる。
・兵種(例えば、歩兵、騎兵、弓兵)は兵士に持たせる武器で差をつける。よく、エルフだと弓や魔法というイメージがあるし、実際それが適任なのだろうが、エルフに歩兵をさせることも可能というわけだ。
・今の俺の城レベルで作れる兵士は以下の種類だ。
名称HPMPコスト(消費MP)
人間100010
エルフ10020030
ドワーフ200020
ゴブリン5005
ホブゴブリン150015
ゴブリンジェネラル300030
オーク300030
猫族100010
狐族250025
犬族150015
兎族8008
ハーピー5005
コストは製造する兵士のHPとMPを足して10で割った数値らしい。
例えばエルフだと
(HP+MP)÷10 = (100 + 200)÷10 = 30
という感じだ。
こう見ると、現時点で生産できる兵士の中でMPを持つものがエルフしかいないというのはかなり納得がいかない。というより、MPを持つものがいかに貴重なのか?という話だ。
確かに魔法が使えるというのは魅力的だが、魔法に頼りすぎるのも問題が出るだろう。いかに魔法を他の技術で代替するかが戦力増強のカギとなる。いかにエルフが魔法が魔法が使える優秀な兵士だったとしても、何倍もの敵を相手にするのは骨が折れるだろうからな。
「ふむ、魔法を求めるならエルフ、数を求めるなら人間やゴブリン、それにハーピーか。」
「そうなりますねぇ。ハーピーはお買い得だと思いますよ?なんせ、彼らは空を飛べますから。」
「なるほどな。偵察にはもってこいだな。ただ、今日はまだいい。今必要なのは・・・」
「今必要なのは?」
「衣食住だよ・・・そして、それを生産するための道具作りだな。」
そう、今の俺たちには圧倒的に生活インフラが不足している。農場も牧場もないから食料は必然的に狩猟で賄うしかない。それに衣類も1着分しかないのはまずい。洗濯どうするのか?と。男なら服が渇くまで全裸になっててもまだ耐えられるかもしれんが、女は・・・ねぇ?住居に至ってはそもそも無い。早く家を作らねば。
「なるほどなるほど、そうなるとドワーフなんていかがでしょう?ドワーフならこの辺の木や石を使って必要な道具を作れると思うんですよね。」
「なるほど。それでいこう。では早速MP全部つぎ込んでドワーフを5体作る。」
俺はソルジャーコアにドワーフの生産を命じ、ドワーフが表れた。
現れたドワーフは、俺がよく知るドワーフだ。背が低く、ずんぐりむっくり。そして濃い髭。
ドワーフたちは俺に向かってひざまずいた。
「この度は生産していただきありがとうごぜーます。で、早速じゃが、わしらは何をすればいいんじゃ?剣を打とうか?槍をこさえようか?それとも鎧か?はたまた敵に攻め入るのか?」
うん、生産直後からこのやる気は素晴らしいものがある。だが、キミ、いずれも違うよ。
「うむ、話が早くて助かる。だが今必要なのは剣でも槍でも、はたまた鎧でもない。」
「ふむ?」
「釣り竿と石斧だ」
「はぁ?」
ドワーフたちの呆れた声。まぁ、そう思うのも無理はない。
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